診療・ケア 細胞治療科

診療・ケア

Cell therapy.細胞治療科

間葉系幹細胞療法とは?

新しい治療法として再生医療に注目が集まっていますが、苅谷動物病院では、再生医療のうち「間葉系幹細胞療法」という治療法を実施しています。

    皮下脂肪の中には、間葉系幹細胞(MSC)という細胞が含まれています。この細胞は、損傷した臓器の回復を促したり、免疫バランスの乱れを正したりする機能を持っています。病気の動物にMSCを投与すると、これらの機能が体内で発揮し、病気の回復を助けてくれる場合があります。

  • 従来の治療法とは異なる作用メカニズムであるため、従来の治療法で反応が得られなかった子に対しても有効である可能性がある
  • 副作用が比較的生じにくく、従来の治療法が副作用により継続できない場合に有効である可能性がある
  • というメリットがあります。 下記の疾患の治療中に、既存の治療に反応がなく、なおかつ規定の条件を満たす場合に、間葉系幹細胞療法のご提案をさせていただく場合がございます。また、飼い主様から本治療についてのご質問、実施のご希望があればお声かけください。詳細をご説明させていただきます。

細胞治療

適応となる疾患

下記疾患のうち、各疾患に設けられた基準を満たすもの

イヌ

  • 【消化器疾患】慢性腸症(CE)
  • 【肝胆膵疾患】肝炎、膵炎
  • 【血液疾患】免疫介在性溶血性貧血(IMHA)免疫介在性血小板減少症(IMTP)非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)赤芽球癆(PRCA)再生不良性貧血(AA)
  • 【内分泌疾患】糖尿病
  • 【泌尿器疾患】慢性腎臓病、急性腎障害
  • 【神経疾患】椎間板ヘルニア、非感染性髄膜脳脊髄炎、外傷性脊髄損傷
  • 【骨・関節疾患】関節炎(変形性関節症・免疫介在性多発性関節炎)
  • 【皮膚疾患】アトピー性皮膚炎、天疱瘡(尋常性、落葉状)
  • 【眼科疾患】乾性角結膜炎
外科・診療中の猫

ネコ

  • 【消化器疾患】慢性腸症
  • 【肝胆膵疾患】胆管肝炎、膵炎
  • 【血液疾患】免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
  • 【内分泌疾患】膵炎続発性糖尿病
  • 【泌尿器疾患】慢性腎臓病、急性腎障害
  • 【呼吸器疾患】喘息
  • 【神経疾患】非感染性髄膜脳脊髄脳炎、外傷性脊髄損傷
  • 【骨・関節疾患】関節炎(変形性関節症、免疫介在性多発性関節炎)
  • 【皮膚疾患】天疱瘡(尋常性、落葉状)
  • 【口腔疾患】慢性口内炎
  • 【感染症】猫伝染性腹膜炎 ※wet型のみ
外科・診療中の猫
※適応疾患は変更になる場合があります。
※細胞治療は新規治療であり、科学的根拠が十分に集積されている段階の治療ではありません。症例に対して細胞治療を実施することが適切かどうかは慎重に判断する必要があり、上記の条件を満たす全ての患者様に、当院から必ずご提案させていただいている治療ではないことをご了承ください。

治療の流れ

  • ➀ ご来院・問診・身体検査

    ご家庭での様子、症状や、今まで行ってきた治療、今後の治療方針のご希望などをお聞きし、本治療法についてのご説明、治療適応までのプランについてご説明をさせていただきます。

  • ➁ 検査の実施

    正確に全身の状態を把握し、病気の診断のために、院内での血液検査、尿検査、X線検査、超音波検査、CT検査、内視鏡検査等を実施します。 ※他病院で既に検査を行っている場合でも、必要に応じて当院で再度同様の検査を実施する場合があります。

  • ➂ 治療のご提案

    間葉系幹細胞療法が適応と判断された場合、今後の治療計画を組み立てていきます。間葉系幹細胞療法の適応でないと判断された場合、あるいは間葉系幹細胞療法以外に推奨される治療がある場合にも、その方針をご提案させていただきます。

  • ➃ 治療の実施

    細胞を投与します。当院では、動物再生医療技術研究組合あるいは物産アニマルヘルスによって、健康な子から採取された脂肪から分離・培養され、安全性および品質の評価が適切に行われた細胞を使用しています。 細胞を混和した点滴を、血管の中に時間をかけて投与する、静脈内投与によって投与を行います。
    投与は、半日から1日程度で終了します。(疾患によっては局所に直接投与したり、複数回投与する場合があります。)投与前後の体調管理のために入院治療をご提案させていただく場合があります。

  • ➃ 治療の評価・検証

    投与後、治療効果が得られているか、副作用が生じていないかを評価するため、定期的な診察、検査等を行わせていただきます。

細胞治療科からのご案内

間葉系幹細胞療法は、副作用が問題となって治療が継続できない、従来の治療法では改善が得られなかった動物に対する新たなアプローチとして期待されています。
一方、「必ず効果が得られる」「絶対に副作用がない」治療法ではなく、その有効性について慎重に検討していく必要がある新しい治療法です。当院では、「安全」かつ「適切」にこの治療を提供できるよう努めています。お気軽にご相談ください。