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症例紹介・コラム

  • 猫の尿路疾患

    猫の下部尿路疾患とは?おしっこが出ないと命の危険も!原因、治療法から予防のストレス対策まで徹底解説 猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease、FLUTD)とは、膀胱炎、尿石症、尿道閉塞など猫の膀胱と尿道に起こる疾患の総称です。症状は主に、頻尿(排尿行為の増加)、排尿困難(排尿に時間がかかる)、血尿などが見られます。さらに進行すると、尿量の減少、元気・食欲の低下、嘔吐、脱水などの症状が現れ、放置すると命にかかわる危険性も。以下に、病院で多く診断する下部尿路疾患をご説明します。普段の食事、生活環境からのストレスが原因となっている場合もありますので、予防策についても詳しく見ていきましょう。 猫の下部尿路疾患の代表例 その1『尿路結石症』 人間と同様に、猫は尿路に石を作ってしまうことがあり、この疾患を『尿路結石症』といいます。膀胱内にできた結石(膀胱結石)が尿道に流れ、途中で尿道を塞いでしまうことを『尿道閉塞』といいます。尿路結石症は、いずれも命に関わる症状を引き起こしたり、手術や入院が必要になったりするような重大な疾患です。それぞれの疾患について、また、結石ができるしくみについて解説します。 尿道閉塞 尿道閉塞は放っておくと急性腎障害そして尿に排出されるはずの老廃物が血液中に蓄積されてしまう尿毒症が起こり、命に関わる危険な状態になります。以下のような症状が見られたら、直ちに動物病院に相談しましょう。【症状】尿意を感じても結石が詰まっていることで尿道から尿が出せないため、トイレに頻繁に行く、トイレで長い時間排尿姿勢をとる、といった症状が見られます。特にオスは尿道が細く結石が詰まりやすいため、注意が必要です。結石が詰まった尿道には痛みが生じるため、急に鳴き声を上げる、唸る、震える、伏せた姿勢のままになるなど、さまざまな様子の変化が見られることもあります。また、左右の腎臓の中に尿が溜まりすぎることで、重度の腎臓の障害が生じてしまいます。膀胱内に尿が溜まりすぎて膀胱が破裂し、尿がお腹の中に漏れてしまうこともあります。いずれも、ぐったりとしてしまう、吐いてしまうなど、著しい体調の悪化が見られます。【診断】尿が出しづらいという症状自体は、膀胱炎など別の病気でも見られます。身体検査、尿検査、X線検査や超音波検査によって膀胱や尿の状態を評価し、結石の有無を確認します。閉塞が疑われる場合には血液検査を行い、腎臓の状態を確認します。【治療】尿道カテーテルという細い管を尿道に挿入し、詰まった結石を膀胱の中に押し戻します。これで尿道内の結石は除去され、尿は開通した尿道を流れることができるので腎臓の負担が取り除かれます。腎臓が既に障害を受けている場合などは、数日入院治療を行いカテーテル経由で排尿させます。カテーテルを外しても問題なく排尿できれば、再発予防治療に進みます。膀胱に押し戻した結石が再度詰まる危険があるようなものであれば、手術による摘出を行います。 膀胱結石 【症状】頻尿、血尿などの尿の異常が見られることがあります。一方で、全く症状がなく過ごし、巨大な結石が健康診断で偶然見つかることもあります。【診断】X線検査や超音波検査によって膀胱の状態や結石の有無を確認することで診断します。また、尿検査を行い、尿の性状から結石の原因物質を推測します。【治療】結石が膀胱の中にとどまっていたとしても、今後その結石が尿道閉塞を引き起こすリスクがあります。また、慢性的な刺激が膀胱に加わって膀胱炎が生じたり、不快感の原因になったりすることがあります。尿路結石症用の療法食に食事を切り替えたり、細菌性膀胱炎がある場合はその治療を行ったりすることで結石が溶ける場合もありますが、多くは膀胱を切開して結石を取り除くような手術が実施されます。 結石はどのように作られる?どうすれば予防できる? 猫の尿路結石の多くは「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」か「シュウ酸カルシウム結石」という種類で、尿中のミネラル(マグネシウム、カルシウムなど)を主体とした結晶と蛋白質によって形成されます。なぜ、尿の中にこれらの結石が作られてしまうのでしょうか。健康な猫でも、尿の中には結石の原材料がバラバラになって存在しています。しかし、「①材料を溶かす液体(=尿の量)が少ない」または「②尿の中に存在する原材料が多すぎる」と、これらの原材料どうしは結合し結石になってしまいます。逆にいえば、 「❶水分摂取量を増やして尿の量を増やす」 「➋尿の中に存在する結石の材料を減らす」ことができれば、結石が作られるのを防ぐことができます。以下は、水分摂取量を増やす方法と結石形成の元となる材料を減らす方法や注意点です。 ポイント1.水分摂取量を増やす 食事と一緒に水分を摂れるようにするドライフードではなくウエットフードを選択したり、食事の風味が変わらない程度に水を足してみたりすると良いでしょう。 適切な体重を保ち、適度な運動を持続的に行う太り気味の場合は運動量も不足しがちになります。運動量が減ると飲水量も減ってしますので、注意しましょう。 また、寒い季節は運動量が低下しやすく、尿路結石が原因で受診する猫が増える傾向がありますので、意識して運動ができるようにしましょう。 水を飲みやすい環境を作る猫は、水飲み場に関して少しでも気になることがあると飲水量が減ってしまいます。飲み水は定期的に交換し、常に新鮮な水が飲める環境を作りましょう。トイレの近くに飲み水が置かれていることを嫌う場合もあります。また、流れるタイプの飲水器から好んで水を飲む猫もいます。飲水量が少ないと感じる場合は動物看護師や獣医師と相談し、より水が飲みやすい環境作りを試みてみましょう。 ポイント2.尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 猫の下部尿路疾患の代表例 その2『膀胱炎』 猫の膀胱炎は、猫と暮らしていると一度は経験するといって良いほど多く認められる病気の一つです。原因は細菌や結晶、結石、ウイルスなどが考えられてきましたが、最近では精神的ストレスでも膀胱炎を起こすことが分かっています。 細菌性膀胱炎 尿道を上がってくる細菌が原因で、猫では10歳以上で罹患率が高いと考えられています。【症状】トイレに行っても尿を出すのに時間がかかり、残尿感があるため頻繁に行ったり、トイレ以外の場所で排尿してしまったりする様子を見て飼い主様が気づくことが多いです。血尿や白く濁った尿、通常よりも強い臭いがする尿が認められます。排尿時や排尿後に痛がって鳴く、腹部や陰部を気にして過度に舐める、食欲不振、元気の低下、等が認められることもあります。【診断】尿検査により診断されます。【治療】適切な抗生剤を2~3週間使用します。この病気の予防策として、動物病院での定期的な健康診断により基礎疾患(糖尿病、腎不全など)が無いかを確認し、あれば速やかに治療を行い体内に細菌感染が起こりにくい環境をつくっておくことが重要です。また、飲水量を増やし、排尿回数を増やすことで尿道の細菌を洗い流す作用を期待します。 特発性膀胱炎 10歳以下で多く発生し、尿検査をしても、細菌、結晶などがみられません。何らかの精神的ストレスにより脳や神経が刺激され、膀胱粘膜や粘膜を被っている粘液層(GAG)に影響を及ぼすことが原因と考えられています。GAGが剥がれると、尿が膀胱の粘膜上皮を直接刺激して膀胱炎を悪化させたり、長引かせたりします。【症状】頻尿などの症状を示します。【診断】まずは尿検査、画像診断(膀胱や尿路の異常の有無を確認)等を行いますが、これらの検査を行っても細菌感染や尿路結石などの明確な原因が見つからない場合、猫の生活環境に関する飼い主様からの聞き取り事項も含め総合的に特発性膀胱炎と診断します。【治療】痛み止めや抗炎症薬、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬を使用すると同時に、ストレス要因を確認し、猫の生活環境を改善します。特発性膀胱炎は再発性が高く、継続的なケアと予防が重要です。定期的な診察と生活環境の見直しを行い、猫の健康を維持するための対策を講じることが推奨されます。 猫の下部尿路疾患は、日々の生活環境と大きな関係が。ストレスは大敵! 猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意してください。硬水のミネラルウォーターは結石ができる原因となるので与えてはいけません。器の高さや形状、素材が猫の好みに合っているかチェックし、より気に入るものを用意しましょう。季節や好みによって水の温度を変えてあげるのも工夫の一つです。なかなか水を飲もうとしない猫には、日常的にウェットフードを与えることで、全体的な水分摂取量を増やすことができます。 排尿しやすいトイレの工夫 猫のトイレはにおい・砂の触り心地や深さに気をつけ、清潔で快適な状態を保つことが重要です。特に多頭飼育の場合は、飼育している猫の頭数+1個はトイレを設置するようにしましょう(例:2頭の場合は、トイレを3個つなげて置くのではなく離れた3か所に置きます)。できるだけ静かな場所に設置し、猫が我慢せずに適切なタイミングで排尿できるようにすることが病気の予防につながります。最近では猫の『スマートトイレ』も販売されており、専用のスマートフォンアプリに登録することで体重や排尿の記録ができ、健康管理に役立ちます。 思い切り遊べる環境 猫は本能的に上下運動を好む動物ですので、キャットタワーを設置したり家具の配置を工夫してジャンプしたり飛び降りたりできるようにしましょう。また、猫本来の狩りの本能を満足させる遊びやおもちゃを用意して、運動不足を解消することも重要です。 安心できる場所 猫は隠れられる狭い場所を好む動物です。これは野生時代の習性から来ており、安全を確保し、ストレスを軽減するための重要な行動です。上下左右が囲まれた狭いスペース、ひとりになりたい時にゆっくりできるベッドなど、安心して過ごせる場所を確保してあげましょう。 多頭飼育の場合 食事、水、トイレ、寝場所、爪とぎ場所などが、各猫に確保されていて、その場所まで安心してアクセスできる環境が必要です。それぞれ「頭数+1個」を別々の場所に置くようにしましょう。これらの配置が適切でないと、寝床を巡ってケンカが起きたり、同居猫を警戒してトイレにアクセスできなかったりしてストレスとなる可能性があります。 その他ストレスの要因として、生活環境の変化(引越しや模様替えなど)、同居動物の増減や相性、留守番時間の長さ、飼い主様とのコミュニケーション、部屋の温度管理などがあげられます。要因は分かっているけれども良い改善方法が見つからない、うまく改善されない、などお悩みの時には、ぜひ獣医師にご相談ください。ストレスを和らげるためのサプリメントやフェロモン製品などが助けになる場合もあります。当院には動物行動学を専門に学んだ獣医師も在籍していますので、より具体的な対策のアドバイスを差し上げることが可能です。 まとめ 最後に、下部尿路疾患予防のためのチェックポイントです。  トイレは清潔にしていますか?  トイレの数は1頭につき1個、さらに+1個用意されていますか?  トイレは安心できる場所に置いてありますか?  トイレを我慢させてしまう環境ではありませんか?  毎日、猫の排泄する様子や回数・色・においなどを気にしていますか?  常に新鮮な水が飲めるようになっていますか?  猫が安心して過ごせる場所・時間はありますか?  体重過剰ではないですか?  定期的な健康診断を行っていますか? いかがでしたでしょうか?十分に実行できていなかったポイントは今日から早速改善していきましょう。 猫の排尿が滞ると、最悪の場合死亡することもある、非常に緊急性の高い状態になります。尿が出ていない、いつもより尿量が少ない、尿の色が変だ、など異常を感じた場合は躊躇せず、すぐにご来院ください。

  • 犬にとって良い食事とは?与えてはいけないものも!病気との関係や誤食の危険性まで徹底解説

    犬にはどんな食事が良い? 犬の食事については、個体の状態や生活ステージに応じて適切に対応することが大切です。成長期の子犬には骨や筋肉の発育に必要な栄養が求められ、成犬や高齢犬にとっては適切な体重管理や関節の健康維持が重要ですので、栄養バランスを考慮した食事が必要です。また、病気によって食欲が低下した場合は栄養補助食品や特別な食事が必要になることもあります。愛犬の状態を把握し、適切な栄養プランを立てる上で、一緒に暮らしているご家族の観察とかかりつけの病院での定期的な健康診断は、欠かせません。食事は日々の積み重ねであり、健康維持において重要な役割を果たします。犬の生活ステージや健康状態に合わせて食事を柔軟に調整することで、愛犬に健康で幸せな生活を送ってもらうことができます。 犬は雑食性。適切な食事の与え方 犬は一般的に雑食であり、肉や野菜、果物などさまざまな食材を摂取することができます。ただし、犬に人間の食事と同じようなものを与える場合、いくつかの留意点があります。 栄養バランス犬に与える食事は栄養バランスが重要です。タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれていることが必要です。 毒性のある食材人間には無害でも、犬には毒性のある食材があります。例えば、チョコレート、アルコール、アボカド、タマネギ、ニンニク、ブドウ、キシリトールなどは犬にとって有害ですので与えてはいけません。 適切な調理生の食材や食品は犬にとって消化が難しい場合や食中毒のリスクがあるため、気をつける必要があります。肉は適切に調理し、魚は寄生虫のリスクやチアミナーゼによるビタミンB1不足のリスクを減らすために加熱して与えることが重要です。 適量与える食事の量にも注意が必要です。過剰な摂取は消化不良や肥満を引き起こす可能性があります。 犬に与える食材には、鶏肉、牛肉、豚肉、野菜(例えば、人参、サツマイモ、ほうれん草)、果物(例えば、薄くカットしたリンゴ、バナナ)、穀物(例えば、米、小麦)、魚介類などがあります。しかし、与える際には上記の留意点を念頭に置いてください。気になることがある場合には事前に獣医師に相談することもおすすめします。 野菜や果物はヘルシー? 健康的というイメージで、野菜や果物を主食とともに、またはおやつとして与えている方は多いと思います。しかし、その中には間違った与え方をするとさまざまな障害を引き起こすものもあるので注意が必要です。アボカドやブドウ、レーズンは摂取することにより中毒を引き起こします。さつまいもやほうれん草はシュウ酸の含有量が多く、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクが高まります。また、じゃがいもなどの根菜類は意外とカロリーが高いということをご存じですか?例えば100gの中サイズのじゃがいも1個のカロリーはおよそ70kcalです。70kcalは、体重4kgの犬の1日に必要なカロリーの20%に相当します。その他にカロリーの高いものは、さつまいも(約130kcal/100g)やおから(約100kcal/100g)などがあります。反対にカロリーの低い野菜には、ブロッコリー(約33kcal/100g)、レタス(約12kcal/100g)、キャベツ(約23kcal/100g)などがあります。ちなみにブロッコリーは一口大で約3kcal、キャベツの千切り一握りで約10kcal程度です。野菜だから大丈夫、と思わず色々なことに注意しながら与えて頂きたいと思います。 犬の食事に味付けは不要 犬の食事に調味料や味付けを加えることは、一般的にはおすすめしません。多くの調味料や味付けには、犬にとって有害な成分が含まれている可能性があります。例えば、塩分や砂糖、人工甘味料、香辛料などは、犬の健康に悪影響を与えることがあります。 塩高塩分の食事は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。犬に与える食事に余分な塩を加えることは、高血圧や脱水、腎臓疾患などのリスクを高める可能性があります。 砂糖砂糖を含む食品は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。過剰な砂糖摂取は肥満などの健康問題を引き起こす可能性があります。 香辛料一部の香辛料は、犬にとって消化器官に刺激を与えたり、アレルギー反応を引き起こしたりする可能性があります。また、辛い食品は消化器官に負担をかけることがあります。 添加物人間の食品に含まれる添加物や人工着色料、保存料などは、犬にとって消化器官に負担をかける可能性があります。 犬の食事には、適切な栄養バランスが含まれている市販のドッグフードや、獣医師がすすめる特定の食事を選択することが重要です。もし自家製の食事を与える場合は、安全な食材で調理し、人間の食事に使われるような調味料や味付けは避けるべきです。 ドッグフードにおける総合栄養食・一般食・栄養補完食の違い 総合栄養食と表示されているものは、そのフードが栄養学的に完全な製品であることを示します。一般食は、人の食事に例えると「おかず」と理解してください。栄養補完食とは特定の栄養素のみを満たす製品のことです。つまり、一般食や栄養補完食のみを食べていると栄養バランスは偏り、さまざまな病気を引き起こすかもしれません。購入する時にはフードのパッケージの表示を必ず確認して選びましょう。 食事と病気の関係 犬が特定の病気にかかる原因はさまざまですが、食事もその一因となることがあります。以下に、食事が犬の健康に影響を与える可能性のあるいくつかの病気の原因を挙げてみます。 肥満カロリー過多な食事が肥満の原因となります。肥満は膵炎や関節疾患などの病気のリスクを高める可能性があります。また、肥満は犬の糖尿病の直接の原因にはならないですが危険因子の1つになります。 腎臓疾患高たんぱく質や高塩分の食事が腎臓に負担をかけ、腎臓疾患の原因となることがあります。また、水分不足も腎臓機能を損なう可能性があります。 食物アレルギー食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質が原因となることが多いです。これによって皮膚炎や消化器系の問題が引き起こされることがあります。 消化器疾患高脂肪の食事は、膵炎などの消化器系の疾患を引き起こす原因となることがあります。 尿路結石代表的な尿石にストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石があります。カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物(じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど)の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になるとストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモも、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまう傾向があるので過剰に与えないよう注意しましょう。 これらの病気の原因には他にもさまざまな要因が関与しますが、食事がその一部を占めることがあります。犬の健康を維持し、病気のリスクを減らすために適切な食事を与えることが重要です。 与えてはダメ!犬にとって危険な食べもの 犬が食べると危険な食べものには、以下のようなものがあります。 チョコレート・ココア(カカオ類)チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという成分は、犬にとって有毒です。摂取すると、神経系や心臓に影響を及ぼし、中毒症状を引き起こす可能性があります。特に、ダークチョコレートやビターチョコレートにはテオブロミンが多く含まれています。 タマネギ・ニンニク・ネギ類タマネギやニンニク等のネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物や有機硫黄化合物は、犬の赤血球を破壊する可能性があります。長期間にわたる摂取や大量摂取は、貧血を引き起こす恐れがあります。野菜スープやシチューなど調理されたものや調味料として使用されたものでも注意が必要です。 アボカドアボカドには、犬にとって有毒な成分であるペルシンが含まれています。消化器系や心臓に影響を与える可能性があります。 レーズン・ブドウレーズンやブドウには、原因不明の腎臓障害を引き起こす可能性のある成分が含まれています。レーズンを含むお菓子やパンなどの加工食品も注意が必要です。 アルコールアルコールは犬の体に非常に有害です。アルコール中毒症状を引き起こすだけでなく、呼吸困難や体温の上昇など、重篤な症状を引き起こす可能性があります。意図的に与えることはもちろん、誤ってアルコールを摂取することもありますので、注意が必要です。 コーヒーコーヒーは犬にとって有毒な飲み物です。コーヒーに含まれるカフェインは、犬の神経系や心臓に深刻な影響を与えることがあります。犬がコーヒーを摂取すると、過剰な興奮、心拍数の増加、呼吸困難、嘔吐や下痢、発作等の症状が現れる可能性があり、重篤な場合、命にかかわります。 キシリトールを含む食品キシリトールは人間にとっては低カロリーの甘味料ですが、犬にとっては有毒です。キシリトールを摂取すると、急激なインスリンの分泌が起こり、低血糖を引き起こす可能性があります。さらに、高用量では肝障害を引き起こすことがあります。キシリトールはガムやキャンディ、口腔ケア製品などに含まれていることが多いです。 これらの食材や物質は、犬の健康に悪影響を与える可能性があるため、絶対に与えないようにしましょう。犬がこれらの食材を誤って摂取した場合は、速やかに獣医師に連絡し、適切な処置を行う必要があります。 異物の誤食に注意(異物誤飲・異物誤嚥) 『異物誤飲』とは食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。『異物誤食』『異物誤嚥』と呼ぶこともあります。犬では串・おもちゃ・果物の種・薬・石・布などが多く、好奇心と食欲からか若い犬により多く見られますが、どの年齢でも起こり得ます。症状として最も多く見られるのは嘔吐です。他に、食欲不振、元気消失、よだれ、下痢、黒色便などがあります。薬を誤飲した場合は、薬品ごとに異なる中毒症状を引き起こします。特によだれがひどい場合、食べてすぐに吐き出す場合、嘔吐物が緑色であったり糞便臭がしたりする場合には注意が必要です。動物の吐く様子は診断の助けになりますから、必ず『どんなものを、どんな時に、どれくらい』吐いたのかを獣医師に伝えて下さい。嘔吐などの症状が出ている場合、まず異物が原因で起きているのかどうかの診断が重要です。入念な触診の後、レントゲン検査、バリウム検査、超音波検査等、各種画像検査を実施します。石や金属はレントゲンで明らかに映りますが、木・布・プラスチック・ゴムはレントゲンには映りにくいため、若い動物で嘔吐を繰り返す場合は異物誤飲の可能性を常に考えなくてはなりません。最近では、異物ではなく食べ物を詰まらせるケースが非常に多く、問題となっています。とうもろこしの芯、梅干しや果物の種、ジャーキー、砂肝などが代表的です。ジャーキーや砂肝を丸のみした場合に食道に詰まらせることがあり、よだれや嘔気、食べた直後に吐き出す等の症状で来院されます。食道に詰まったまま放置すると、時間経過とともに食道が穿孔する可能性が高くなり、胸膜炎をおこし、致死的な状態になります。とうもろこしの芯や果物の種の場合、「消化するかも?」と様子を見ているうちに、数日後から糞便臭のする吐物を吐いたりして来院されることがあります。また、異物が腸に詰まると、腸の中身が通過できなくなり腸閉塞という命にかかわる危険な状態になります。頻回・多量に嘔吐を繰り返し、ぐったりして急速に体調が悪化することが特徴です。時間が経つと腸の閉塞している部分の血液の巡りが悪くなり、最悪の場合、穴が開いてしまうこともあるため緊急手術が必要となります。いずれの場合も早期に診断されれば予後は良好ですが、全身状態が悪化している場合は検査・診断を急がなければなりません。人間が気にかけないようなものでも、動物にとっては興味の対象になることがあります。食事の後の不始末や、不適切なおやつのあげ方によって誤飲を引き起こさないよう、ご家族の方は充分ご注意下さい。 犬が誤食すると危険なもの10選 焼き鳥の串・アイスクリームの棒串や棒は食道や消化管に刺さって損傷したり、腸閉塞を引き起こしたりするおそれがあります。 とうもろこしの芯とうもろこしの芯は硬くて消化が困難なため、犬が誤って食べると腸閉塞や消化管穿孔を引き起こすおそれがあります 果実の種犬が果物の種を食べてしまうと、大きさによっては消化管に詰まるリスクがあります。また、リンゴやプラム、桃、アプリコットなどの種の核にはシアン化合物という毒素が含まれており、犬の体内で代謝されると吐き気、嘔吐、下痢、呼吸困難、神経系の症状などの中毒症状を引き起こす可能性があります。 魚の骨・鶏の骨魚の骨は比較的柔らかいですが、口や食道、消化管に刺さる可能性があります。鶏の骨は調理されると脆くなり、鋭い破片になることがあります。これらの鋭利な破片が消化管に詰まると、腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす可能性があり、緊急の状態となることがあります。 ボール等のおもちゃ・ゴム製品遊んでいるうちにおもちゃや家具の部品などのゴム製品を誤って飲み込むことがあります。ゴム製品は消化器系で十分に消化されず、消化管に詰まったり穿孔したりするおそれがあり、内出血や腹膜炎を引き起こすことがあります。 ペットボトルのフタ小さく、硬く、滑りやすいため、飲み込むと食道や消化管に詰まるリスクが高まります。小型犬では特に要注意です。 靴下やタオル・ぬいぐるみ等の布製品布製品は消化器系で充分に分解されず、消化管に詰まるおそれがあります。 人間の薬人間の薬には犬にとって有害な成分が含まれている場合があり、薬物中毒の症状が現れる可能性があります。 家庭で使われる化学物質家庭で使われる多くの化学物質は犬にとって有害です。例えば、清掃剤や殺虫剤、肥料などは誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。 植物一部の植物は触れる、噛む、または食べることで、犬に有害な影響を与える場合があります。例えば、チューリップ、スイセン、スズラン、アザミ、ポインセチア、ユリ、ツツジ(レンゲツツジ)、アイビーなどは毒素を含んでいるため、中毒症状を引き起こすことがあります。庭や家の中にこれらの植物がないか確認し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。 犬が何を食べてしまったか不明な場合や、誤食が疑われる症状が現れた場合にはすぐに獣医師に相談することが重要です。食べた異物の残骸が残っている場合にはそれを持って動物病院へ行くことで、診断の助けになることもあります。 まとめ 以上、犬の食事と食生活において注意するべきことをお伝えしました。日々の食事は、愛犬の生涯の健康と幸福に直結する重要な要素です。正しい知識を持ち、適切な食事を提供することで、愛犬の心身の健康を維持し、より良い生活を送ってもらうことができます。当院には犬の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』が在籍しています。愛犬の食事選び、与え方などにつきご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛犬の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。

  • てんかん ~内科的治療~

    疾患の説明 てんかんは慢性の脳の病気で、脳内の神経細胞に突然発生する激しい電気的興奮により発作が繰り返し起きます。てんかんの発作には、 ●全身的に硬直する ●四肢をバタバタさせる ●よだれが大量に出る ●体が部分的にピクピクする など様々な症状があります。 発作の後は、ボーッとしたりふらついたりしますが、しばらくすると元に戻ります。 発作は2分以内に終わることがほとんどですが、下記の場合は速やかな受診が必要です。 ●てんかん重積状態:5分以上続く場合や意識が戻る前に2回目の発作が起きる場合 ●群発発作:24時間以内に発作が2回以上起きる場合 ●発作の後の神経症状が1日以上続く場合 てんかんは、原因不明または遺伝に関連する「特発性てんかん」と、脳の障害による「構造的てんかん」、全身性の病気による「反応性発作」に分けられます。 発作の原因となる病気の有無を脳MRI検査・脳脊髄液検査・神経学的検査・血液検査などで確認し、病気がある場合はその治療を行います。 発作を繰り返す場合、発作の予防薬(抗てんかん薬)の投薬を開始します。 治療の内容 今回のケースでは、脳MRI検査、神経学的検査、血液検査、および初発の発作発症年齢により特発性てんかんと診断されました。 また、月1回の頻度でてんかん発作が起きていたため、抗てんかん薬の投薬を開始しました。 その後、定期的に抗てんかん薬の血中濃度検査を行い投薬量の調整をしたところ、血中濃度が有効な範囲に達してからは、発作が起きなくなりました。 発作は回数を重ねるほど、徐々に悪化していくことがあります。 悪化してから抗てんかん薬を始めても効果が出にくく、早期に始めるとよく効く場合が多いです。 抗てんかん薬を開始する基準の一つとして、「6ヵ月に1回以上の発作が起きる」という目安があります。 治療後の注意点 治療の第一目標は、発作が完全に見られなくなる、または発作が起きない期間が治療前の3倍に延長する(3ヵ月以上の間)ことです。 第二目標は、発作の頻度が50%以上低下する、群発発作やてんかん重積状態を認めない、または発作の重症度が軽減することです。 いずれかの目標が達成された場合、投薬の効果があったと判断します。 発作が1~2年以上起きていない場合、抗てんかん薬を少しずつ減量して中止を試みることができます。 逆に、てんかん重積状態になったことがある場合や、発作頻度が月に0.3回以上と多い場合は、残念ながら生存期間は短くなります。

  • がん(悪性腫瘍)

    がんとは? 組織や細胞が過剰に増殖することによってできる組織塊のことを腫瘍と言い、「良性」と「悪性」があります。「悪性」の腫瘍のことを「がん」と呼び、下記のような特徴があります。 がん(悪性腫瘍)の特徴 ●がん細胞は一般の細胞より増殖するスピードが比較的速く、周りの組織を巻き込んで広がっていく。 ●良性腫瘍は、腫瘍の境界線が滑らかで形が整っているのに対し、悪性腫瘍は境界線が不明瞭で不均一に見える。 ●悪性腫瘍は周囲を壊しながら広がったり(浸潤)、離れたところに飛び移ったり(転移)する。 「がん」の診断から治療まで 適切な治療を行うためには、ペットの一般状態や「がん」の性質・広がりを正確に把握しておく必要があり、そのためには診察や様々な検査を実施します。 検査により診断された”病期(ステージ)”に基づいて、最も適した治療の進め方を検討していきます。 1.血液検査・画像検査 がんが疑われた場合、より詳しい情報を得るために、血液検査・エコー検査・X線検査・CT検査などを実施し、診断をしていきます。 2.組織学的検査 可能な限り、組織学的検査・細胞診検査(病変から採取した組織・細胞を顕微鏡で観察する検査)を行ないます。 3.腫瘍の進行度と全身の評価 がん診断確定の後、腫瘍の進行度や転移の有無、治療に耐えられる状態なのかどうかを評価(ステージング)します。 4.治療目的の決定 ステージングした後、「がんを治す」「がんが進行するスピードを遅くさせる」「苦痛を軽減させる」など、治療の目的をご家族と相談の上で定めます。 5.治療法の選択 がんの3大療法として、手術でがんを摘出する「外科療法」、放射線照射によってがん細胞を殺滅する「放射線療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」があります。 これらを単独もしくは組み合わせて治療を行っていきます。当院では、近年“第4のがん治療”として注目されている「免疫療法」も場合によってはご提案しています。 ペットによくみられる「がん」 がんは、犬猫共に死亡原因の上位にランクインしており、人間の場合と同様、加齢とともに発症する確率が高くなります。 当院で診察する機会の多いがんに下記のようなものがあります。 ◆ 乳腺腫瘍 犬では良性と悪性が半々と言われていますが、猫では悪性がほとんどです。ステージングを行い、病期に合った治療法を行いますが、主には外科療法が中心となります。 術後は、病理検査により得られた情報に基づいて化学療法を行うか決めていきます。 ◆ リンパ腫 体の各所のリンパ節が腫れたり、腸・肝臓・腎臓などの内臓に病変を作ります。 この腫瘍は、外科療法単独では治療困難である一方、抗がん剤が効果的であるため、化学療法が第一の選択肢となることが多いです。 ◆ 肥満細胞腫 体表にできる場合と内臓にできる場合があります。前者の方がしこりとして確認しやすく見つけやすいためか、件数が多いです。 しこりは、その外見だけではがんか否かを判別できないため、組織学的検査・細胞診検査が必要となります。 治療は主に外科療法を行いますが、化学療法を併用することもあります。 セカンドオピニオンを活用しましょう ペットががんと診断された場合は、担当獣医師から治療法について複数の選択肢を提示されることでしょう。 もし、「病状の説明が理解できない」「どの治療法にも不安があり選択に迷う」などといった疑問・不安が少しでもる場合は、担当獣医師と十分な話し合いをするべきです。 担当医だけはでなく、他の獣医師の意見も聞きたいという場合は、 様々な治療法や最新情報に精通している腫瘍科の専門医(※)に「セカンドオピニオン」を求めることをお勧めします。 セカンドオピニオンを受けることで、自身が選ぶ治療法について多角的に知ることができます。 このような段階を踏むことは、納得のいく治療法を選択するための道標となるでしょう。 ※当院には、3んとは? 組織や細胞が過剰に増殖することによってできる組織塊のことを腫瘍と言い、「良性」と「悪性」があります。「悪性」の腫瘍のことを「がん」と呼び、下記のような特徴があります。 がん(悪性腫瘍)の特徴 ●がん細胞は一般の細胞より増殖するスピードが比較的速く、周りの組織を巻き込んで広がっていく。 ●良性腫瘍は、腫瘍の境界線が滑らかで形が整っているのに対し、悪性腫瘍は境界線が不明瞭で不均一に見える。 ●悪性腫瘍は周囲を壊しながら広がったり(浸潤)、離れたところに飛び移ったり(転移)する。 「がん」の診断から治療まで 適切な治療を行うためには、ペットの一般状態や「がん」の性質・広がりを正確に把握しておく必要があり、そのためには診察や様々な検査を実施します。 検査により診断された”病期(ステージ)”に基づいて、最も適した治療の進め方を検討していきます。 1.血液検査・画像検査 がんが疑われた場合、より詳しい情報を得るために、血液検査・エコー検査・X線検査・CT検査などを実施し、診断をしていきます。  2.組織学的検査 可能な限り、組織学的検査・細胞診検査(病変から採取した組織・細胞を顕微鏡で観察する検査)を行ないます。  3.腫瘍の進行度と全身の評価 がん診断確定の後、腫瘍の進行度や転移の有無、治療に耐えられる状態なのかどうかを評価(ステージング)します。  4.治療目的の決定 ステージングした後、「がんを治す」「がんが進行するスピードを遅くさせる」「苦痛を軽減させる」など、治療の目的をご家族と相談の上で定めます。  5.治療法の選択 がんの3大療法として、手術でがんを摘出する「外科療法」、放射線照射によってがん細胞を殺滅する「放射線療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」があります。 これらを単独もしくは組み合わせて治療を行っていきます。当院では、近年“第4のがん治療”として注目されている「免疫療法」も場合によってはご提案しています。  ペットによくみられる「がん」 がんは、犬猫共に死亡原因の上位にランクインしており、人間の場合と同様、加齢とともに発症する確率が高くなります。 当院で診察する機会の多いがんに下記のようなものがあります。 ◆ 乳腺腫瘍 犬では良性と悪性が半々と言われていますが、猫では悪性がほとんどです。ステージングを行い、病期に合った治療法を行いますが、主には外科療法が中心となります。 術後は、病理検査により得られた情報に基づいて化学療法を行うか決めていきます。 ◆ リンパ腫 体の各所のリンパ節が腫れたり、腸・肝臓・腎臓などの内臓に病変を作ります。 この腫瘍は、外科療法単独では治療困難である一方、抗がん剤が効果的であるため、化学療法が第一の選択肢となることが多いです。 ◆ 肥満細胞腫 体表にできる場合と内臓にできる場合があります。前者の方がしこりとして確認しやすく見つけやすいためか、件数が多いです。 しこりは、その外見だけではがんか否かを判別できないため、組織学的検査・細胞診検査が必要となります。 治療は主に外科療法を行いますが、化学療法を併用することもあります。 セカンドオピニオンを活用しましょう ペットががんと診断された場合は、担当獣医師から治療法について複数の選択肢を提示されることでしょう。 もし、「病状の説明が理解できない」「どの治療法にも不安があり選択に迷う」などといった疑問・不安が少しでもる場合は、担当獣医師と十分な話し合いをするべきです。 担当医だけはでなく、他の獣医師の意見も聞きたいという場合は、 様々な治療法や最新情報に精通している腫瘍科の専門医(※)に「セカンドオピニオン」を求めることをお勧めします。 セカンドオピニオンを受けることで、自身が選ぶ治療法について多角的に知ることができます。 このような段階を踏むことは、納得のいく治療法を選択するための道標となるでしょう。 ※当院には、3名の日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医(Ⅱ種)が在籍しています。 赤木東吾 院長(市川総合病院)・林 諒 副院長(市川総合病院)・金地裕美獣医師(三ツ目通り病院)

  • 膝蓋骨内方脱臼 ~膝蓋骨脱臼整復術~

    疾患の説明 膝蓋骨内方脱臼は、主に小型犬に多く見られる疾患です。 膝の伸展機構である、大腿四頭筋・膝蓋骨・膝蓋靭帯・脛骨粗面の配列が不正になることで発生します。 疾患の診断 膝蓋骨脱臼は、触診・レントゲン検査・CT検査などにより診断し、症状の程度により4段階で評価します。 要因としては先天的な場合が多く、成長期に悪化することもあります。 主な症状に、後肢の跛行(引きずり)があり、その程度はたまにケンケンをするようなものから、膝を伸ばすことが困難で正常な歩行ができなくなるものまであります。 重度な症状が認められる成長期の場合は、なるべく早期の外科的治療が推奨されます。 また持続的な症状があるケースや徐々に悪化が認められるケースでも、外科的な治療が推奨されます。 膝蓋骨脱臼のグレード分類 症状評価 臨床症状 グレード1 手で膝蓋骨を脱臼させることができるが、放すと自然に正常な位置に戻る。関節の屈伸は正常。 グレード2 膝蓋骨は自然に脱臼しているが、手で戻すと正常な位置に戻る。大腿骨に軽度の骨格変形がみられることがある。 グレード3 膝蓋骨はほぼ脱臼したままで、手で正常な位置に戻してもすぐに脱臼する。大腿骨と脛骨の変形を伴うことがある。 グレード4 膝蓋骨は常に脱臼したままで、手でも元の位置に戻すことができない。大腿骨と脛骨の変形が顕著である。 治療の内容 膝蓋骨内方脱臼は1つの術式の手術だけでは治療が難しい疾病です。 この症例は、膝蓋骨内方脱臼グレードⅢと診断され、4つの術式を組み合わせた手術を行い、膝の伸展機構を一直線上に整えました。 「内側リリース術」「関節包縫縮術」「脛骨粗面転移術」「滑車溝深化術」の4つの術式を組み合わせた手術を実施した結果、 内側に外れていた膝蓋骨(写真〇内)を正常な位置に戻すことができました。 利用後の注意点 手術後は数日包帯を巻き、術創を安定化します。その後は徐々に歩行を開始して、早期の運動機能回復を図ります。 手術後は5~7日程度の入院が必要となります。退院後、3~4週間まではドッグランなどで走って遊ぶことは避け、リードを付けての運動に限定します。 回復後も、関節の可動域や歩様を確認のため定期的な通院が必要となります。 当院では、運動機能の回復に有効なウォータートレッドミルなどによるリハビリ指導も行っています。