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  • 犬・猫のしぐさと気持ちの関係 より良いコミュニケーションのためのヒント

    言葉が通じない動物たちは、しぐさや行動で私たちに気持ちを伝えています。今回は、当院行動診療科の獣医師監修のもと、動物たちの気持ちに寄り添い、より良いコミュニケーションを築くためのヒントをお伝えします。 動物の気持ちは行動に表れる!? 脳で生まれる気持ちと行動 人を含めた動物は、何らかの刺激や出来事に遭遇した時、それが自分にとって“危険で有害なもの”なのか“欲求を満たしてくれる有用なもの”なのかを短時間で評価しています。その際、大脳辺縁系では、前者の場合には不快情動(恐怖や怒り)が、後者の場合には快情動(喜び)が発生し、それに応じた行動や生理学的な変化(震えや表情)が引き起こされます。これに対し、より複雑な認知を司る大脳新皮質は、その場の状況を分析し判断することで、咄嗟に生じた情動をコントロールする役割を担っています。つまり、過剰な行動や反応をとることなく、論理的で理性的な態度に導くのが大脳新皮質の役割なのです。 脳の構造 脳の基本的な構造は、人も犬・猫も同じです。 前頭前野:大脳新皮質の中でも、特に情動の制御を司る。 大脳新皮質:高度な認知・分析・判断などを司る。進化的に新しい部分。 大脳辺縁系ー視床:情動や本能的な行動を司る。 脳幹:生命維持活動を司る。進化的に古い部分。 動物は人よりも素直⁉ 人と犬・猫の脳を比較すると、大脳辺縁系の発達には大差がない一方、前頭前野に関しては人が飛び抜けて発達しています。つまり犬・猫は人と比べ、理性的な行動をとるためのコントロールが弱く、情動どおりの過剰な反応をとりがちであることがわかります。しかし、別の言い方をすれば、人と違い、犬・猫は状況や相手に応じて忖度したり嘘をついたりせず、素直に心模様を表現する存在だとも言えるのです。 ■前頭前野が大脳に占める割合 猫:3.5%程度犬:7%人:30% 例えば、怒られた時、人間は反省したり、相手に忖度した行動をとることができます。しかし、動物は言葉の意味や状況を深く理解することはできません。一見、反省しているように見えても、人の大声や興奮した様子に、恐怖や怯えを感じているだけかもしれません。 動物にも個性が! 心のキャパシティ(容量)には個体差がある さまざまな刺激に対して恐れを抱きやすい動物もいれば、動じにくく寛容な態度を示す動物もいます。このような反応の違いは、その動物が持つ【ストレス耐性=心のキャパシティ】の差にあります。 刺激や状況に対して快情動が生じやすい動物↓ストレス耐性が高い↓心のキャパシティが大きい 刺激や状況に対して不快情動が生じやすい動物↓ストレス耐性が低い↓心のキャパシティが小さい 動物それぞれのストレス耐性は以下の要因が影響しています。 遺伝 親動物から引き継いだ個性は無視できない大きな要因です。親と子の風船の大きさは、比例しやすいと言えます。 胎児期、子犬・子猫期の経験 胎児期に親動物がストレスを多く受けたり、子犬・子猫期に親動物から適切なケアを受けられないことがあったりすると、脳の発達に影響が及び、ストレスへの反応が下手になってしまう、つまり風船が小さくなってしまうことがわかっています。 風船は、子犬・子猫の時期に楽しくさまざまな経験を積ませることで、大きくすることができます。これを社会化と言います。当院では、社会化のためのトレーニング・プログラムをご用意しています。子犬・子猫を育てている方、または家族に迎える予定がある方は、ぜひこの貴重な時期を逃さないよう、プログラムにご参加ください!(※ご興味のある方は病院スタッフまでお問い合わせください) ▶社会化とは? 人間社会でともに楽しく暮らすために、人との関係、または犬や猫などの動物の間で必要な“社会性”や“規範”を身につけることを言います。“社会性”や“規範”は生まれつき備わっているわけではなく、学習により後天的に得られるものであるため、飼い主が社会化の機会を作ってあげることがとても重要です。 犬では生後3~16週齢頃、猫では生後3~12週頃が、さまざまなことに馴れるのに適した柔軟な時期で「社会化期」といわれています。子犬・子猫を家族に迎えたら、早速、社会化を促進させてあげましょう。  ちなみに、社会化期を過ぎた成犬も時間をかけてじっくりと楽しい経験を積み重ねることで、社会性を身につけることは可能です。ただし、子犬や子猫の場合より数倍の時間がかかるので、ぜひこの大事な「社会化期」を逃さないようにしてください! 我が家の愛犬・愛猫の風船は? 快適に暮らしてもらうためのヒント Point1:風船の大きさを知り、見合った経験をさせましょう 以下に対する愛犬・愛猫の反応を観察してみましょう。あらゆる刺激に対して、“高頻度に激しく”怖がる場合は風船が小さいと言えます。 ・ 社会的な状況(見知らぬ人や動物に出会った時) ・ 見知らぬものや音(雷や大きな音、初めて見るものや動き) ・ いつもと違う状況(来院、旅行、留守番、新奇環境) 愛犬・愛猫が持っているのが小さい風船だった場合、ご家族が良かれと思ってさせる経験(他動物との交流など)も、大きな負担・恐怖になっている可能性があります。だからと言ってすぐに大きな風船に取り替えることはできないので、まずは風船の大きさを個性として受け入れた上で、愛犬・愛猫のストレスにならないペースを見極め、できることを褒めて増やしながらゆっくり自信を養ってあげましょう。 風船の概ねの大きさは子犬・子猫期に決まります。その後は急な変化は望めませんが、それぞれに合わせたペースで経験を重ね、風船が膨らんだ状態を保つことで、生涯を通じて少しずつ大きくすることは可能です。 Point2:風船をいつも膨らませておきましょう!  大きな風船を持っていても、しぼんでいては台なしです。【風船が膨らんだ状態=幸せな状態】を保つためには、適切で快適な環境で暮らせることが必要です。「犬の環境エンリッチメント」「猫の5つの柱」というガイドラインを参考に、愛犬・愛猫の生活環境を今一度見直してみましょう。 ▶犬の環境エンリッチメント 空間エンリッチメント動物種本来の正常な行動がとれるように、充分なスペースと安心できるプライベート空間を与える。 採食エンリッチメント本来の摂食行動に近づくよう、知育玩具などを用い捕食欲求を満たす。 感覚エンリッチメント散歩や遊びなどを通して、視覚・触覚・嗅覚などに刺激を与える。 社会的エンリッチメント人や他の動物との関わりの機会を設ける。 認知エンリッチメント知育玩具やトレーニングに挑戦し、考える機会を与える。 ▶猫の5つの柱 第一の柱安全で安心できる場所を用意し、上下運動ができるように家具の配置を工夫する。 第二の柱トイレ・フード・水・爪研ぎ・オモチャ・寝床などは複数用意する。トイレは適切な形や大きさのものを設置し、常に清潔にしておく。 第三の柱知育玩具や猫じゃらしなどを用いて、捕食欲求を満足させる機会を与える。 第四の柱猫の好むスタイルで交流し、人と猫の適切な社会的関係を構築する。 第五の柱猫の嗅覚の重要性を尊重した環境を用意する。 「犬の環境エンリッチメント」と「猫の5つの柱」のより詳細な情報は、こちらでご覧いただけます。 あなたは分かる? 愛犬・愛猫が伝えたい本当の気持ち 犬や猫の情動(気持ち)は行動に表れます。皆さんは、動物のボディランゲージを正しく理解できているでしょうか?次のクイズに挑戦して、動物の気持ちが表れるポイントをチェックしてみましょう! Q1. 不安を感じているのは、どちらの犬でしょうか? 答え:1番 ‟ヘソ天“は無防備な体勢であり、一般的にご家族に対しては、心を許し安心している時に行います。一方で、自分が怖いと思う相手に対して、敵意がないことを示すために行う場合もあります。1番は尾が巻かれ後肢の間に入っており、身体が丸まっています。また、耳を後ろに引いており、表情も固いです。これらの仕草は、恐怖・緊張・不安を表しており、「ちょっと怖いな。僕は敵じゃないから、仲良くしようよ」というメッセージが伝わってきます。 Q2. 今にも攻撃してきそうな2頭ですが、本当は怖がっているのはどちらでしょうか? 答え:2番  2頭の“耳の位置”と“口角の引き具合”に注目してみましょう。犬は恐怖を感じると、耳が後ろに引かれ、口角も後ろに引き気味になります。2番の犬は、姿勢を低くしていることからも弱気な様子が見てとれ、「お前、こっちに来るなって言ってるじゃねーか!」と言っているようですね。一方、1番は耳がピンと立っており、口は口角を前に押し出すように開いていることから、怒って積極的に威嚇している様子がうかがえます。 犬が恐怖・不安を感じている時には、表情の他に以下のようなボディランゲージを示すことがあります。 口の周りを舐める  あくびをする 目をそらす     反応が過敏になる 動きがゆっくりになる 落ち着かなくなる  など Q3. この中で怖がっているのは、どの猫でしょうか? 答え:1番と3番 猫の緊張・恐怖・攻撃性は、顔・しっぽ・姿勢などに表れます。1番は身体を大きく見せようと、尾と毛を立たせ威嚇をしているものの、耳は後ろに引いており、開いた瞳孔からは恐怖が感じられます。「こっ、怖!こっちに来るな!追い込まれたら、やるっきゃない…」と恐怖と攻撃の間で葛藤している様子がうかがえます。3番は恐怖心から自分をなるべく小さく見せようと尾を身体に巻き付けています。耳も頭にくっつけるように平たく寝かしていますね。「緊張するな~。怖いから近づかないでよ」という気持ちの表れですね。一方、2番は身体や顔に緊張感がなく穏やかな表情です。尾も上がっており、「こんにちは~♪何かいいことある?」とフレンドリーに挨拶をしてくれているようです。 コロナ禍で増えた!? 動物たちの問題行動  新型コロナウイルスの感染拡大により、人々のライフスタイルが大きく様変わりしたなか、家族の行動パターンの変化は、愛犬・愛猫たちにも大きな影響を及ぼしました。コロナ禍で増えた動物たちの問題行動についてご紹介します。 ■分離不安 分離不安とは愛着を感じている相手と離れた際に起こるストレス行動で、以下のような不安行動を示します。 家族が外出の準備を始めた時や留守番時に… 落ち着かなくなる 過度に鳴く、吠える トイレ以外の場所で排泄する 破壊行動をする 食欲がなくなる 行ったり来たりする よだれをたらす 特に、性格が憶病なペットやシニアの動物(風船が小さいまたはしぼんでいる状態の動物)が分離不安を起こしやすいと言われています(シニア期になると小さな風船に持ち替える動物が多いです)。一般的には、犬に起こりますが、猫も例外ではありません。 ▷コロナ禍による影響 緊急事態宣言下では外出自粛やテレワークをするようになったため、家での楽しみや癒しを求めて長時間・近い距離で愛犬・愛猫と過ごす家族が増えました。コロナ流行前より濃密なコミュニケーションを楽しんだ犬や猫たちは、安心感や快適さを実感し、以前より強い愛着を家族に感じたことでしょう。しかし、宣言解除に伴い再び家族の外出機会が増えると、ライフスタイルの急激な変化に混乱した動物たちは、より強い不安を感じ上のような行動をとるようになったと考えられます。 ◎対策 愛犬・愛猫と一緒に過ごす時間には、できるだけベタベタせずに、物理的な距離をとるように心がけましょう。家事や仕事はあえて違う部屋で行い、離れる時間を定期的に持つことをおすすめします。但し、一緒に遊ぶ時間や散歩の時間は減らさないように気をつけてください。愛犬・愛猫が既に不安行動を呈している、仕事や学校の都合で外出機会が急増しそう、といった場合は行動診療科の獣医師に相談されることをおすすめします。 ■家族への攻撃行動 ご家族に対するペットの攻撃行動は、家族が行った何らかの対応に対し、不快情動が生じた場合に示されます。一般的には「怖い」「嫌なことをされたくない」「ものや食べ物を取られたくない」といった防御的な気持ちが引き金となりますが、ストレス耐性が低い状態、つまり心の風船が小さく、その風船がしぼんだ状態になっていると、簡単に高頻度に引き金が引かれてしまいます。 ▷コロナ禍による影響 愛犬・愛猫との交流時間の増加により、家族がペットの不快情動を引き起こすような対応をとってしまう機会もまた増加しています。普段、犬は家族のスケジュールに合わせて生活し、猫は家族の居場所と自身が安心できる大事な場所がバッティングしないよう、時間帯によって自身が通ったり使ったりする場所を変えるなどの工夫をしています。しかし、コロナ禍では、在宅ワークや時差出勤などにより家族の在宅時間や生活パターンが変わってしまったため、いつものリズムで生活できなくなった動物たちはストレスを感じたと思われます。ストレスは風船をしぼませてしまう原因となります。風船がしぼんだ動物は、それまでは平気だった家族の対応にも不快情動を生じやすくなるので、攻撃行動を起こしやすくなったのだと考えられます。 ◎対策 犬の場合:家族の生活リズムが変わった場合も、散歩・食事・遊び時間などの愛犬が楽しみにしているイベントは、できるだけ定期的に与えるように心がけてください。 猫の場合:今一度、猫の生活環境を見直してみましょう。寝床・食事の場所・水飲み場・トイレなどは、複数カ所に設置してください。人が集まる場所や通路になるところは猫が好まない場合があるので、愛猫が安らげる場所に居場所を作ってあげましょう。 深刻な攻撃行動が見られる場合は、迷わず行動診療科を受診してください! 激しいグルーミング 犬や猫はグルーミングに比較的長い時間を費やします。しかし、心理的にストレスとなる出来事に遭遇したりストレス耐性が弱まったりすると、身体を舐める行動が過度になり、脱毛や皮膚炎を引き起こす場合があります。グルーミング以外にも、心理的ストレスにより発生している可能性がある行動には次のようなものがあります。 尾を追いかけて回転する(犬・猫) 光を追う(犬・猫) フライバイト※(犬) 布を吸う、食べる(猫) ※ハエがいるかのように口をパクパクして捕まえようとする行動 ▷コロナ禍による影響 攻撃行動で説明したように、コロナ禍では動物たちが大きなストレスを抱え、風船がしぼみがちです。一方で、家族との交流が増えたことで心が満たされ、症状が緩和されたケースもあります。しかし、この場合も、家族が元の忙しい生活に戻る際には注意が必要です。 ◎対策 攻撃行動の対策を参考にしてください。皮膚炎や脱毛がある場合には、身体的な疾患との鑑別をするため、まずは獣医師による診療を受ける必要があります。身体的な疾患が無いと確認した後、行動診療科の診察をご案内します。   ※上記の問題行動はアフターコロナにありがちな問題行動をまとめたものです。特定のケースについて引用しているものではありません。 まとめ 私たちも動物たちも、未曾有の事態への対応に疲れ、心の風船がしぼんでしまいがちな時間が長く続きました。でも、そんな時だからこそ、お互いの存在が癒しとなり、絆が深まったとも言えます。この機会に、ぜひ愛犬・愛猫との関係を見直し、さらに良い関係を築いていただきたいと願っています。当院の行動診療科では、各ご家庭に最適な支援を行っておりますので、問題行動や日常生活でのどんな不安もお気軽にご相談ください。動物たちがストレスなく快適に過ごせるように注意深く観察しながら、その時々に合ったフォローをしてあげたいですね! 当院では犬のしつけ教室を開催しています。日頃から愛犬とのコミュニケーションにお悩みのご家族様、愛犬との絆をより深めたいご家族様には特におすすめです。 また、愛犬や愛猫の問題行動にお困りのご家族様向けに市川総合病院にて行動診療科を開設しております。受診をご希望の際は、かかりつけ病院の獣医師にお問い合わせください。手順を踏んで、行動診療科のご案内いたします。 ▶しつけ教室のご案内はこちら▶行動診療科のご案内はこちら

  • 知っておきたい 目の病気とケア

    おねだりでウルウルと見つめてきたり、興味の対象をジーッと追いかけたりするペットの大きな瞳は、とてもキュートですよね。そんな愛犬・愛猫の大切な瞳を守るため、目の病気やご自宅でできる正しいケアの方法をご紹介します。   目のしくみ 目の構造はカメラに例えられます。光はカメラのレンズ部分である角膜や水晶体を通り、フィルムである網膜へと届けられます。網膜に入ってきた光は電気信号に変換され、コードである視神経を通って脳へと伝えられます。 角膜と水晶体の間の前眼房という部分には眼房水という水が入っていて、この水の圧力により目の張りや大きさが保たれます。 犬・猫によく見られる眼科疾患 1. 白内障 水晶体の一部、もしくは全部が白く濁ってくる病気です。進行すると視力が低下し、失明に至ります。また合併症として、炎症や緑内障が起こる場合もあります。 【原因】●外傷●老化●中毒●遺伝●糖尿病●網膜疾患の合併症柴犬、トイ・プードル、アメリカン・コッカースパニエルなどは遺伝的にかかりやすく、若い犬にも見られます。 【症状】●黒目の白濁●眩しそうにする●目が見えない 【治療方法】病気の進行度合いより4段階に分類され、各段階で治療法が異なります。※本誌症例表入る白内障の手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて吸引し、人工の眼内レンズを挿入する方法が一般的です。手術を希望される場合は、専門病院をご紹介致します。 2. 緑内障 通常、眼房水は生産と排出を繰り返していますが、緑内障は眼房水の排出が悪いため眼圧が上昇し発生します。進行すると網膜や視神経が障害されて失明に至ります。 【原因】●遺伝による眼房水の流出路異常●ぶどう膜炎・水晶体の脱臼・外傷・腫瘍などの発生による眼房水の排出不良柴犬、アメリカン・コッカースパニエルなどに多く見られます。 【症状】●白目の充血●眼球の肥大●目が見えない●痛みによる元気消失 【治療方法】「内科的治療法」および「外科的治療法」がありますが、動物の状態や症状の程度、飼い主様の意向などにより治療方法が異なります。●内科的治療法…眼圧を下げるために内用薬や点眼薬を投与します。●外科的治療法…レーザー手術(※1)や緑内障バルブ手術(※2)などを用いて眼圧を下げます。※1:眼房水を抑えることを目的に行う手術※2:眼房水を排出することを目的に行う手術 ▶義眼手術を実施した例視覚を失っており回復が見込めない場合は、シリコンボールを挿入する義眼手術を行います。これにより、眼球拡張による角膜潰瘍になることを予防することができます。 3. 角膜潰瘍 角膜潰瘍は目に傷がついた状態のことです。炎症や細菌感染が合わさって起こると重症化します。3層(上皮・実質・内皮)から成る角膜のどの層にまで傷が生じているか、その傷の深さにより重症度と治療法が異なります。短頭種は目が出ているので、特に注意が必要です。 【原因】●外傷●異物による刺激●まぶたやまつ毛の異常●涙液の減少●感染症猫風邪にかかると目ヤニなどの症状を伴う結膜炎を発症することが多々あり、角膜潰瘍の原因にもなります。 【症状】●目ヤニ●目のショボつき●白目の充血●黒目の白濁 【治療方法】●傷が浅い場合には点眼治療が主体となります。●浅い傷でもなかなか治らない場合や傷が深い場合には外科手術が適用されます。●傷がさらに深くなり角膜に穴が開いた状態(角膜穿孔)になると眼球摘出をしなければいけないケースもあります。●角膜潰瘍の際には目をこすって悪化することがあるため、エリザベスカラーの着用をおすすめします。 4.結膜炎結膜(まぶたの内側と眼球の表面を覆う薄い粘膜)が炎症を起こす病気です。結膜は目を保護し、潤滑させる役割を持っていますが、炎症が生じると赤みや腫れ、目ヤニ、涙の増加などの症状が現れます。 【原因】●細菌、ウイルス、真菌等の感染●アレルギーや刺激物●外傷●乾燥(ドライアイ)●糖尿病、高血圧、自己免疫疾患など猫では特に、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスが原因となることが多いです。 【症状】●目の赤み、痒み、腫れ●目ヤニ、涙目●光(明るい場所)を嫌がる 【治療方法】原因により治療法が異なります。●感染性、アレルギー性の場合:点眼薬や軟膏、内服薬などを使用します。●刺激物や異物による場合:生理食塩水で目を洗浄したり、異物を除去した後に点眼薬を使用します。必要に応じて、目を保護するためのエリザベスカラーを使います。●全身性疾患による場合:原因となる基礎疾患の治療を行います。 5.網膜剥離(もうまくはくり) 眼球後面の内側に接している網膜という薄い膜が剥がれる疾患です。網膜は光を感じて視覚信号を脳に伝える重要な役割を担っているため、剥離が起こると視力低下や失明の原因となります。早急な診断と治療が重要となります。 【原因】●頭部への打撃や外傷●糖尿病、腎疾患、心疾患、甲状腺疾患などによる高血圧●細菌、ウイルスの感染●眼内や眼窩の腫瘍パグ、シー・ズー、トイ・プードルなど一部の犬種で、遺伝的に網膜剥離を起こしやすい場合があります。 【症状】●視力の急激な低下、失明●瞳孔の異常(光に対する反応が鈍くなる)●目の変色●眼球突出●目の痛みや不快感 【治療方法】●高血圧や炎症、感染症などの原因に応じた薬を使用して症状を緩和します。●硝子体手術(※1)やレーザー手術(※2)などを行う場合もあります。※1:網膜を元の位置に戻すために行われる手術※2:レーザーを用いて網膜を固定する方法●全身性疾患による場合:原因となる基礎疾患の治療を行います。 6.乾性角結膜炎(ドライアイ) 涙の分泌が不足するか、涙の質が悪くなって目が乾燥する疾患を指します。一般的に「ドライアイ」と呼ばれる状態です。涙液は目の健康を維持するために重要であり、目を潤すだけでなく、栄養を供給し、感染を防ぐ役割を果たします。ドライアイになるとこれらの機能が低下するため、さまざまな目の問題を引き起こす可能性があります。 【原因】●免疫介在性疾患(猫では稀)●先天性低形成●薬物の副作用●手術や外傷による涙腺の損傷●ウイルス感染による涙腺の損傷 犬:ヘルペスウイルスやジステンパーウイルスなど 猫:ヘルペスウイルスなど●老化●乾燥した環境●神経症状(瞬きする神経が障害された場合) 【症状】●涙の不足による目の乾燥、充血●目ヤニ●まぶたの炎症や腫れ●目の痒み、痛み、不快感●角膜の変色や濁り●視力の低下●第三眼瞼(瞬膜)の突出 【治療方法】●目の潤いを保つための人工涙液や、涙腺の炎症を軽減し涙の産生を増やす効果のある点眼薬を使用します。●ドライアイが原因で二次的な感染が起こった場合、抗生物質の点眼薬や内服薬を処方することがあります。●深刻な場合、涙腺の移植手術が検討されることがあります。 ドライアイを予防するには?(後半「ご自宅でできるケア」内の記事にリンク) 7.涙管閉塞 涙を目から鼻へ排出する涙管(涙道)が詰まる状態を指します。涙管閉塞があると、涙が目から適切に排出されず、目の周りに溢れ出ることになります。 【原因】●先天的異常(涙管の構造的な異常や形成不全)●細菌やウイルスの感染●外傷による涙管の損傷●涙管周囲の腫瘍による涙管の圧迫 【症状】●涙目(流涙症)●目ヤニ●目の周りの皮膚炎 【治療方法】●感染性の場合は、抗生物質の点眼薬や内服薬を処方します。●軽度の場合は、涙管に生理食塩水を注入して詰まりを解消します。●重度の場合、涙管の開放や新しい涙管の作成を目的とした手術を行うことがあります。 8.ブドウ膜炎 眼球の前方のブドウ膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に炎症が起こる疾患です。目の痛みや視力の低下を引き起こし、適切な治療が行われないと視力を失うこともあるので、早期発見と早期治療が重要となります。 【原因】●細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染猫の場合、猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)、トキソプラズマなど●自己免疫疾患:●外傷●眼内や眼周囲の腫瘍●糖尿病や高血圧などの全身性疾患 【症状】●白目部分の赤み:●目の痛み●涙目●視力の低下●明るい場所や光を嫌がる●瞳孔の縮小 【治療方法】●感染が原因の場合、抗生物質の点眼薬や内服薬を使用します。●炎症を抑えるために抗炎症薬(点眼薬、注射、内服薬)を使用します。●自己免疫疾患が原因の場合、免疫抑制剤を使用します。●腫瘍や他の構造的な問題が原因の場合、手術が必要になることがあります。 9.眼瞼内反症 まぶたが内側に巻き込まれてしまい、まつ毛やまぶたの皮膚が眼球に直接触れる状態で、「逆さまつ毛」と呼ばれることもあります。眼球に物理的な刺激を与え、痛みや炎症、さらには感染症や視力障害を引き起こすことがあります。 【原因】●先天性(遺伝的な要因)特に犬ではシー・ズー、パグ、ペキニーズ、ブルドッグ、ラブラドール・レトリーバーなどでよく見られます。●まぶたや顔の外傷●慢性的な眼瞼炎や結膜炎によるまぶたの構造の変化●加齢による皮膚や筋肉の弛緩 【症状】●目の赤み、痛み、痒み●涙目●目ヤニ●角膜潰瘍●視力の低下 【治療方法】●軽度の場合、抗炎症薬や人工涙液の点眼薬を使用して症状を緩和します。●一時的な対策として、逆さまつ毛を抜くことがあります。ただし、これは再発の可能性があります。●逆さまつ毛の毛根を電気で焼灼して再発を予防します。●重度の場合、まぶたの構造を修正してまつ毛が正常な方向に生えるようにする手術が必要となります。 10.瞬膜腺脱出(チェリーアイ) 第三眼瞼腺(瞬膜腺)が突出して見える状態を指します。第三眼瞼(瞬膜)が赤く腫れて眼球の一部に突き出し、まるでサクランボのように見えるため、「チェリーアイ」と呼ばれます。特に若い犬に多く見られ、猫では稀な疾患です。 【原因】●遺伝的要因:特に、ブルドッグ、ビーグル、コッカースパニエル、シー・ズー、ボストンテリアなどの犬種に好発するとされています。●瞬膜腺を眼球に固定する結合組織の弱さ 【症状】●目の内側(鼻側)に赤く腫れた塊がある●涙目●目ヤニ●目の違和感や痛み:●結膜炎 【治療法】主に外科的治療となります。●突出した瞬膜腺を元の位置に戻し、固定する手術を行います。これにより、再発を防ぐことができます。●手術前および手術後に、炎症や感染を抑えるための点眼薬を使用します。 こんな症状は見られませんか?愛犬・愛猫の状態を今すぐチェック!少しでもおかしいなと思われたら、お早めにご来院ください。 目が見えていない場合 散歩中に物にぶつかる 散歩で歩きたがらない 飼い主の足元にずっとついて歩く ボールを投げても遊ばない 階段につまずく、踏み外す 寝ていることが多くなった 噛みつくことが多くなった 目が痛い場合 目をショボつく 目を閉じる 涙の量が増える 目をこする 眼科ではどんな検査をするのでしょう? 当院で行っている眼科検査についてご紹介します。 シルマー涙液検査まぶたの縁に試験紙を挟み、涙の量を計ることにより、ドライアイを調べます。 眼圧検査眼房水の圧力を測定します。緑内障の発見に欠かせない検査です。※江東総合病院・市川総合病院では、点眼麻酔を必要としないタイプの眼圧計を導入しています。 スリットランプ検査眼に細いスリット光を当て、目の表面や内部の様子を調べます。 フルオレセイン染色検査角膜の表面に染色液を垂らすことで角膜の傷がないかを調べます。また同時に、涙が目から鼻に抜けるかもチェックします。 眼底検査眼底鏡や眼底カメラを用いて、目の奥の血管・網膜・視神経の状態を調べます。 超音波検査超音波を用いて、眼球内部を観察することで、眼球の形態的異常を確認します。 愛犬・愛猫の目の健康を守るためにご自宅でできるケア ▶顔周りに触られることに慣らす練習をしましょう! 眼科の検査では顔周りに触れるため、噛みつきなどの攻撃行動が激しいペットには検査を行えない場合があります。いざという時に備えて、日頃から顔周りに触られることに慣らす練習をしておくことが大切です。Step1:目・鼻・口の周りを触った後、おやつをあげて褒めます。Step2:Step1がスムーズにできるようになったら、手でまぶたを触って瞬きをさせたり、まぶたをめくったりして白目の状態を確認してみます。この際も、少し触ってはおやつをあげることを繰り返し、徐々に慣らしていきましょう。 ▶温め&まばたきマッサージのやり方 電子レンジで加温可能な市販のジェルや小豆の入ったアイパックを38度くらいに温め、約5分間まぶたの上に乗せます。  温めた後、まばたきマッサージを1セット(20~30回)実施します。まばたきマッサージの際は、上下まぶたのマイボーム腺がしっかり接するように、飼い主様の手で優しく目の開閉を行いましょう。 まつげの内側に整列している小さな点がマイボーム腺の開口部です。温めると油分の分泌が良くなります。★温めは1日1~2回、まばたきマッサージは1日3セットを目標に実施しましょう。継続的に実施することが望ましいので、無理せず少しずつ慣らしましょう。 ▶ドライアイを予防するには? 涙は、粘液・水成分・油成分が混ざり合っており、目の表面の潤い保持・栄養供給・汚れや病原体除去などの働きを担っています。ドライアイとは、涙の量が少なくなったり、涙の質が悪くなって目の表面が乾いたりしてしまう状態のこと。悪化すると角膜潰瘍や角膜炎を引き起こすこともあるので注意が必要です。ドライアイを予防するには、涙の分泌を良くし、質を高めることが有効です。また、生活環境のちょっとした改善でドライアイを予防したり症状を軽減したりすることができます。●加湿:室内の湿度を上げることで、目の乾燥を防ぐことができます。●風防止:風が直接当たらないようにするための工夫が必要です。例えば、車の窓を閉める、扇風機やエアコンの風が直接当たらないようにするなど。●栄養補助食品の利用:オメガ-3脂肪酸を含むサプリメントが涙の質の改善に役立つことがあります。 ▶涙やけの対策は? 目ヤニなどを放置すると目の周りが常に濡れ、涙の跡が赤黒く汚れることがあります。この状態は「涙やけ」と呼ばれ、放置していると目の病気に繋がる可能性もあるため、きちんと対処してあげる必要があります。 【対策】1. 濡らしたコットンなどでこまめに涙を拭きとりましょう。2. 目の周りの被毛をカットし、清潔に保ちましょう。3. 食物アレルギーが起因している場合もあるので、フードの切り替えも検討してみましょう。目の病気が原因で涙の量が増えていることもあるので、涙やけがひどい場合は一度受診してください。 ▶食物アレルギーが心配な場合は… 当院には犬と猫の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』の愛玩動物看護師が在籍しています。愛犬・愛猫の食事選び、与え方などについて、ご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛犬・愛猫の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。 まとめ 目の病気の症状は、充血や黒目の白濁などの目に見えるものから、気付きにくいものまでさまざまです。飼い主様が症状に気づいて来院した時には、治療が困難になるほど病状が進行してしまっているケースも多々あります。今回ご紹介したケアを日々意識して行うことは、眼科疾患の早期発見に大変有効ですので、ぜひご家庭で実践してみてください。また、「黒目が白濁しているのは糖尿病による白内障だった」「よくぶつかるのは神経疾患による視力低下が原因だった」など、目の症状が眼科疾患以外の病気によって引き起こされている場合も少なくありません。年に一度は健康診断を受診し、全身の健康状態を確認するようにしましょう! ▶年1回の健康診断には、ペットケアクラブがおすすめです!

  • ペットの防災 虎の巻 ―いざという時のために必要な備えと心構えを徹底解説

    世界一の災害大国といわれる日本。地震はもとより、近年は台風や集中豪雨の恐ろしさも身近なものとして実感するようになりました。災害はいつ発生するかわかりません。いざという時に混乱をなるべく回避し、動物が苦手な人ともトラブルなく過ごすためには、日頃からの備えや意識が大切です。ここでは飼い主様とペットが災害時にスムーズに行動できるための防災対策を解説します。この機会に、備蓄品や日頃のしつけ・避難計画を見直してみましょう。 【虎の巻 その一】事前準備編 ‟ペットのための防災用品“  ライフラインの寸断や緊急避難などに備え、必要な物資の備蓄をしましょう。避難所では、動物に対する備えは基本的に飼い主の責任になります。また、救援物資が届くまでには時間がかかります。少なくとも、5日分の用意はしておきましょう。 持ち出し品には優先順位をつけ、優先度が高いものはすぐに持ち出せるように保管しておきましょう。 重いものや大きなものは避難の妨げになるため、一旦避難した後、安全を確認してから持ち出すようにしましょう。 優先順位1 命や健康に関わるもの 療法食・薬ゆとりを持って備えておきましょう。担当医に、どのくらいの期間であれば薬や療法食がなくても大丈夫か確認しておきましょう。 フード・水(最低5日分)犬や猫が1日に必要とする飲み水は、体重1㎏につき50ml程度とされています。人間用とは別に用意しましょう。 リード・胴輪・予備の首輪避難所でキャリーバッグの扉を開けた際に脱走しないよう、猫もリードの着用が必要です。 トイレ用品ペットシーツや砂など、使い慣れたものを用意しておきましょう。汚物を入れるゴミ袋や消臭剤も必要です。 食器コンパクトになる折り畳み式の食器を、フード用・水用の2つ用意しておきましょう。 クレート・キャリーバッグ・ケージ避難所で重ねて置かれることを考慮すると、プラスチック製のしっかりとした作りのクレートが良いでしょう。日頃からペットが嫌がらずに入るよう訓練をしておくことが重要です。クレート・トレーニングの方法(犬) クレート・トレーニングの方法(猫)  優先順位2 飼い主やペットの情報 飼い主の連絡先飼い主の連絡先以外に、緊急の連絡先・ペットの預け先の情報も記載しておきましょう。 ペットの写真印刷物とともに携帯にも画像を保存しておきましょう。動物と一緒に写った写真があると、迷子時に飼い主を特定するのに役立ちます。 ワクチン接種歴・既往歴・検査結果・かかりつけ動物病院の情報ペットの健康状態を記載し、診療時や一時預かり時などに、第三者にペットの健康状態をスムーズに伝達できるようにしておきましょう。 当院ペットケアクラブ会員様にお渡しする「ペット健康手帳」には、これらの情報を記載するページがあります。日頃から記入し、災害時にはすぐに持ち出せるようにしておきましょう。▶ペットケアクラブのご案内はこちら 優先順位3 日用品 タオル・ブラシ ウエットタオルや清浄綿目や耳の掃除など多用途に利用可能です。 ビニール袋・新聞紙排泄物の処理など多用途に利用可能です。 お気に入りのおもちゃ使い慣れたものや、ペット自身の匂いが付いているものがあると、安心でき、避難所でのストレスを和らげることができます。 頭数分の洗濯ネット多頭飼育の場合、特に猫は一つのキャリーバッグに入れるとケンカする場合があります。1頭ずつ洗濯ネットに入れてからキャリーバッグに入れると、複数頭でも一度に連れ出すことができます。 ガムテープ・油性ペンケージの補修や動物情報の掲示物作成など、多用途に使用可能です。 マイクロチップの挿入もお忘れなく! はぐれてしまった時に備えて、迷子札の装着は必須です。過去の災害では、迷子の間に痩せて首輪が取れてしまった事例も起きているので、マイクロチップの挿入も必ずしておきましょう。 犬・猫へのマイクロチップの装着と登録が義務化されました 令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されています。6月1日以降にブリーダーやペットショップが取得し、販売した犬や猫には、すでにマイクロチップが装着されています。購入した飼い主の方は、国のシステムにおいて、所有者情報をご自身の情報へ変更登録する義務があります。一般のご家族様ですでに同居されている犬や猫、また保護犬・猫や譲渡などでお迎えされた場合などは、マイクロチップの装着は任意(努力義務)となります。ただし、装着した場合においては、国のシステムへの所有者情報の登録が義務となります。 マイクロチップ情報の登録の窓口 環境大臣指定登録機関 公益社団法人日本獣医師会登録サイト:犬と猫のマイクロチップ情報登録  世界に一つだけの番号が登録されている直径2㎜・全長12㎜程度の円筒状の電子標識器具です。背中側の首筋などに注入します。注入時の痛みはあまりなく、麻酔・鎮静の必要はありません。番号を保健所などに配備してあるリーダーで読み取り、データベースに登録された情報と照会することで飼い主を検索することができます。また万が一、ペットの所有権で揉めるような事態に陥った場合も、マイクロチップの登録内容によって、自身のペットだと証明することができます。 ◎引っ越しなどで住所や電話番号などが変わった際は、登録内容を更新し、データベースの情報は必ず最新にしておきましょう! 迷子になったワンちゃんが… マイクロチップのおかげで無事家族と再会できたケースをご紹介(2013年12月16日収容、同日返還のワンちゃんのできごとです) 12月半ばのことです。もうすぐ6歳になるラブラドール・レトリーバーの女の子が、庭でつながれているリードを擦り切って、外に逃げ出してしまいました。飼い主家族みんなで探していたところ、数百メートル離れた住宅街で、警察によって保護されました。このワンちゃんには、マイクロチップが埋め込まれていたので、動物愛護センターがマイクロチップ・リーダーで確認するとマイクロチップ番号が読み取れました。この番号を(公社)日本獣医師会が管理するデータベースで照合すると、飼い主名・住所等が判明し無事、飼い主のもとに帰ることができました。 出典元:動物ID普及推進会議(AIPO)ポスターより抜粋 公益社団法人日本獣医師会動物ID普及推進会議(AIPO)AIPOとは、Animal ID Promotion Organization (動物ID普及推進会議)の略称で、マイクロチップによる犬、猫などの動物個体識別の普及推進を行っている組織です。(環境省推進システムとは別になります。) メリット・AIPOのデータベースは臨床獣医師及び動物愛護関係行政機関などによる情報検索が可能です。  環境省データベース(法定登録)は行政機関のみが情報検索可能。デメリット・新規登録・変更は国のシステムとは別になり、有料です。・オンライン申請のみ 【虎の巻 その二】しつけ・トレーニング編 ‟犬も猫もクレート・トレーニングが必要!“  過去の震災では、ペットを連れて避難したかったのにペットが家の中で隠れたり逃げ回ったりして、一緒の避難を断念したケースが多くありました。このような事態を避けるため、「クレート=何かあったら逃げ込む安全な場所」とペットに認識させ、いざという時に捕まえやすくしておきましょう。 クレート・トレーニング ~犬の場合~ 愛犬が抵抗感なくクレートに入れるよう、「クレート=良い所」と教えてあげましょう! 用意するもの プラスチック製の頑丈なクレート。成犬の場合、中で犬が方向転換でき、自然な形で立ったり横たわったりできる大きさのクレートを選びましょう。 タオル・毛布・冷感マットなど、季節に応じた敷物 STEP1 クレートに慣らす ❶ クレート内を快適にする中にタオルなどを敷いて、安心して休める場所にします。犬が入ったはずみで閉まらないよう、扉を固定しておきましょう。 ❷ クレートの中で良い経験をさせるクレートの中で毎日のごはんや知育玩具(おやつを詰めたコングなど)を与え、「クレートの中にいると良いことがある」ことを経験させましょう。自ら進んで入れるようになってきたら③に進みます。 ❸ クレートの中にいることを褒める犬がクレートの中に自ら進んで入ったら、中にいる犬に入口からフードやおやつを与え続け、中に留まれるようにしていきましょう。褒め言葉をかけることも忘れずに! STEP2 扉の開閉に慣らす ❹ 扉をそっと閉める犬がごはんや知育玩具に夢中になっている間に扉を閉めます。閉める時間は、数秒間から始め、徐々に長くしていきましょう。すぐに出たがるようならSTEP②に戻り、再度時間をかけてクレートに慣らしましょう。出たがる犬を押し戻すような行動はNG ですよ。クレートが嫌いになってしまいます! ❺ 静かにしている時に扉を開ける「吠えたら出してくれた」と犬が誤解しないように、静かにしている時に出られることを繰り返し教えましょう。 ❻ 合図で行動できたらごほうびを与える犬がクレートに入る直前に「ハウス」と声をかけ、「ハウス=クレートに入る合図」として教えていきます。犬が合図の後にクレートに入ったら、すぐにフードやおやつなどのごほうびをあげ、よく褒めてあげましょう! ここでは一般的な方法をご紹介しましたが、犬の性格によって効果的な方法はさまざまです。トレーニングがうまくいかない場合は、犬に苦手意識が芽生える前に、早めにスタッフにご相談ください。 当院では犬のしつけ教室を開催しています。日頃から愛犬とのコミュニケーションにお悩みの飼い主様、愛犬との絆をより深めたい飼い主様には特におすすめです。▶しつけ教室のご案内はこちら クレート・トレーニング ~猫の場合~ 猫が自分でクレートに出入りできる環境を整えてあげましょう! 用意するもの 上部が開口する、プラスチック製の頑丈なクレート 猫が安心する匂い(猫自身や家族の匂い)が付いた毛布やベッド クレートをすっぽり覆えるサイズのバスタオル ❶ クレート内を快適にするペットシーツを底にテープで固定し、その上に猫が安心する匂いが付いた毛布やベッドを置きます。 ❷ 扉を開けておく猫が好きな時に自由に出入りできるよう、扉は開け放しておきます。猫が入ったはずみでガシャンと閉まらないよう、扉を固定しておきましょう。 ❸ 最適な置き場所を探すクレートを、猫が普段よく居る場所や人が通らない静かな場所に置きっ放しにし、自ら入るのを待ちます。 ❹ 中でごごはんやおやつを与える毎日のごはんやおやつをクレートの中で与え、クレートへの警戒心を和らげます。慣れてきたら、食事の間は扉を閉めてみましょう。 ❺ 慣れたら短距離の移動から猫が好んで出入りするようになったら、短距離の移動に挑戦です。移動時には必ずクレート全体をバスタオルで覆い、猫にとってストレスとなる視覚的な刺激を遮断しましょう。 ◎クレート内をさらに寛げる場所にするために…猫のストレスを緩和するフェロモン剤「フェリウェイ」を、クレート内や中に入れる毛布などにスプレーしてみましょう。※スプレー後3 0分は猫を近づけないようにしてください。 苅谷動物病院グループの全ての病院では、猫待合、診察室、猫ケージ等院内でも使用している場所があります。また、病院で販売もしていますのでご興味ある方はスタッフまでお声がけください。 胴輪を付ける練習もしておきましょう 避難所では脱走防止のため猫も首輪とリードを付けることが推奨されていますが、パニックに陥った猫が全力疾走で逃げた場合、リードや首輪が周囲のものに引っかかり、首に強い衝撃が加わったり、首輪が抜けてしまったりする恐れがあります。このような事態を避けるため、当院では胴輪にリードを付けることをおすすめしています。ただし、はじめから胴輪を受け入れられる猫は稀なので、日頃から着用する練習をしておく必要があるでしょう。 練習のポイント ❶胴輪選び洋服と一体化しているようなデザインの胴輪が望ましいです。サイズがしっかり合ったものを選びましょう。 ❷はじめは背中に乗せることからおやつをあげながら、胴輪を猫の背中に乗せてみましょう。受け入れられるようであれば、胴輪にゆっくり両前肢を通してみましょう。 ❸徐々に装着時間を延ばす猫がパニックになったり嫌がったりするようなら無理強いは禁物です。一日数分から始めて、気長に練習を続けましょう。着用した状態でリラックスできる(排泄や食事ができる)ようになったら、リードを付ける練習も行ってみましょう。 焦らず気長に。猫のペースに合わせてやってみてくださいね! 【虎の巻 その三】避難シミュレーション編 ‟避難場所・避難経路の確認を!“ 緊急的に避難する施設や場所である「指定緊急避難場所」は、災害の種類(地震・洪水・津波など)によって異なる場所が指定されている場合があります。住んでいる自治体の防災ガイドラインをよく読み、それぞれの事態に応じた最寄りの避難場所を確認しておきましょう。 【現在の自治体情報の確認が必要】 江東区・江戸川区・足立区・市川市の見解は… ▶全市区共通 管轄内すべての避難所で、飼い主とペットが別空間で過ごす「同行避難」を認めている。 ペットの居場所は各避難所の状況により異なる(昇降口・室内外・テント内など)が、原則として人と同じ居室への入室は不可である。 トイレ掃除や給餌時に逃げ出さないよう、犬も猫もリードを付けること。   ▶江東区 台風や水害など事前に被害が予測される場合は、予め各自でペットの避難場所を確保しておくことが原則。 苅谷動物病院の待合室のモニターでは江東区保健所提供の【備えよう!ペットの防災】を配信しています。また江東区公式チャンネルでも動画配信しています。 知っておきたい!「同行避難」と「同伴避難」の違い 2019年、関東を襲った強烈な台風では河川が氾濫し、水害からの避難を余儀なくされた方が多くいらっしゃいました。そんな状況の中で話題となったのが、“ペットと一緒に避難することへの是非”でした。 そもそも「同行避難」とは、災害の発生時にペットを連れて指定の緊急避難場所等まで避難することを指します。避難所等において飼い主とペットが同室(または同施設)で一緒に暮らすことを指す「同伴避難」とは異なります。 環境省をはじめ多くの自治体では「同行避難」を推奨していますが、「同伴避難」を認めている避難所は稀です。また、「同行避難」を受け入れている避難所でも、キャリーバッグの置き場所などの受け入れルールは決められています。動物が苦手な方やアレルギーの人もいるので、飼い主は必ずルールに従い、ペットの衛生面・健康管理に配慮する必要があります。   ペット防災情報 問い合わせ先(江東区・江戸川区・足立区・市川市) 災害時には、電話・インターネット回線がつながらない恐れがあります。避難場所でのペットとの過ごし方など、疑問や質問は平時に確認しておきましょう。 江東区役所 防災課 防災計画係 防災センター☎03-3647-9584▶江東区役所ホームページ「ペットの防災」 江戸川区役所 江戸川保健所 生活衛生課 動物管理係☎03-3658-3177▶江戸川区役所ホームページ「ペットの災害対策」 足立区役所 危機管理部 総合防災対策室 災害対策課☎03-3880-5836▶足立区役所ホームページ「災害時のペットとの避難について」 市川市役所 環境部 自然環境課 動物愛護グループ☎047-712-6309▶市川市役所ホームページ「災害時におけるペット対策」 まとめ 災害はいつ身近で起こるかわかりません。いざという非常時に、少しでもペットにつらい思いをさせないために、日頃から準備しておくことが非常に大切です。ここで紹介した要点を参考に、ぜひ今一度身の回りの状況をチェックしてみてください。物理的な備えだけでなく、ペットとどれだけコミュニケーションがとれるかも重要となります。家族以外の人が苦手、人に触られるのを好まない、恐がりなどの性格のペットの場合でも、少しずつ練習することで改善することも多いです。当院には動物行動学を学んだ獣医師や犬のしつけ教室を担当する動物看護師、専門インストラクターが在籍しておりますので、そのような点でお悩みがありましたらいつでもご相談ください。

  • 猫にとって良い食事とは?与えてはいけないものも!病気との関係や誤食の危険性まで徹底解説

    猫にはどんな食事が良い? 猫の食事については、個体の状態や生活ステージに応じて適切に対応することが大切です。成長期の子猫には骨や筋肉の発育に必要な栄養が求められ、成猫や高齢猫にとっては適切な体重管理や関節の健康維持が重要ですので、栄養バランスを考慮した食事が必要です。また、ケガや病気によって栄養ニーズが変化することもあります。ケガをした場合は治癒を促進するためにタンパク質やビタミンCが重要ですし、病気によって食欲が低下した場合は栄養補助食品や特別な食事が必要になることもあります。愛猫の状態を把握し、適切な栄養プランを立てる上で、一緒に暮らしているご家族の観察とかかりつけの病院での定期的な健康診断は、欠かせません。食事は日々の積み重ねであり、健康維持において重要な役割を果たします。猫の生活ステージや健康状態に合わせて食事を柔軟に調整することで、愛猫に健康で幸せな生活を送ってもらうことができます。 猫は肉食性。適切な食事の与え方 猫は肉食動物であり、肉から得られるタンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルが必要です。猫の健康を維持し長生きしてもらうためには、以下の栄養素がバランスよく含まれた食事を与えることが必要です。 タンパク質猫には良質な動物性タンパク質を含む食事が推奨されます。肉や魚から得られるアミノ酸が猫にとって重要であり、筋肉、皮膚、毛並み、酵素、ホルモンなどの構築や体の修復に必要です。 アミノ酸(タウリン)タウリンは猫の健康に非常に重要な必須アミノ酸です。タウリンは心臓の健康、視覚機能、生殖機能に重要です。猫は体内で充分なタウリンを合成できないため、食事から摂取する必要があります。肉や魚に豊富に含まれています。 脂肪と必須脂肪酸脂肪はエネルギー源です。脂溶性ビタミンの吸収を助け、細胞膜の構成要素としても重要です。適切な脂肪摂取量は猫の皮膚や被毛の健康維持にも関係します。 ビタミン・ビタミンA: 視覚、免疫機能、皮膚の健康に重要です。特に猫は植物からビタミンAを合成できないため、動物性食品から摂取する必要があります。・ビタミンD: 骨の健康を維持するために重要です。日光による合成が難しいため、食事からの摂取が必要です。・ビタミンE: 抗酸化作用があり、細胞の健康を保ちます。・ビタミンK:血液凝固作用、骨代謝や細胞増殖に関与します。・ビタミンB群: 代謝、エネルギー生成、神経機能に関与します。 ミネラルカルシウムとリン: 骨と歯の健康に重要です。これらのバランスが重要で、リンの過剰摂取は腎臓に負担をかけ、カルシウムの過剰摂取や不足は尿路結石や骨の異常を引き起こすことがあります。マグネシウム: 神経と筋肉の機能、心臓の健康に重要です。ただし、過剰摂取は尿路結石のリスクを増加させるため注意が必要です。カリウム:過剰なナトリウムの排泄、神経刺激の伝達、筋肉や心臓の働きの調整などの役割を果たします。鉄: 血液の健康を保つために重要です。亜鉛: 免疫機能、皮膚と毛の健康に重要です。 水分猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。例えば、4キログラムの成猫であれば、1日に約200mlの水を摂取する必要があります。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意して日常的に水の入れ替えを行い、清潔なボウルを使用してください。特にドライフードを主食としている場合は、水分補給に注意する必要があります。ドライフード1食につき、同等の量の水を提供することが推奨されます。シニア期の猫にはウエットフードを与える、ドライフードに水を加える等の工夫をして水分摂取を促進しましょう。ミネラルウォーターは尿結石ができる原因となるので与えてはいけません。 猫にとって適切な栄養バランスを提供するためには、獣医師に相談して栄養バランスの取れた食事プランを立てることが重要です。また、猫の年齢、体重、活動レベルなどに応じて食事を調整することも重要です。 猫の食事に味付けは不要 猫の食事に調味料や味付けを加えることは、一般的にはおすすめしません。多くの調味料や味付けには、猫にとって有害な成分が含まれている可能性があります。例えば、塩分や砂糖、人工甘味料、香辛料などは、猫の健康に悪影響を与えることがあります。 塩高塩分の食事は、猫の健康に悪影響を与える可能性があります。猫に与える食事に余分な塩を加えることは、高血圧や脱水、腎臓疾患などのリスクを高める可能性があります。 砂糖砂糖を含む食品は、猫の健康に悪影響を与える可能性があります。過剰な砂糖摂取は肥満や糖尿病などの健康問題を引き起こす可能性があります。 香辛料一部の香辛料は、猫にとって消化器官に刺激を与えたり、アレルギー反応を引き起こしたりする可能性があります。また、辛い食品は消化器官に負担をかけることがあります。 添加物人間の食品に含まれる添加物(例: オニオンパウダーやガーリックパウダーなどタマネギやにんにくは猫にとって有害)や人工着色料、保存料などは、猫にとって消化器官に負担をかける可能性があります。 猫の食事には、適切な栄養バランスが含まれている市販のキャットフードや、獣医師がすすめる特定の食事を選択することが重要です。もし自家製の食事を与える場合は、安全な食材で調理し、肉や魚からタンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラル、タウリンなどを取り入れ栄養バランスの確保に努めましょう。また人間の食事に使われるような調味料や味付けは避けるべきです。 キャットフードにおける総合栄養食・一般食・栄養補完食の違い 総合栄養食と表示されているものは、そのフードが栄養学的に完全な製品であることを示します。一般食は、人の食事に例えると「おかず」と理解してください。栄養補完食とは特定の栄養素のみを満たす製品のことです。猫の主食とはならず、必要な栄養素の一部を補充する目的で設計されています。つまり、一般食や栄養補完食のみを食べていると栄養バランスは偏り、さまざまな病気を引き起こすかもしれません。購入する時にはフードのパッケージの表示を必ず確認して選びましょう。また、病院で処方する療法食は特定の健康問題や疾患を持つ猫のために開発されたフードです。獣医師の指導や処方が必要な特定の栄養素の制限や増加が施されている食事です。飼い主の判断で与えることはしないでください。 食事と病気の関係 猫が特定の病気にかかる原因はさまざまですが、食事もその一因となることがあります。以下に、食事が猫の健康に影響を与える可能性のあるいくつかの病気の原因を挙げてみます。 タウリン欠乏症タウリンは猫にとって必須のアミノ酸であり、不足すると視力の低下や心臓病などの重篤な問題が発生する可能性があります。 栄養失調栄養バランスの悪い食事は、栄養不足や免疫機能の低下などを引き起こす原因となります。 肥満カロリー過多な食事は肥満の原因となります。肥満は糖尿病や関節疾患、心臓病などの病気のリスクを高める可能性があります。 糖尿病猫は肉食動物であり、炭水化物の消化が得意ではありません。炭水化物の多い食事は血糖値の急激な上昇を引き起こし、インスリンの需要を増大させます。これが長期間続くと、インスリン抵抗性が発生しやすくなり、糖尿病のリスクが高まります。 腎臓病猫は腎臓病にかかりやすい動物です。リンやタンパク質の含有量が多い食事は腎臓に負担をかけ、腎機能を低下させることがあります。また、猫は本来砂漠地帯に住んでいた動物で、水分を多く摂取しない習性があります。水分が不足すると尿が濃くなり、尿路結石や腎臓の問題を引き起こす原因となるため、水分摂取量には注意しなければなりません。 尿路結石水分の摂取不足やミネラルバランスの欠如によって、猫は尿路結石症を発症するリスクが高まります。カルシウム、マグネシウム、などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物(じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど)の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿中に結石ができやすくなります。結石は尿路の詰まりや炎症、痛みや排尿困難を引き起こす可能性があります。 皮膚疾患不充分な栄養バランスは、皮膚および被毛の健康に影響を与える可能性があります。皮膚の乾燥、かゆみ、脱毛などの問題が発生する可能性があります。 これらの病気の原因には他にもさまざまな要因が関与しますが、食事がその一部を占めることがあります。猫の健康を維持し、病気のリスクを減らすために適切な食事を与えることが重要です。 与えてはダメ!猫にとって危険な食べもの 猫が食べると危険な食べものには、以下のようなものがあります。 チョコレート・ココア(カカオ類)チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという成分は、猫にとって有毒です。摂取すると、神経系や心臓に影響を及ぼし、中毒症状を引き起こす可能性があります。特に、ダークチョコレートやビターチョコレートにはテオブロミンが多く含まれています。 タマネギ・ニンニク・ネギ類タマネギやニンニク等のネギ類に含まれる硫酸化合物は、猫の赤血球を破壊する可能性があります。長期間にわたる摂取や大量摂取は、貧血を引き起こす恐れがあります。野菜スープやシチューなど調理されたものや調味料として使用されたものでも注意が必要です。 カフェインカフェインは猫にとって毒性があります。コーヒーや紅茶などのカフェインが含まれる飲み物や、カフェインが含まれる食品を与えてはいけません。 アルコールアルコールは猫にとって非常に有害です。少量でもアルコール中毒を引き起こす可能性があります。 乳製品多くの猫は乳糖を消化する能力がありません。そのため、牛乳や他の乳製品を与えると消化器系の問題を引き起こすことがあります。 生の甲殻類や貝類エビ、カニ、ホタテなどの甲殻類、および貝類の刺身にはビタミンB1(チアミン)を破壊するチアミナーゼが含まれているため、与えるべきではありません。チアミナーゼは熱に弱いため加熱すれば大丈夫ですが、いずれも消化があまり良くないので大量に与えることは避けましょう。また、さきいかやスルメは、食べると胃の水分を吸収して膨張するため胃腸障害の原因となります。 アボカドアボカドには、猫にとって有毒な成分であるパーシンが含まれています。消化器系や心臓に影響を与える可能性があります。 レーズン・ブドウレーズンやブドウには、原因不明の腎臓障害を引き起こす可能性のある成分が含まれています。レーズンを含むお菓子やパンなどの加工食品も注意が必要です。 キシリトールを含む食品キシリトールは人間にとっては低カロリーの甘味料ですが、猫にとっては有毒です。キシリトールを摂取すると、急激なインスリンの分泌が起こり、低血糖を引き起こす可能性があります。さらに、高用量では肝障害を引き起こすことがあります。キシリトールはガムやキャンディ、口腔ケア製品などに含まれていることが多いです。 これらの食材や物質は、猫の健康に悪影響を与える可能性があり、最悪の場合は死に至るおそれもあるため、絶対に与えないようにしましょう。猫がこれらの食材を誤って摂取した場合は、速やかに獣医師に連絡し、適切な処置を行う必要があります。 猫草は与えたほうが良い? 猫草(ねこくさ)とは、主に猫が食べるために提供される草のことを指します。一般的に猫草として使用されるのは、次のような種類の草です。 小麦草(ウィートグラス): 小麦の若い芽で、猫草として非常にポピュラーです。 燕麦(オーツ): 燕麦の若い芽も猫草として使用されます。 ライグラス: ライ麦の若い芽も猫草として提供されることがあります。 大麦(バーレーグラス): 大麦の若い芽も猫草として人気があります。 猫草はペットショップやホームセンターで種や苗の状態で販売されていることが多いです。自宅で育てることも簡単で、室内の窓辺などで日光を浴びさせながら水を適度に与えると良いです。 猫草は必ずしも必要ではありませんが、多くの猫が好んで食べることがあり、いくつかの利点があります。猫草の主な利点は以下の通りです。 消化促進: 猫草には食物繊維が含まれており、消化を助けることがあります。 毛玉対策: 猫は毛づくろいをする際に毛を飲み込みますが、猫草を食べることで毛玉を吐き出しやすくなることがあります。 栄養補給: 猫草にはビタミンやミネラルが含まれており、猫の健康に役立つことがあります。 ストレス解消: 猫草を食べることが一部の猫にとってストレス解消や遊びの一環となることがあります。 ただし、猫草を食べない猫も多く、その場合特に問題はありません。また、猫草を過剰に食べると逆に胃腸に負担をかけることもあるので、適量を提供することが大切です。 異物の誤食に注意(異物誤飲・異物誤嚥) 『異物誤飲』とは食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。『異物誤食』『異物誤嚥』と呼ぶこともあります。猫ではおもちゃや紐、ビニール製品などが多く、好奇心と食欲からか若い猫により多く見られますが、どの年齢でも起こり得ます。症状として最も多く見られるのは嘔吐です。他に、食欲不振、元気消失、よだれ、下痢、黒色便などがあります。薬を誤飲した場合は、薬品ごとに異なる中毒症状を引き起こします。特によだれがひどい場合、食べたものをすぐに吐き出す場合、嘔吐物が緑色であったり糞便臭がしたりする場合には注意が必要です。動物の吐く様子は診断の助けになりますから、必ず『どんなものを、どんな時に、どれくらい』吐いたのかを獣医師に伝えて下さい。嘔吐などの症状が出ている場合、まず異物が原因で起きているのかどうかの診断が重要です。入念な触診の後、X線検査、バリウム検査、超音波検査等、各種画像検査を実施します。石や金属はX線で明らかに映りますが、木・布・プラスチック・ゴムはX線には映りにくいため、超音波検査が必要な場合があります。異物が腸に詰まると、腸の中身が通過できなくなり腸閉塞という命にかかわる危険な状態になります。頻回・多量に嘔吐を繰り返し、ぐったりして急速に体調が悪化することが特徴です。時間が経つと腸の閉塞している部分の血液の巡りが悪くなり、最悪の場合、穴が開いてしまうこともあるため緊急手術が必要となります。いずれの場合も早期に診断されれば予後は良好ですが、全身状態が悪化している場合は検査・診断を急がなければなりません。人間が気にかけないようなものでも、猫にとっては興味の対象になることがあります。食事の後の不始末や、不適切なおやつのあげ方によって誤飲を引き起こさないよう、ご家族の方は充分ご注意下さい。 猫が誤食すると危険なもの10選 おもちゃ類小さなおもちゃや紐の付いたおもちゃなど、遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまう可能性のあるものには注意が必要です。特にうさぎなどの獣毛や鳥の羽が使われているものは本能的に刺激され夢中になりやすいので、要注意です。 家庭内の小物類本来猫のおもちゃではなくても猫の興味をひくような形状のもの(人間の子供用のおもちゃ、紐、リボン、輪ゴム、家具の部品、ボタン、画びょう、糸の付いた縫い針など)も、じゃれているうちに口にしてしまうおそれがあります。 毛布や衣類などの布ウールサッキング(毛布や衣類などの柔らかい素材を吸ったり、噛んだりする行動)を日常的にする猫の場合は、布類の誤食にも気を付けてください。布製品は消化器系で充分に分解されず、消化管に詰まるおそれがあります。 軟らかいプラスチック製品・ゴム製品キッチン用品やサンダル、ジョイントマットなど、噛んで遊んでいるうちに欠片を飲み込んでしまうことがあります。これらは消化器系で十分に消化されず、消化管に詰まったり穿孔したりするおそれがあり、内出血や腹膜炎を引き起こすことがあります。 ビニール袋やビニール製品ビニールは消化されないため、体内に取り込まれると腸閉塞、消化管の損傷、有害な化学物質による中毒(ビニールによる中毒は誤食程度の量であれば起こりにくいと思われますが、保管と注意は必要)等の問題を引き起こす可能性があります。ビニール袋やビニール製品に興味を示したり噛むことを好んだりする場合、猫が届かない場所に保管することが重要です。特に食べ物の包装袋などは注意が必要です。 トイレ砂好奇心や暇つぶし、またストレスや欲求不満などが原因でトイレ用の砂を口にしてしまうことがあります。砂の種類によっては唾液や胃液などの水分により猫の体内で膨張し、消化管に悪影響を及ぼすおそれがあります。違うタイプの砂に替える、トイレを人間の目の届くところに設置するなどの対策が必要です。 人間の食べ残し魚の骨は比較的柔らかいですが、口や食道、消化管に刺さる可能性があります。鶏の骨は調理されると脆くなり、鋭い破片になることがあります。これらの鋭利な破片が消化管に詰まると、腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす可能性があり、緊急の状態となることがあります。また、焼き鳥の串、パッケージなど、においにつられてゴミ箱から出して口にしてしまう場合もあります。ゴミ箱は猫が開けられないようにしっかりと蓋をしましょう。 人間の薬人間の薬には猫にとって有害な成分が含まれている場合があり、薬物中毒の症状が現れる可能性があります。猫の届かない場所に保管してください。 家庭で使われる化学物質家庭で使われる多くの化学物質は猫にとって有害です。例えば、清掃剤や殺虫剤、肥料などは誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。 植物一部の植物は触れる、噛む、または食べることで、猫に有害な影響を与える場合があります。例えば、チューリップ、スイセン、スズラン、アザミ、ポインセチア、ユリ、ツツジ、アイビー、アジサイなどは毒素を含んでいるため、中毒症状を引き起こすことがあります。庭や家の中にこれらの植物がないか確認し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。 猫が誤食しないようにするためには、家の中を安全に保つことが重要です。猫は上下運動ができるため行動範囲が広く、前足を器用に使って保管場所の扉などを開ける場合もあります。有害なものは猫の届かない場所に保管するようにしてください。猫が何を食べてしまったか不明な場合や、誤食が疑われる症状が現れた場合にはすぐに獣医師に相談することが重要です。食べた異物の残骸が残っている場合にはそれを持って動物病院へ行くことで、診断の助けになることもあります。 まとめ 以上、猫の食事と食生活において注意するべきことをお伝えしました。日々の食事は、愛猫の生涯の健康と幸福に直結する重要な要素です。正しい知識を持ち、適切な食事を提供することで、愛猫の心身の健康を維持し、より良い生活を送ってもらうことができます。当院には猫の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』の愛玩動物看護師が在籍しています。愛猫の食事選び、与え方などにつきご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛猫の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。

  • 猫の尿路疾患

    猫の下部尿路疾患とは?おしっこが出ないと命の危険も!原因、治療法から予防のストレス対策まで徹底解説 猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease、FLUTD)とは、膀胱炎、尿石症、尿道閉塞など猫の膀胱と尿道に起こる疾患の総称です。症状は主に、頻尿(排尿行為の増加)、排尿困難(排尿に時間がかかる)、血尿などが見られます。さらに進行すると、尿量の減少、元気・食欲の低下、嘔吐、脱水などの症状が現れ、放置すると命にかかわる危険性も。以下に、病院で多く診断する下部尿路疾患をご説明します。普段の食事、生活環境からのストレスが原因となっている場合もありますので、予防策についても詳しく見ていきましょう。 猫の下部尿路疾患の代表例 その1『尿路結石症』 人間と同様に、猫は尿路に石を作ってしまうことがあり、この疾患を『尿路結石症』といいます。膀胱内にできた結石(膀胱結石)が尿道に流れ、途中で尿道を塞いでしまうことを『尿道閉塞』といいます。尿路結石症は、いずれも命に関わる症状を引き起こしたり、手術や入院が必要になったりするような重大な疾患です。それぞれの疾患について、また、結石ができるしくみについて解説します。 尿道閉塞 尿道閉塞は放っておくと急性腎障害そして尿に排出されるはずの老廃物が血液中に蓄積されてしまう尿毒症が起こり、命に関わる危険な状態になります。以下のような症状が見られたら、直ちに動物病院に相談しましょう。【症状】尿意を感じても結石が詰まっていることで尿道から尿が出せないため、トイレに頻繁に行く、トイレで長い時間排尿姿勢をとる、といった症状が見られます。特にオスは尿道が細く結石が詰まりやすいため、注意が必要です。結石が詰まった尿道には痛みが生じるため、急に鳴き声を上げる、唸る、震える、伏せた姿勢のままになるなど、さまざまな様子の変化が見られることもあります。また、左右の腎臓の中に尿が溜まりすぎることで、重度の腎臓の障害が生じてしまいます。膀胱内に尿が溜まりすぎて膀胱が破裂し、尿がお腹の中に漏れてしまうこともあります。いずれも、ぐったりとしてしまう、吐いてしまうなど、著しい体調の悪化が見られます。【診断】尿が出しづらいという症状自体は、膀胱炎など別の病気でも見られます。身体検査、尿検査、X線検査や超音波検査によって膀胱や尿の状態を評価し、結石の有無を確認します。閉塞が疑われる場合には血液検査を行い、腎臓の状態を確認します。【治療】尿道カテーテルという細い管を尿道に挿入し、詰まった結石を膀胱の中に押し戻します。これで尿道内の結石は除去され、尿は開通した尿道を流れることができるので腎臓の負担が取り除かれます。腎臓が既に障害を受けている場合などは、数日入院治療を行いカテーテル経由で排尿させます。カテーテルを外しても問題なく排尿できれば、再発予防治療に進みます。膀胱に押し戻した結石が再度詰まる危険があるようなものであれば、手術による摘出を行います。 膀胱結石 【症状】頻尿、血尿などの尿の異常が見られることがあります。一方で、全く症状がなく過ごし、巨大な結石が健康診断で偶然見つかることもあります。【診断】X線検査や超音波検査によって膀胱の状態や結石の有無を確認することで診断します。また、尿検査を行い、尿の性状から結石の原因物質を推測します。【治療】結石が膀胱の中にとどまっていたとしても、今後その結石が尿道閉塞を引き起こすリスクがあります。また、慢性的な刺激が膀胱に加わって膀胱炎が生じたり、不快感の原因になったりすることがあります。尿路結石症用の療法食に食事を切り替えたり、細菌性膀胱炎がある場合はその治療を行ったりすることで結石が溶ける場合もありますが、多くは膀胱を切開して結石を取り除くような手術が実施されます。 結石はどのように作られる?どうすれば予防できる? 猫の尿路結石の多くは「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」か「シュウ酸カルシウム結石」という種類で、尿中のミネラル(マグネシウム、カルシウムなど)を主体とした結晶と蛋白質によって形成されます。なぜ、尿の中にこれらの結石が作られてしまうのでしょうか。健康な猫でも、尿の中には結石の原材料がバラバラになって存在しています。しかし、「①材料を溶かす液体(=尿の量)が少ない」または「②尿の中に存在する原材料が多すぎる」と、これらの原材料どうしは結合し結石になってしまいます。逆にいえば、 「❶水分摂取量を増やして尿の量を増やす」 「➋尿の中に存在する結石の材料を減らす」ことができれば、結石が作られるのを防ぐことができます。以下は、水分摂取量を増やす方法と結石形成の元となる材料を減らす方法や注意点です。 ポイント1.水分摂取量を増やす 食事と一緒に水分を摂れるようにするドライフードではなくウエットフードを選択したり、食事の風味が変わらない程度に水を足してみたりすると良いでしょう。 適切な体重を保ち、適度な運動を持続的に行う太り気味の場合は運動量も不足しがちになります。運動量が減ると飲水量も減ってしますので、注意しましょう。 また、寒い季節は運動量が低下しやすく、尿路結石が原因で受診する猫が増える傾向がありますので、意識して運動ができるようにしましょう。 水を飲みやすい環境を作る猫は、水飲み場に関して少しでも気になることがあると飲水量が減ってしまいます。飲み水は定期的に交換し、常に新鮮な水が飲める環境を作りましょう。トイレの近くに飲み水が置かれていることを嫌う場合もあります。また、流れるタイプの飲水器から好んで水を飲む猫もいます。飲水量が少ないと感じる場合は動物看護師や獣医師と相談し、より水が飲みやすい環境作りを試みてみましょう。 ポイント2.尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 猫の下部尿路疾患の代表例 その2『膀胱炎』 猫の膀胱炎は、猫と暮らしていると一度は経験するといって良いほど多く認められる病気の一つです。原因は細菌や結晶、結石、ウイルスなどが考えられてきましたが、最近では精神的ストレスでも膀胱炎を起こすことが分かっています。 細菌性膀胱炎 尿道を上がってくる細菌が原因で、猫では10歳以上で罹患率が高いと考えられています。【症状】トイレに行っても尿を出すのに時間がかかり、残尿感があるため頻繁に行ったり、トイレ以外の場所で排尿してしまったりする様子を見て飼い主様が気づくことが多いです。血尿や白く濁った尿、通常よりも強い臭いがする尿が認められます。排尿時や排尿後に痛がって鳴く、腹部や陰部を気にして過度に舐める、食欲不振、元気の低下、等が認められることもあります。【診断】尿検査により診断されます。【治療】適切な抗生剤を2~3週間使用します。この病気の予防策として、動物病院での定期的な健康診断により基礎疾患(糖尿病、腎不全など)が無いかを確認し、あれば速やかに治療を行い体内に細菌感染が起こりにくい環境をつくっておくことが重要です。また、飲水量を増やし、排尿回数を増やすことで尿道の細菌を洗い流す作用を期待します。 特発性膀胱炎 10歳以下で多く発生し、尿検査をしても、細菌、結晶などがみられません。何らかの精神的ストレスにより脳や神経が刺激され、膀胱粘膜や粘膜を被っている粘液層(GAG)に影響を及ぼすことが原因と考えられています。GAGが剥がれると、尿が膀胱の粘膜上皮を直接刺激して膀胱炎を悪化させたり、長引かせたりします。【症状】頻尿などの症状を示します。【診断】まずは尿検査、画像診断(膀胱や尿路の異常の有無を確認)等を行いますが、これらの検査を行っても細菌感染や尿路結石などの明確な原因が見つからない場合、猫の生活環境に関する飼い主様からの聞き取り事項も含め総合的に特発性膀胱炎と診断します。【治療】痛み止めや抗炎症薬、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬を使用すると同時に、ストレス要因を確認し、猫の生活環境を改善します。特発性膀胱炎は再発性が高く、継続的なケアと予防が重要です。定期的な診察と生活環境の見直しを行い、猫の健康を維持するための対策を講じることが推奨されます。 猫の下部尿路疾患は、日々の生活環境と大きな関係が。ストレスは大敵! 猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意してください。硬水のミネラルウォーターは結石ができる原因となるので与えてはいけません。器の高さや形状、素材が猫の好みに合っているかチェックし、より気に入るものを用意しましょう。季節や好みによって水の温度を変えてあげるのも工夫の一つです。なかなか水を飲もうとしない猫には、日常的にウェットフードを与えることで、全体的な水分摂取量を増やすことができます。 排尿しやすいトイレの工夫 猫のトイレはにおい・砂の触り心地や深さに気をつけ、清潔で快適な状態を保つことが重要です。特に多頭飼育の場合は、飼育している猫の頭数+1個はトイレを設置するようにしましょう(例:2頭の場合は、トイレを3個つなげて置くのではなく離れた3か所に置きます)。できるだけ静かな場所に設置し、猫が我慢せずに適切なタイミングで排尿できるようにすることが病気の予防につながります。最近では猫の『スマートトイレ』も販売されており、専用のスマートフォンアプリに登録することで体重や排尿の記録ができ、健康管理に役立ちます。 思い切り遊べる環境 猫は本能的に上下運動を好む動物ですので、キャットタワーを設置したり家具の配置を工夫してジャンプしたり飛び降りたりできるようにしましょう。また、猫本来の狩りの本能を満足させる遊びやおもちゃを用意して、運動不足を解消することも重要です。 安心できる場所 猫は隠れられる狭い場所を好む動物です。これは野生時代の習性から来ており、安全を確保し、ストレスを軽減するための重要な行動です。上下左右が囲まれた狭いスペース、ひとりになりたい時にゆっくりできるベッドなど、安心して過ごせる場所を確保してあげましょう。 多頭飼育の場合 食事、水、トイレ、寝場所、爪とぎ場所などが、各猫に確保されていて、その場所まで安心してアクセスできる環境が必要です。それぞれ「頭数+1個」を別々の場所に置くようにしましょう。これらの配置が適切でないと、寝床を巡ってケンカが起きたり、同居猫を警戒してトイレにアクセスできなかったりしてストレスとなる可能性があります。 その他ストレスの要因として、生活環境の変化(引越しや模様替えなど)、同居動物の増減や相性、留守番時間の長さ、飼い主様とのコミュニケーション、部屋の温度管理などがあげられます。要因は分かっているけれども良い改善方法が見つからない、うまく改善されない、などお悩みの時には、ぜひ獣医師にご相談ください。ストレスを和らげるためのサプリメントやフェロモン製品などが助けになる場合もあります。当院には動物行動学を専門に学んだ獣医師も在籍していますので、より具体的な対策のアドバイスを差し上げることが可能です。 まとめ 最後に、下部尿路疾患予防のためのチェックポイントです。  トイレは清潔にしていますか?  トイレの数は1頭につき1個、さらに+1個用意されていますか?  トイレは安心できる場所に置いてありますか?  トイレを我慢させてしまう環境ではありませんか?  毎日、猫の排泄する様子や回数・色・においなどを気にしていますか?  常に新鮮な水が飲めるようになっていますか?  猫が安心して過ごせる場所・時間はありますか?  体重過剰ではないですか?  定期的な健康診断を行っていますか? いかがでしたでしょうか?十分に実行できていなかったポイントは今日から早速改善していきましょう。 猫の排尿が滞ると、最悪の場合死亡することもある、非常に緊急性の高い状態になります。尿が出ていない、いつもより尿量が少ない、尿の色が変だ、など異常を感じた場合は躊躇せず、すぐにご来院ください。