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Case Studies and Columns 症例紹介・コラム

症例紹介

  • 歯周病 ~抜歯術・粘膜フラップ形成術~

    疾患の説明 歯周病は、歯肉炎と歯周炎に分類されます。歯肉のみに炎症があるものを歯肉炎、歯周囲の骨まで炎症が及んでいるものを歯周炎と言います。 歯肉炎を放置しておくと、歯周炎へと進行します。歯周病の治療は早期発見が重要で、歯肉炎の段階で治療を行えば完治します。 しかし、歯周炎にまで進行した場合は、骨の喪失が見られ、喪失した骨を再生することは困難であるため、完治は難しくなります。 治療の内容 全身麻酔下で口腔内の精査と処置を行いました。普段から自宅でケアを行って頂いていたこともあり、肉眼所見上は比較的良好な状態でした。 しかし、レントゲン検査にて、左上顎犬歯から第2前臼歯までに及ぶ骨の喪失(写真の矢印部分)が見られました。 まず、すべての歯に対し、超音波スケーラーで歯石の除去を行いました。ついで、歯周ポケット内の歯石を除去しました。 歯石の除去が終わった段階で、歯周病に罹患した歯を抜歯。 抜歯部分を洗浄・消毒。歯茎と粘膜を切開し、切開した粘膜を引き伸ばし(粘膜フラップ形成)、抜歯窩(歯を抜いたあとの穴)を覆うように閉鎖しました。 治療後の注意事項 処置後は、術創からフードのカスが入り込むと化膿の原因となるため、1週間は食事を肉のみに制限しました。

  • 異物誤飲 ~内視鏡下異物摘出術~

    疾患の説明 おもちゃを含めた、食べてはいけないものを食べてしまうことを異物誤飲と言います。好奇心旺盛な子犬・子猫に多い疾患です。 治療の内容 一般的な処置の方法として、まずは催吐処置を行います。大きさや形状などの要因から催吐処置で吐かない場合には、内視鏡手術や開腹手術を行います。 この症例では、飼い主様が異物誤飲に気づき、すぐに連れて来ました。レントゲン検査を行い、異物が胃の中にあることを確認しました。かなり大きな物が写っています。 まずは、トラネキサム酸の副作用を用いた催吐処置を行いました。液体状のものは嘔吐しましたが、おもちゃは出てきません。 そこで、飼い主様と相談し、麻酔下で内視鏡手術を行うことになりました。 内視鏡では取れる可能性が低い大きさのものではありましたが、飼い主様より「開腹は避けたい」との希望があり、最善を尽くすとお話ししての手術です。 血液検査を行い全身状態に大きな異常がないことを確認してから、全身麻酔を行いました。内視鏡を口から挿入するとすぐに、コングの1段目を発見することができました。 いくつかの異物除去鉗子を用いましたが、形状と大きさから摘出することができません。 そのため、コングの中央に穴が開いている構造に着目して、糸をその穴に通すことにしました。 コングに通った糸を口の外で保持し、内視鏡で観察しながら慎重に胃から引き上げ、摘出することができました。 治療後の注意点 麻酔中の様子および覚醒後の体調も問題が無かったので、その日のうちに退院となりました。 大きな異物を摘出したために食道にわずかな炎症が起きましたので、粘膜保護剤を3日分処方しました。 今回は何とか内視鏡で摘出することができましたが、異物誤飲は繰り返しやすい疾患であり、再発を防ぐためには飼い主様の注意が必須です。 生活環境の整備など、再発を防ぐための指示をし、定期的に様子を伺うこととしました。

  • 骨折 ~骨折整復術~

    疾患の説明 骨折の多くは、様々な外傷の結果発生します。 トイプードルやポメラニアンなどの小型犬は数十センチの高さから落下した場合にも骨折する場合があり、前脚(特に橈骨尺骨)の骨折が多く見られます。 骨折が起こりやすいシチュエーション ●抱っこ中の飼い主様の腕中からの落下やソファー等からのジャンプ ●窓やベランダからの落下(主に猫) ●階段からの転落 ●交通事故 治療の内容 骨折の治療には様々な手法があり、動物の体格・骨折部位・折れ方・周囲の軟部組織の損傷の仕方などにより、適した治療法を選択・組み合わせて行います。 また、骨折に至る際には、外部から大きな衝撃を受けている場合が多いため、胸部や腹腔内の臓器の損傷についても注意深く検査を実施します。 骨折の主な治療法 ●内固定方 骨折部位を切開し、プレート・スクリュー(ねじ)・ピン・ワイヤーなどのインプラント(固定金具)を用いて折れた骨を固定する手術方法です。 近年、より高い固定強度が得られるインプラントが開発されており、当院では積極的に導入しています。 A:コンベンショナルプレートで固定したトイ犬種の前脚の骨折 B:ロッキングプレートと髄内ピンで固定した大腿骨の粉砕骨折 C:スクリュー(ラグスクリュー)とピンで固定した肘の関節内骨折 D:ピンとワイヤー(テンションバンドワイヤー)で固定したかかとの骨折 ●創外固定法 ピンと固定器具を使用し、皮膚の外側から骨折部を固定する手術方法です。 ●ギプス固定法(外固定法) ギプス単独で骨折部位を固定する方法です。主に外科手術後の補助的固定のために実施されます。 治療後の注意点 手術後は経過が順調であれば、内固定法を行った場合、数日後にはほぼ通常通り足を使えるようになります。 手術後は5~7日程度の入院が必要となりますが、その後は自宅で管理をして頂きます。 術後3~4週間までは自由に走って遊ぶことは避け、リードを付けての運動に限定します。 自宅では高いところから飛び降りたり、過度な激しい運動はさせないように注意をして頂きます。