診療・ケア 消化器内科

診療・ケア

Gastroenterology.消化器内科

ペットにこんな症状はありませんか?

注意するべき症状

  • よく吐く
  • 下痢をする
  • 食欲がない
  • 痩せてきた
消化器内科の犬

考えられる疾患

膵炎

犬の膵炎は急な食欲不振や吐き気、下痢、腹部の痛みを症状とします。高脂肪食の摂取が引き金となって起こる場合もありますが、多くの場合は原因不明で急性に発症します。
血液検査、超音波検査、レントゲン検査、膵炎マーカー検査などを合わせて診断していきます。多くの場合で入院治療が必要で、重度な膵炎は急激な経過を取り命の危険もあることがあります。
治療は炎症がおさまるまで点滴や炎症止め、吐き気止めを使用します。治療後は再発予防として低脂肪のフードに変更することが推奨されています。

猫の膵炎は犬と比べると特徴的な症状が出にくく、慢性化した膵炎が多く、『吐きやすくなった』『なんとなく食欲がない』などの症状が長い期間続くことがあります。肝臓の疾患や糖尿病、慢性の胃腸症状の猫の検査を進めていく上で偶発的に発見されるケースもあります。治療は犬と同様に点滴や対症療法を行います。

異物誤食

異物誤食とは、犬や猫が食べ物以外のもの(おもちゃ、串、ウレタンマット、衣服、タオルなど)や、中毒性のあるもの(ネギ、チョコレート、ブドウ、飼い主様の服用している薬など)を誤って飲み込んでしまうことです。若い犬や猫で特に多く起こります。

食道、胃の出口、腸などに異物が詰まってしまうと(腸閉塞)、食べたものが先に進まなくなるため、頻回の嘔吐をするようになり、多くの場合緊急手術が必要となります。
胃内に異物がある状況で、鋭利なものや、粘膜を傷害するものでなければ、治療の第一選択肢は、催吐処置となります。吐き出すことが難しい状況であれば、麻酔をかけて、内視鏡や開腹手術を行い異物を摘出します。中毒物質を飲み込んだ場合は、飲み込んでからの時間経過、毒性の重大さにより、活性炭の服用や点滴、催吐処置、麻酔をかけての胃洗浄などの処置を行います。

いずれにしても、何をどのくらい飲み込んだのかというできるだけ正確な情報と、早急に対処することが重要です。

急性胃腸炎

犬、猫ともに最も多い消化器疾患が急性胃腸炎です。寄生虫やウイルス、細菌の感染による場合や、ストレスや食事の変更、環境の変化などの原因がある場合もあれば、原因がはっきりせず急に起こる場合があります。

症状としては急な嘔吐、下痢や血便、食欲低下などを起こします。小腸の炎症では少ない回数でまとまった量の下痢、大腸の炎症では少量頻回、ゼリー状の粘液や便の表面に少量の血液の付着を伴う下痢をする場合があります。
身体検査、糞便検査、超音波検査などの画像検査で、胃腸の状態や感染症の有無を検査します。特に子犬、子猫では寄生虫性の腸炎が多いため、糞便検査が非常に重要です。重度な胃腸炎では膵炎と症状が似ているため、同じように血液検査や画像検査なども組み合わせて診断していきます。
嘔吐をしている場合は、薬の投薬が難しいので通院や入院により注射や皮下点滴を行います。

急性胃腸炎は多くの場合は数日で軽快しますが、他の疾患を合併している場合や、高齢動物では治療に時間がかかることがあります。 症状の回復後に何度も胃腸炎症状を繰り返す場合は、腸内環境や食事の問題が考えられるため、食事療法を行うこともあります。

慢性腸炎・消化器型リンパ腫

数週間にもわたって嘔吐や下痢が続く場合は、慢性腸炎や腫瘍の可能性があります。これらの疾患は、一般的な治療や食事療法では改善せず、徐々に痩せて衰弱してきてしまいます。血液検査に加えて、レントゲン検査や、精度の高い超音波検査、細胞診、内視鏡生検などにより総合的に診断を確定していきます。特に2週間以上下痢や嘔吐が続いている場合や、痩せてきている場合などは、様子を見ずに詳しい検査を受けることが大切です。

慢性腸炎では、免疫細胞の働きの異常により腸の粘膜に炎症が引き起こされたり、腸リンパ管という栄養を運ぶ管が破綻し、栄養分が腸に漏れてしまうことがあります。多くの場合、特殊な食事療法やステロイド剤、免疫抑制治療などを組み合わせて腸の炎症をコントロールしていきます。良好にコントロールできた場合、長期間の生存が期待できますが、さまざまな治療を行なってもなかなか良くならない難治性の腸炎もあります。猫では、リンパ腫という腫瘍が多く発生します。腸の1箇所にしこりを作るタイプのものや、腸全体に腫瘍細胞が見られるものがあります。

治療はステロイド剤や抗がん剤治療が主軸となりますが、補助的に腸の病巣の切除を行うこともあります。シニアの猫に見られる悪性度が低いリンパ腫であれば、進行は緩やかなことが多く、がんの一種ではありながら長期間の生存が期待できます。

治療の流れ

  • ➀ ご来院・問診・身体検査

    まずは問診にて、どのような症状が、いつから、どのくらいあるかを細かく伺います。吐物や排泄物は写真を撮ってお持ちいただくと非常に参考になります。
    また、下痢の症状がある場合には新鮮な便をお持ちいただけると糞便検査が可能です。
    全身の身体検査の他、腹部の触診を行い、お腹の腫れや痛みがないかを確認していきます。

  • ➁ 検査の実施

    お腹の中のことは触診だけでは把握しきれないので、当院では吐き気や下痢といった症状が消化管からくるものか、他の臓器からくるものかを判断するために血液検査を実施しています。
    その他、糞便の検査やレントゲン検査、腹部の超音波検査を実施して、どのような異常が起きているのかを調べていきます。
    それらの検査で原因がはっきりしない場合や、症状が長期に及ぶ場合は内視鏡検査も行うことがあります。これらの設備は5つの病院全てに完備しています。

  • ➂ 治療のご提案

    検査結果に応じて治療を開始します。
    消化器疾患は、原因が食事にあることも多いため、食事の変更が最も有効な場合もあります。症状が重篤な場合、脱水や栄養不良を起こしていることが多いため、点滴を行います。また、吐き気や下痢を落ち着けるため注射や内服薬による治療も行います。 事前にご家族にそれぞれにあった治療法をご提案いたします。

  • ➃ 治療の評価

    消化器疾患は繰り返すことが多い疾患です。
    きちんと治療効果を診断し、いつまで治療を継続すべきかご相談していきます。 寄生虫性腸炎などは繰り返しの糞便検査できちんと駆虫ができているかの確認が重要です。
    改善が傾向が見られない場合には追加検査や治療法の変更などを検討する場合もございます。

消化器内科からのご案内

消化器の症状は、嘔吐や下痢、食欲不振、体重減少など、ご家族の方からも異常が検知しやすい反面、その原因は多岐にわたるため、漫然と対処していると本当の病気に気づかないことがあるため、特に、長く続く症状の場合は、しっかりと原因を突き止めていくことが大切です。

消化器科では、血液検査以上に、レントゲン検査や超音波検査の重要性が高いため、当院では最新の超音波検査機器、内視鏡装置を5病院全てにおいて導入しております。また、検査手技の向上のため、日常的に画像診断専門医による勉強会やカンファレンスを行い、画像診断技術の向上を日々心がけています。

また、当院は夜間診療も行なっていることからも、救急医療の対応機会も多く、中でも異物誤食の対応の機会が多いのが特徴です。さまざまな異物により引き起こされる状況により、日常的に、催吐処置、内視鏡処置、胃腸切開などの開腹手術により異物誤食への対応を行なっています。