両後ろ足を痛がる犬の「膝蓋骨内方脱臼(パテラ G3)」を外科手術で克服!治療経過と解説|ポメラニアン
症例紹介

症例プロフィール
- 犬種:ポメラニアン
- 年齢・性別:5歳7ヶ月齢 避妊メス
- 体重:3.5kg
- 病名:両側膝蓋骨内方脱臼(MPL:グレード3)
主訴・来院時の症状
「両方の後ろ足を痛がる」「歩き方がおかしい」という主訴で来院されました。
触診および視診にて、左右両方の膝関節に強い痛みと歩行の違和感が認められ、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置から大きく内側に外れている状態が確認されました。
検査と診断
触診およびレントゲン検査の結果、両足とも膝のお皿が内側に外れてしまっている「両側膝蓋骨内方脱臼(MPL:グレード3)」と診断しました。
【膝蓋骨内方脱臼(パテラ)のグレード3とは?】
お皿の骨が常に内側に外れた(脱臼した)状態です。手で押すと一瞬だけ正しい位置に戻すことができますが、手を離すとすぐにまた外れてしまいます。骨の変形や筋力の低下が進みやすく、足を上げて歩くようになったり、痛みを伴ったりすることが多くなります。
ポメラニアンやトイプードル、チワワなどの小型犬種に非常に多い病気であり、グレード3以上や痛みが強い場合は、将来的な関節炎や歩行障害を防ぐために外科手術(解剖学的な構造の修正)が第一選択となります。
治療(手術)


ご家族とご相談の上、両足の膝蓋骨を正しい位置に固定し、再脱臼を防ぐための複合的な外科手術(整形外科手術)を実施しました。
【手術内容の概要】
外側アプローチにより皮膚および膝関節を切開し、お皿を引っ張っている内側の筋肉(縫工筋前部、内側広筋)をリリース(解放)しました。 続いて、お皿が収まる滑車溝(かっしゃこう)という骨の溝を深く削る「造溝術」を行い、さらに膝の靭帯がついているすねの骨(脛骨粗面)を一部切って外側にずらして固定する「脛骨粗面移植術」を実施しました。最後に緩んだ関節包をしっかり縫い縮めて(縫縮)閉創しました。
術後の経過(レントゲンによる経過観察)
手術後は定期的なレントゲン検査を行い、移植した骨のくっつき具合(骨癒合)やお皿が正しい位置を維持できているかを慎重に観察していきました。
① 術後直後〜術後18日の経過


術後1ヶ月(33日)から3ヶ月(104日)、約4.5ヶ月(142日)と経過する中で、移植した骨が順調に癒合していきました。お皿の脱臼も再発せず、膝の曲げ伸ばしもスムーズで、両後ろ足を使って力強く歩けるようになりました。
② 術後33日〜術後142日の経過



術後1ヶ月(33日)から3ヶ月(104日)、約4.5ヶ月(142日)と経過する中で、移植した骨が順調に癒合していきました。お皿の脱臼も再発せず、膝の曲げ伸ばしもスムーズで、両後ろ足を使って力強く歩けるようになりました。
③ 術後242日〜術後741日の経過(長期経過観察)



術後長い年月が経過(約2年/741日)しても、お皿は正しい位置に維持され続け、骨もすっかり元通りに頑丈に結合しています。痛みがなくなったことで足をかばう動作もなくなり、現在もご家族のもとで元気に歩き快適な生活を送っています。これにて長期経過観察も含め完全治癒となります。
獣医師からのまとめ・予防のアドバイス
膝蓋骨脱臼(パテラ)は、小型犬のご家族にとって非常に身近な病気の一つです。 初期(グレード1〜2)では「時々足をひょこっと上げるけれど、すぐ元に戻る」といった症状で済むこともありますが、進行してグレード3〜4になると、常時脱臼した状態となり、骨の変形や靭帯(前十字靭帯など)の断裂を引き起こす危険性が高まります。
当院では、ワンちゃんの骨格や脱臼の程度(グレード)に合わせて、溝を深くする手術や骨の位置を修正する手術を適切に組み合わせて行っております。
【予防のためにご家族ができること】
- 抱っこからの着地や、ソファからのジャンプをできるだけ避ける
- フローリングの床には滑り止めマットを敷く
「足を気にする」「スキップのような歩き方をする」「座り方がおかしい」と感じたら、放置せずに早めに当院までご相談ください。早期に発見し、適切なタイミングで治療を行うことで、将来的な歩行の不自由や強い痛みを取り除いてあげることができます。
【 症例治療に伴う費用目安 】
入院費:67,700円 (7日間)
その他: 103,000円
総額およそ:511,700円
※本症例は「両足同時「膝蓋骨内方脱臼(パテラ G3)」手術を行ったケース」の費用目安となります。 片足のみのパテラ手術を行う場合や、 病状、状態により条件が異なれば費用も異なります。