TOP > 症例紹介・コラム

Case Studies and Columns 症例紹介・コラム

症例紹介・コラム

  • ペットの防災 虎の巻 ―いざという時のために必要な備えと心構えを徹底解説

    世界一の災害大国といわれる日本。地震はもとより、近年は台風や集中豪雨の恐ろしさも身近なものとして実感するようになりました。災害はいつ発生するかわかりません。いざという時に混乱をなるべく回避し、動物が苦手な人ともトラブルなく過ごすためには、日頃からの備えや意識が大切です。ここでは飼い主様とペットが災害時にスムーズに行動できるための防災対策を解説します。この機会に、備蓄品や日頃のしつけ・避難計画を見直してみましょう。 【虎の巻 その一】事前準備編 ‟ペットのための防災用品“  ライフラインの寸断や緊急避難などに備え、必要な物資の備蓄をしましょう。避難所では、動物に対する備えは基本的に飼い主の責任になります。また、救援物資が届くまでには時間がかかります。少なくとも、5日分の用意はしておきましょう。 持ち出し品には優先順位をつけ、優先度が高いものはすぐに持ち出せるように保管しておきましょう。 重いものや大きなものは避難の妨げになるため、一旦避難した後、安全を確認してから持ち出すようにしましょう。 優先順位1 命や健康に関わるもの 療法食・薬ゆとりを持って備えておきましょう。担当医に、どのくらいの期間であれば薬や療法食がなくても大丈夫か確認しておきましょう。 フード・水(最低5日分)犬や猫が1日に必要とする飲み水は、体重1㎏につき50ml程度とされています。人間用とは別に用意しましょう。 リード・胴輪・予備の首輪避難所でキャリーバッグの扉を開けた際に脱走しないよう、猫もリードの着用が必要です。 トイレ用品ペットシーツや砂など、使い慣れたものを用意しておきましょう。汚物を入れるゴミ袋や消臭剤も必要です。 食器コンパクトになる折り畳み式の食器を、フード用・水用の2つ用意しておきましょう。 クレート・キャリーバッグ・ケージ避難所で重ねて置かれることを考慮すると、プラスチック製のしっかりとした作りのクレートが良いでしょう。日頃からペットが嫌がらずに入るよう訓練をしておくことが重要です。クレート・トレーニングの方法(犬) クレート・トレーニングの方法(猫)  優先順位2 飼い主やペットの情報 飼い主の連絡先飼い主の連絡先以外に、緊急の連絡先・ペットの預け先の情報も記載しておきましょう。 ペットの写真印刷物とともに携帯にも画像を保存しておきましょう。動物と一緒に写った写真があると、迷子時に飼い主を特定するのに役立ちます。 ワクチン接種歴・既往歴・検査結果・かかりつけ動物病院の情報ペットの健康状態を記載し、診療時や一時預かり時などに、第三者にペットの健康状態をスムーズに伝達できるようにしておきましょう。 当院ペットケアクラブ会員様にお渡しする「ペット健康手帳」には、これらの情報を記載するページがあります。日頃から記入し、災害時にはすぐに持ち出せるようにしておきましょう。▶ペットケアクラブのご案内はこちら 優先順位3 日用品 タオル・ブラシ ウエットタオルや清浄綿目や耳の掃除など多用途に利用可能です。 ビニール袋・新聞紙排泄物の処理など多用途に利用可能です。 お気に入りのおもちゃ使い慣れたものや、ペット自身の匂いが付いているものがあると、安心でき、避難所でのストレスを和らげることができます。 頭数分の洗濯ネット多頭飼育の場合、特に猫は一つのキャリーバッグに入れるとケンカする場合があります。1頭ずつ洗濯ネットに入れてからキャリーバッグに入れると、複数頭でも一度に連れ出すことができます。 ガムテープ・油性ペンケージの補修や動物情報の掲示物作成など、多用途に使用可能です。 マイクロチップの挿入もお忘れなく! はぐれてしまった時に備えて、迷子札の装着は必須です。過去の災害では、迷子の間に痩せて首輪が取れてしまった事例も起きているので、マイクロチップの挿入も必ずしておきましょう。 犬・猫へのマイクロチップの装着と登録が義務化されました 令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されています。6月1日以降にブリーダーやペットショップが取得し、販売した犬や猫には、すでにマイクロチップが装着されています。購入した飼い主の方は、国のシステムにおいて、所有者情報をご自身の情報へ変更登録する義務があります。一般のご家族様ですでに同居されている犬や猫、また保護犬・猫や譲渡などでお迎えされた場合などは、マイクロチップの装着は任意(努力義務)となります。ただし、装着した場合においては、国のシステムへの所有者情報の登録が義務となります。 マイクロチップ情報の登録の窓口 環境大臣指定登録機関 公益社団法人日本獣医師会登録サイト:犬と猫のマイクロチップ情報登録  世界に一つだけの番号が登録されている直径2㎜・全長12㎜程度の円筒状の電子標識器具です。背中側の首筋などに注入します。注入時の痛みはあまりなく、麻酔・鎮静の必要はありません。番号を保健所などに配備してあるリーダーで読み取り、データベースに登録された情報と照会することで飼い主を検索することができます。また万が一、ペットの所有権で揉めるような事態に陥った場合も、マイクロチップの登録内容によって、自身のペットだと証明することができます。 ◎引っ越しなどで住所や電話番号などが変わった際は、登録内容を更新し、データベースの情報は必ず最新にしておきましょう! 迷子になったワンちゃんが… マイクロチップのおかげで無事家族と再会できたケースをご紹介(2013年12月16日収容、同日返還のワンちゃんのできごとです) 12月半ばのことです。もうすぐ6歳になるラブラドール・レトリーバーの女の子が、庭でつながれているリードを擦り切って、外に逃げ出してしまいました。飼い主家族みんなで探していたところ、数百メートル離れた住宅街で、警察によって保護されました。このワンちゃんには、マイクロチップが埋め込まれていたので、動物愛護センターがマイクロチップ・リーダーで確認するとマイクロチップ番号が読み取れました。この番号を(公社)日本獣医師会が管理するデータベースで照合すると、飼い主名・住所等が判明し無事、飼い主のもとに帰ることができました。 出典元:動物ID普及推進会議(AIPO)ポスターより抜粋 公益社団法人日本獣医師会動物ID普及推進会議(AIPO)AIPOとは、Animal ID Promotion Organization (動物ID普及推進会議)の略称で、マイクロチップによる犬、猫などの動物個体識別の普及推進を行っている組織です。(環境省推進システムとは別になります。) メリット・AIPOのデータベースは臨床獣医師及び動物愛護関係行政機関などによる情報検索が可能です。  環境省データベース(法定登録)は行政機関のみが情報検索可能。デメリット・新規登録・変更は国のシステムとは別になり、有料です。・オンライン申請のみ 【虎の巻 その二】しつけ・トレーニング編 ‟犬も猫もクレート・トレーニングが必要!“  過去の震災では、ペットを連れて避難したかったのにペットが家の中で隠れたり逃げ回ったりして、一緒の避難を断念したケースが多くありました。このような事態を避けるため、「クレート=何かあったら逃げ込む安全な場所」とペットに認識させ、いざという時に捕まえやすくしておきましょう。 クレート・トレーニング ~犬の場合~ 愛犬が抵抗感なくクレートに入れるよう、「クレート=良い所」と教えてあげましょう! 用意するもの プラスチック製の頑丈なクレート。成犬の場合、中で犬が方向転換でき、自然な形で立ったり横たわったりできる大きさのクレートを選びましょう。 タオル・毛布・冷感マットなど、季節に応じた敷物 STEP1 クレートに慣らす ❶ クレート内を快適にする中にタオルなどを敷いて、安心して休める場所にします。犬が入ったはずみで閉まらないよう、扉を固定しておきましょう。 ❷ クレートの中で良い経験をさせるクレートの中で毎日のごはんや知育玩具(おやつを詰めたコングなど)を与え、「クレートの中にいると良いことがある」ことを経験させましょう。自ら進んで入れるようになってきたら③に進みます。 ❸ クレートの中にいることを褒める犬がクレートの中に自ら進んで入ったら、中にいる犬に入口からフードやおやつを与え続け、中に留まれるようにしていきましょう。褒め言葉をかけることも忘れずに! STEP2 扉の開閉に慣らす ❹ 扉をそっと閉める犬がごはんや知育玩具に夢中になっている間に扉を閉めます。閉める時間は、数秒間から始め、徐々に長くしていきましょう。すぐに出たがるようならSTEP②に戻り、再度時間をかけてクレートに慣らしましょう。出たがる犬を押し戻すような行動はNG ですよ。クレートが嫌いになってしまいます! ❺ 静かにしている時に扉を開ける「吠えたら出してくれた」と犬が誤解しないように、静かにしている時に出られることを繰り返し教えましょう。 ❻ 合図で行動できたらごほうびを与える犬がクレートに入る直前に「ハウス」と声をかけ、「ハウス=クレートに入る合図」として教えていきます。犬が合図の後にクレートに入ったら、すぐにフードやおやつなどのごほうびをあげ、よく褒めてあげましょう! ここでは一般的な方法をご紹介しましたが、犬の性格によって効果的な方法はさまざまです。トレーニングがうまくいかない場合は、犬に苦手意識が芽生える前に、早めにスタッフにご相談ください。 当院では犬のしつけ教室を開催しています。日頃から愛犬とのコミュニケーションにお悩みの飼い主様、愛犬との絆をより深めたい飼い主様には特におすすめです。▶しつけ教室のご案内はこちら クレート・トレーニング ~猫の場合~ 猫が自分でクレートに出入りできる環境を整えてあげましょう! 用意するもの 上部が開口する、プラスチック製の頑丈なクレート 猫が安心する匂い(猫自身や家族の匂い)が付いた毛布やベッド クレートをすっぽり覆えるサイズのバスタオル ❶ クレート内を快適にするペットシーツを底にテープで固定し、その上に猫が安心する匂いが付いた毛布やベッドを置きます。 ❷ 扉を開けておく猫が好きな時に自由に出入りできるよう、扉は開け放しておきます。猫が入ったはずみでガシャンと閉まらないよう、扉を固定しておきましょう。 ❸ 最適な置き場所を探すクレートを、猫が普段よく居る場所や人が通らない静かな場所に置きっ放しにし、自ら入るのを待ちます。 ❹ 中でごごはんやおやつを与える毎日のごはんやおやつをクレートの中で与え、クレートへの警戒心を和らげます。慣れてきたら、食事の間は扉を閉めてみましょう。 ❺ 慣れたら短距離の移動から猫が好んで出入りするようになったら、短距離の移動に挑戦です。移動時には必ずクレート全体をバスタオルで覆い、猫にとってストレスとなる視覚的な刺激を遮断しましょう。 ◎クレート内をさらに寛げる場所にするために…猫のストレスを緩和するフェロモン剤「フェリウェイ」を、クレート内や中に入れる毛布などにスプレーしてみましょう。※スプレー後3 0分は猫を近づけないようにしてください。 苅谷動物病院グループの全ての病院では、猫待合、診察室、猫ケージ等院内でも使用している場所があります。また、病院で販売もしていますのでご興味ある方はスタッフまでお声がけください。 胴輪を付ける練習もしておきましょう 避難所では脱走防止のため猫も首輪とリードを付けることが推奨されていますが、パニックに陥った猫が全力疾走で逃げた場合、リードや首輪が周囲のものに引っかかり、首に強い衝撃が加わったり、首輪が抜けてしまったりする恐れがあります。このような事態を避けるため、当院では胴輪にリードを付けることをおすすめしています。ただし、はじめから胴輪を受け入れられる猫は稀なので、日頃から着用する練習をしておく必要があるでしょう。 練習のポイント ❶胴輪選び洋服と一体化しているようなデザインの胴輪が望ましいです。サイズがしっかり合ったものを選びましょう。 ❷はじめは背中に乗せることからおやつをあげながら、胴輪を猫の背中に乗せてみましょう。受け入れられるようであれば、胴輪にゆっくり両前肢を通してみましょう。 ❸徐々に装着時間を延ばす猫がパニックになったり嫌がったりするようなら無理強いは禁物です。一日数分から始めて、気長に練習を続けましょう。着用した状態でリラックスできる(排泄や食事ができる)ようになったら、リードを付ける練習も行ってみましょう。 焦らず気長に。猫のペースに合わせてやってみてくださいね! 【虎の巻 その三】避難シミュレーション編 ‟避難場所・避難経路の確認を!“ 緊急的に避難する施設や場所である「指定緊急避難場所」は、災害の種類(地震・洪水・津波など)によって異なる場所が指定されている場合があります。住んでいる自治体の防災ガイドラインをよく読み、それぞれの事態に応じた最寄りの避難場所を確認しておきましょう。 【現在の自治体情報の確認が必要】 江東区・江戸川区・足立区・市川市の見解は… ▶全市区共通 管轄内すべての避難所で、飼い主とペットが別空間で過ごす「同行避難」を認めている。 ペットの居場所は各避難所の状況により異なる(昇降口・室内外・テント内など)が、原則として人と同じ居室への入室は不可である。 トイレ掃除や給餌時に逃げ出さないよう、犬も猫もリードを付けること。   ▶江東区 台風や水害など事前に被害が予測される場合は、予め各自でペットの避難場所を確保しておくことが原則。 苅谷動物病院の待合室のモニターでは江東区保健所提供の【備えよう!ペットの防災】を配信しています。また江東区公式チャンネルでも動画配信しています。 知っておきたい!「同行避難」と「同伴避難」の違い 2019年、関東を襲った強烈な台風では河川が氾濫し、水害からの避難を余儀なくされた方が多くいらっしゃいました。そんな状況の中で話題となったのが、“ペットと一緒に避難することへの是非”でした。 そもそも「同行避難」とは、災害の発生時にペットを連れて指定の緊急避難場所等まで避難することを指します。避難所等において飼い主とペットが同室(または同施設)で一緒に暮らすことを指す「同伴避難」とは異なります。 環境省をはじめ多くの自治体では「同行避難」を推奨していますが、「同伴避難」を認めている避難所は稀です。また、「同行避難」を受け入れている避難所でも、キャリーバッグの置き場所などの受け入れルールは決められています。動物が苦手な方やアレルギーの人もいるので、飼い主は必ずルールに従い、ペットの衛生面・健康管理に配慮する必要があります。   ペット防災情報 問い合わせ先(江東区・江戸川区・足立区・市川市) 災害時には、電話・インターネット回線がつながらない恐れがあります。避難場所でのペットとの過ごし方など、疑問や質問は平時に確認しておきましょう。 江東区役所 防災課 防災計画係 防災センター☎03-3647-9584▶江東区役所ホームページ「ペットの防災」 江戸川区役所 江戸川保健所 生活衛生課 動物管理係☎03-3658-3177▶江戸川区役所ホームページ「ペットの災害対策」 足立区役所 危機管理部 総合防災対策室 災害対策課☎03-3880-5836▶足立区役所ホームページ「災害時のペットとの避難について」 市川市役所 環境部 自然環境課 動物愛護グループ☎047-712-6309▶市川市役所ホームページ「災害時におけるペット対策」 まとめ 災害はいつ身近で起こるかわかりません。いざという非常時に、少しでもペットにつらい思いをさせないために、日頃から準備しておくことが非常に大切です。ここで紹介した要点を参考に、ぜひ今一度身の回りの状況をチェックしてみてください。物理的な備えだけでなく、ペットとどれだけコミュニケーションがとれるかも重要となります。家族以外の人が苦手、人に触られるのを好まない、恐がりなどの性格のペットの場合でも、少しずつ練習することで改善することも多いです。当院には動物行動学を学んだ獣医師や犬のしつけ教室を担当する動物看護師、専門インストラクターが在籍しておりますので、そのような点でお悩みがありましたらいつでもご相談ください。

  • 猫にとって良い食事とは?与えてはいけないものも!病気との関係や誤食の危険性まで徹底解説

    猫にはどんな食事が良い? 猫の食事については、個体の状態や生活ステージに応じて適切に対応することが大切です。成長期の子猫には骨や筋肉の発育に必要な栄養が求められ、成猫や高齢猫にとっては適切な体重管理や関節の健康維持が重要ですので、栄養バランスを考慮した食事が必要です。また、ケガや病気によって栄養ニーズが変化することもあります。ケガをした場合は治癒を促進するためにタンパク質やビタミンCが重要ですし、病気によって食欲が低下した場合は栄養補助食品や特別な食事が必要になることもあります。愛猫の状態を把握し、適切な栄養プランを立てる上で、一緒に暮らしているご家族の観察とかかりつけの病院での定期的な健康診断は、欠かせません。食事は日々の積み重ねであり、健康維持において重要な役割を果たします。猫の生活ステージや健康状態に合わせて食事を柔軟に調整することで、愛猫に健康で幸せな生活を送ってもらうことができます。 猫は肉食性。適切な食事の与え方 猫は肉食動物であり、肉から得られるタンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルが必要です。猫の健康を維持し長生きしてもらうためには、以下の栄養素がバランスよく含まれた食事を与えることが必要です。 タンパク質猫には良質な動物性タンパク質を含む食事が推奨されます。肉や魚から得られるアミノ酸が猫にとって重要であり、筋肉、皮膚、毛並み、酵素、ホルモンなどの構築や体の修復に必要です。 アミノ酸(タウリン)タウリンは猫の健康に非常に重要な必須アミノ酸です。タウリンは心臓の健康、視覚機能、生殖機能に重要です。猫は体内で充分なタウリンを合成できないため、食事から摂取する必要があります。肉や魚に豊富に含まれています。 脂肪と必須脂肪酸脂肪はエネルギー源です。脂溶性ビタミンの吸収を助け、細胞膜の構成要素としても重要です。適切な脂肪摂取量は猫の皮膚や被毛の健康維持にも関係します。 ビタミン・ビタミンA: 視覚、免疫機能、皮膚の健康に重要です。特に猫は植物からビタミンAを合成できないため、動物性食品から摂取する必要があります。・ビタミンD: 骨の健康を維持するために重要です。日光による合成が難しいため、食事からの摂取が必要です。・ビタミンE: 抗酸化作用があり、細胞の健康を保ちます。・ビタミンK:血液凝固作用、骨代謝や細胞増殖に関与します。・ビタミンB群: 代謝、エネルギー生成、神経機能に関与します。 ミネラルカルシウムとリン: 骨と歯の健康に重要です。これらのバランスが重要で、リンの過剰摂取は腎臓に負担をかけ、カルシウムの過剰摂取や不足は尿路結石や骨の異常を引き起こすことがあります。マグネシウム: 神経と筋肉の機能、心臓の健康に重要です。ただし、過剰摂取は尿路結石のリスクを増加させるため注意が必要です。カリウム:過剰なナトリウムの排泄、神経刺激の伝達、筋肉や心臓の働きの調整などの役割を果たします。鉄: 血液の健康を保つために重要です。亜鉛: 免疫機能、皮膚と毛の健康に重要です。 水分猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。例えば、4キログラムの成猫であれば、1日に約200mlの水を摂取する必要があります。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意して日常的に水の入れ替えを行い、清潔なボウルを使用してください。特にドライフードを主食としている場合は、水分補給に注意する必要があります。ドライフード1食につき、同等の量の水を提供することが推奨されます。シニア期の猫にはウエットフードを与える、ドライフードに水を加える等の工夫をして水分摂取を促進しましょう。ミネラルウォーターは尿結石ができる原因となるので与えてはいけません。 猫にとって適切な栄養バランスを提供するためには、獣医師に相談して栄養バランスの取れた食事プランを立てることが重要です。また、猫の年齢、体重、活動レベルなどに応じて食事を調整することも重要です。 猫の食事に味付けは不要 猫の食事に調味料や味付けを加えることは、一般的にはおすすめしません。多くの調味料や味付けには、猫にとって有害な成分が含まれている可能性があります。例えば、塩分や砂糖、人工甘味料、香辛料などは、猫の健康に悪影響を与えることがあります。 塩高塩分の食事は、猫の健康に悪影響を与える可能性があります。猫に与える食事に余分な塩を加えることは、高血圧や脱水、腎臓疾患などのリスクを高める可能性があります。 砂糖砂糖を含む食品は、猫の健康に悪影響を与える可能性があります。過剰な砂糖摂取は肥満や糖尿病などの健康問題を引き起こす可能性があります。 香辛料一部の香辛料は、猫にとって消化器官に刺激を与えたり、アレルギー反応を引き起こしたりする可能性があります。また、辛い食品は消化器官に負担をかけることがあります。 添加物人間の食品に含まれる添加物(例: オニオンパウダーやガーリックパウダーなどタマネギやにんにくは猫にとって有害)や人工着色料、保存料などは、猫にとって消化器官に負担をかける可能性があります。 猫の食事には、適切な栄養バランスが含まれている市販のキャットフードや、獣医師がすすめる特定の食事を選択することが重要です。もし自家製の食事を与える場合は、安全な食材で調理し、肉や魚からタンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラル、タウリンなどを取り入れ栄養バランスの確保に努めましょう。また人間の食事に使われるような調味料や味付けは避けるべきです。 キャットフードにおける総合栄養食・一般食・栄養補完食の違い 総合栄養食と表示されているものは、そのフードが栄養学的に完全な製品であることを示します。一般食は、人の食事に例えると「おかず」と理解してください。栄養補完食とは特定の栄養素のみを満たす製品のことです。猫の主食とはならず、必要な栄養素の一部を補充する目的で設計されています。つまり、一般食や栄養補完食のみを食べていると栄養バランスは偏り、さまざまな病気を引き起こすかもしれません。購入する時にはフードのパッケージの表示を必ず確認して選びましょう。また、病院で処方する療法食は特定の健康問題や疾患を持つ猫のために開発されたフードです。獣医師の指導や処方が必要な特定の栄養素の制限や増加が施されている食事です。飼い主の判断で与えることはしないでください。 食事と病気の関係 猫が特定の病気にかかる原因はさまざまですが、食事もその一因となることがあります。以下に、食事が猫の健康に影響を与える可能性のあるいくつかの病気の原因を挙げてみます。 タウリン欠乏症タウリンは猫にとって必須のアミノ酸であり、不足すると視力の低下や心臓病などの重篤な問題が発生する可能性があります。 栄養失調栄養バランスの悪い食事は、栄養不足や免疫機能の低下などを引き起こす原因となります。 肥満カロリー過多な食事は肥満の原因となります。肥満は糖尿病や関節疾患、心臓病などの病気のリスクを高める可能性があります。 糖尿病猫は肉食動物であり、炭水化物の消化が得意ではありません。炭水化物の多い食事は血糖値の急激な上昇を引き起こし、インスリンの需要を増大させます。これが長期間続くと、インスリン抵抗性が発生しやすくなり、糖尿病のリスクが高まります。 腎臓病猫は腎臓病にかかりやすい動物です。リンやタンパク質の含有量が多い食事は腎臓に負担をかけ、腎機能を低下させることがあります。また、猫は本来砂漠地帯に住んでいた動物で、水分を多く摂取しない習性があります。水分が不足すると尿が濃くなり、尿路結石や腎臓の問題を引き起こす原因となるため、水分摂取量には注意しなければなりません。 尿路結石水分の摂取不足やミネラルバランスの欠如によって、猫は尿路結石症を発症するリスクが高まります。カルシウム、マグネシウム、などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物(じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど)の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿中に結石ができやすくなります。結石は尿路の詰まりや炎症、痛みや排尿困難を引き起こす可能性があります。 皮膚疾患不充分な栄養バランスは、皮膚および被毛の健康に影響を与える可能性があります。皮膚の乾燥、かゆみ、脱毛などの問題が発生する可能性があります。 これらの病気の原因には他にもさまざまな要因が関与しますが、食事がその一部を占めることがあります。猫の健康を維持し、病気のリスクを減らすために適切な食事を与えることが重要です。 与えてはダメ!猫にとって危険な食べもの 猫が食べると危険な食べものには、以下のようなものがあります。 チョコレート・ココア(カカオ類)チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという成分は、猫にとって有毒です。摂取すると、神経系や心臓に影響を及ぼし、中毒症状を引き起こす可能性があります。特に、ダークチョコレートやビターチョコレートにはテオブロミンが多く含まれています。 タマネギ・ニンニク・ネギ類タマネギやニンニク等のネギ類に含まれる硫酸化合物は、猫の赤血球を破壊する可能性があります。長期間にわたる摂取や大量摂取は、貧血を引き起こす恐れがあります。野菜スープやシチューなど調理されたものや調味料として使用されたものでも注意が必要です。 カフェインカフェインは猫にとって毒性があります。コーヒーや紅茶などのカフェインが含まれる飲み物や、カフェインが含まれる食品を与えてはいけません。 アルコールアルコールは猫にとって非常に有害です。少量でもアルコール中毒を引き起こす可能性があります。 乳製品多くの猫は乳糖を消化する能力がありません。そのため、牛乳や他の乳製品を与えると消化器系の問題を引き起こすことがあります。 生の甲殻類や貝類エビ、カニ、ホタテなどの甲殻類、および貝類の刺身にはビタミンB1(チアミン)を破壊するチアミナーゼが含まれているため、与えるべきではありません。チアミナーゼは熱に弱いため加熱すれば大丈夫ですが、いずれも消化があまり良くないので大量に与えることは避けましょう。また、さきいかやスルメは、食べると胃の水分を吸収して膨張するため胃腸障害の原因となります。 アボカドアボカドには、猫にとって有毒な成分であるパーシンが含まれています。消化器系や心臓に影響を与える可能性があります。 レーズン・ブドウレーズンやブドウには、原因不明の腎臓障害を引き起こす可能性のある成分が含まれています。レーズンを含むお菓子やパンなどの加工食品も注意が必要です。 キシリトールを含む食品キシリトールは人間にとっては低カロリーの甘味料ですが、猫にとっては有毒です。キシリトールを摂取すると、急激なインスリンの分泌が起こり、低血糖を引き起こす可能性があります。さらに、高用量では肝障害を引き起こすことがあります。キシリトールはガムやキャンディ、口腔ケア製品などに含まれていることが多いです。 これらの食材や物質は、猫の健康に悪影響を与える可能性があり、最悪の場合は死に至るおそれもあるため、絶対に与えないようにしましょう。猫がこれらの食材を誤って摂取した場合は、速やかに獣医師に連絡し、適切な処置を行う必要があります。 猫草は与えたほうが良い? 猫草(ねこくさ)とは、主に猫が食べるために提供される草のことを指します。一般的に猫草として使用されるのは、次のような種類の草です。 小麦草(ウィートグラス): 小麦の若い芽で、猫草として非常にポピュラーです。 燕麦(オーツ): 燕麦の若い芽も猫草として使用されます。 ライグラス: ライ麦の若い芽も猫草として提供されることがあります。 大麦(バーレーグラス): 大麦の若い芽も猫草として人気があります。 猫草はペットショップやホームセンターで種や苗の状態で販売されていることが多いです。自宅で育てることも簡単で、室内の窓辺などで日光を浴びさせながら水を適度に与えると良いです。 猫草は必ずしも必要ではありませんが、多くの猫が好んで食べることがあり、いくつかの利点があります。猫草の主な利点は以下の通りです。 消化促進: 猫草には食物繊維が含まれており、消化を助けることがあります。 毛玉対策: 猫は毛づくろいをする際に毛を飲み込みますが、猫草を食べることで毛玉を吐き出しやすくなることがあります。 栄養補給: 猫草にはビタミンやミネラルが含まれており、猫の健康に役立つことがあります。 ストレス解消: 猫草を食べることが一部の猫にとってストレス解消や遊びの一環となることがあります。 ただし、猫草を食べない猫も多く、その場合特に問題はありません。また、猫草を過剰に食べると逆に胃腸に負担をかけることもあるので、適量を提供することが大切です。 異物の誤食に注意(異物誤飲・異物誤嚥) 『異物誤飲』とは食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。『異物誤食』『異物誤嚥』と呼ぶこともあります。猫ではおもちゃや紐、ビニール製品などが多く、好奇心と食欲からか若い猫により多く見られますが、どの年齢でも起こり得ます。症状として最も多く見られるのは嘔吐です。他に、食欲不振、元気消失、よだれ、下痢、黒色便などがあります。薬を誤飲した場合は、薬品ごとに異なる中毒症状を引き起こします。特によだれがひどい場合、食べたものをすぐに吐き出す場合、嘔吐物が緑色であったり糞便臭がしたりする場合には注意が必要です。動物の吐く様子は診断の助けになりますから、必ず『どんなものを、どんな時に、どれくらい』吐いたのかを獣医師に伝えて下さい。嘔吐などの症状が出ている場合、まず異物が原因で起きているのかどうかの診断が重要です。入念な触診の後、X線検査、バリウム検査、超音波検査等、各種画像検査を実施します。石や金属はX線で明らかに映りますが、木・布・プラスチック・ゴムはX線には映りにくいため、超音波検査が必要な場合があります。異物が腸に詰まると、腸の中身が通過できなくなり腸閉塞という命にかかわる危険な状態になります。頻回・多量に嘔吐を繰り返し、ぐったりして急速に体調が悪化することが特徴です。時間が経つと腸の閉塞している部分の血液の巡りが悪くなり、最悪の場合、穴が開いてしまうこともあるため緊急手術が必要となります。いずれの場合も早期に診断されれば予後は良好ですが、全身状態が悪化している場合は検査・診断を急がなければなりません。人間が気にかけないようなものでも、猫にとっては興味の対象になることがあります。食事の後の不始末や、不適切なおやつのあげ方によって誤飲を引き起こさないよう、ご家族の方は充分ご注意下さい。 猫が誤食すると危険なもの10選 おもちゃ類小さなおもちゃや紐の付いたおもちゃなど、遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまう可能性のあるものには注意が必要です。特にうさぎなどの獣毛や鳥の羽が使われているものは本能的に刺激され夢中になりやすいので、要注意です。 家庭内の小物類本来猫のおもちゃではなくても猫の興味をひくような形状のもの(人間の子供用のおもちゃ、紐、リボン、輪ゴム、家具の部品、ボタン、画びょう、糸の付いた縫い針など)も、じゃれているうちに口にしてしまうおそれがあります。 毛布や衣類などの布ウールサッキング(毛布や衣類などの柔らかい素材を吸ったり、噛んだりする行動)を日常的にする猫の場合は、布類の誤食にも気を付けてください。布製品は消化器系で充分に分解されず、消化管に詰まるおそれがあります。 軟らかいプラスチック製品・ゴム製品キッチン用品やサンダル、ジョイントマットなど、噛んで遊んでいるうちに欠片を飲み込んでしまうことがあります。これらは消化器系で十分に消化されず、消化管に詰まったり穿孔したりするおそれがあり、内出血や腹膜炎を引き起こすことがあります。 ビニール袋やビニール製品ビニールは消化されないため、体内に取り込まれると腸閉塞、消化管の損傷、有害な化学物質による中毒(ビニールによる中毒は誤食程度の量であれば起こりにくいと思われますが、保管と注意は必要)等の問題を引き起こす可能性があります。ビニール袋やビニール製品に興味を示したり噛むことを好んだりする場合、猫が届かない場所に保管することが重要です。特に食べ物の包装袋などは注意が必要です。 トイレ砂好奇心や暇つぶし、またストレスや欲求不満などが原因でトイレ用の砂を口にしてしまうことがあります。砂の種類によっては唾液や胃液などの水分により猫の体内で膨張し、消化管に悪影響を及ぼすおそれがあります。違うタイプの砂に替える、トイレを人間の目の届くところに設置するなどの対策が必要です。 人間の食べ残し魚の骨は比較的柔らかいですが、口や食道、消化管に刺さる可能性があります。鶏の骨は調理されると脆くなり、鋭い破片になることがあります。これらの鋭利な破片が消化管に詰まると、腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす可能性があり、緊急の状態となることがあります。また、焼き鳥の串、パッケージなど、においにつられてゴミ箱から出して口にしてしまう場合もあります。ゴミ箱は猫が開けられないようにしっかりと蓋をしましょう。 人間の薬人間の薬には猫にとって有害な成分が含まれている場合があり、薬物中毒の症状が現れる可能性があります。猫の届かない場所に保管してください。 家庭で使われる化学物質家庭で使われる多くの化学物質は猫にとって有害です。例えば、清掃剤や殺虫剤、肥料などは誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。 植物一部の植物は触れる、噛む、または食べることで、猫に有害な影響を与える場合があります。例えば、チューリップ、スイセン、スズラン、アザミ、ポインセチア、ユリ、ツツジ、アイビー、アジサイなどは毒素を含んでいるため、中毒症状を引き起こすことがあります。庭や家の中にこれらの植物がないか確認し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。 猫が誤食しないようにするためには、家の中を安全に保つことが重要です。猫は上下運動ができるため行動範囲が広く、前足を器用に使って保管場所の扉などを開ける場合もあります。有害なものは猫の届かない場所に保管するようにしてください。猫が何を食べてしまったか不明な場合や、誤食が疑われる症状が現れた場合にはすぐに獣医師に相談することが重要です。食べた異物の残骸が残っている場合にはそれを持って動物病院へ行くことで、診断の助けになることもあります。 まとめ 以上、猫の食事と食生活において注意するべきことをお伝えしました。日々の食事は、愛猫の生涯の健康と幸福に直結する重要な要素です。正しい知識を持ち、適切な食事を提供することで、愛猫の心身の健康を維持し、より良い生活を送ってもらうことができます。当院には猫の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』の愛玩動物看護師が在籍しています。愛猫の食事選び、与え方などにつきご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛猫の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。

  • 猫の尿路疾患

    猫の下部尿路疾患とは?おしっこが出ないと命の危険も!原因、治療法から予防のストレス対策まで徹底解説 猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease、FLUTD)とは、膀胱炎、尿石症、尿道閉塞など猫の膀胱と尿道に起こる疾患の総称です。症状は主に、頻尿(排尿行為の増加)、排尿困難(排尿に時間がかかる)、血尿などが見られます。さらに進行すると、尿量の減少、元気・食欲の低下、嘔吐、脱水などの症状が現れ、放置すると命にかかわる危険性も。以下に、病院で多く診断する下部尿路疾患をご説明します。普段の食事、生活環境からのストレスが原因となっている場合もありますので、予防策についても詳しく見ていきましょう。 猫の下部尿路疾患の代表例 その1『尿路結石症』 人間と同様に、猫は尿路に石を作ってしまうことがあり、この疾患を『尿路結石症』といいます。膀胱内にできた結石(膀胱結石)が尿道に流れ、途中で尿道を塞いでしまうことを『尿道閉塞』といいます。尿路結石症は、いずれも命に関わる症状を引き起こしたり、手術や入院が必要になったりするような重大な疾患です。それぞれの疾患について、また、結石ができるしくみについて解説します。 尿道閉塞 尿道閉塞は放っておくと急性腎障害そして尿に排出されるはずの老廃物が血液中に蓄積されてしまう尿毒症が起こり、命に関わる危険な状態になります。以下のような症状が見られたら、直ちに動物病院に相談しましょう。【症状】尿意を感じても結石が詰まっていることで尿道から尿が出せないため、トイレに頻繁に行く、トイレで長い時間排尿姿勢をとる、といった症状が見られます。特にオスは尿道が細く結石が詰まりやすいため、注意が必要です。結石が詰まった尿道には痛みが生じるため、急に鳴き声を上げる、唸る、震える、伏せた姿勢のままになるなど、さまざまな様子の変化が見られることもあります。また、左右の腎臓の中に尿が溜まりすぎることで、重度の腎臓の障害が生じてしまいます。膀胱内に尿が溜まりすぎて膀胱が破裂し、尿がお腹の中に漏れてしまうこともあります。いずれも、ぐったりとしてしまう、吐いてしまうなど、著しい体調の悪化が見られます。【診断】尿が出しづらいという症状自体は、膀胱炎など別の病気でも見られます。身体検査、尿検査、X線検査や超音波検査によって膀胱や尿の状態を評価し、結石の有無を確認します。閉塞が疑われる場合には血液検査を行い、腎臓の状態を確認します。【治療】尿道カテーテルという細い管を尿道に挿入し、詰まった結石を膀胱の中に押し戻します。これで尿道内の結石は除去され、尿は開通した尿道を流れることができるので腎臓の負担が取り除かれます。腎臓が既に障害を受けている場合などは、数日入院治療を行いカテーテル経由で排尿させます。カテーテルを外しても問題なく排尿できれば、再発予防治療に進みます。膀胱に押し戻した結石が再度詰まる危険があるようなものであれば、手術による摘出を行います。 膀胱結石 【症状】頻尿、血尿などの尿の異常が見られることがあります。一方で、全く症状がなく過ごし、巨大な結石が健康診断で偶然見つかることもあります。【診断】X線検査や超音波検査によって膀胱の状態や結石の有無を確認することで診断します。また、尿検査を行い、尿の性状から結石の原因物質を推測します。【治療】結石が膀胱の中にとどまっていたとしても、今後その結石が尿道閉塞を引き起こすリスクがあります。また、慢性的な刺激が膀胱に加わって膀胱炎が生じたり、不快感の原因になったりすることがあります。尿路結石症用の療法食に食事を切り替えたり、細菌性膀胱炎がある場合はその治療を行ったりすることで結石が溶ける場合もありますが、多くは膀胱を切開して結石を取り除くような手術が実施されます。 結石はどのように作られる?どうすれば予防できる? 猫の尿路結石の多くは「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」か「シュウ酸カルシウム結石」という種類で、尿中のミネラル(マグネシウム、カルシウムなど)を主体とした結晶と蛋白質によって形成されます。なぜ、尿の中にこれらの結石が作られてしまうのでしょうか。健康な猫でも、尿の中には結石の原材料がバラバラになって存在しています。しかし、「①材料を溶かす液体(=尿の量)が少ない」または「②尿の中に存在する原材料が多すぎる」と、これらの原材料どうしは結合し結石になってしまいます。逆にいえば、 「❶水分摂取量を増やして尿の量を増やす」 「➋尿の中に存在する結石の材料を減らす」ことができれば、結石が作られるのを防ぐことができます。以下は、水分摂取量を増やす方法と結石形成の元となる材料を減らす方法や注意点です。 ポイント1.水分摂取量を増やす 食事と一緒に水分を摂れるようにするドライフードではなくウエットフードを選択したり、食事の風味が変わらない程度に水を足してみたりすると良いでしょう。 適切な体重を保ち、適度な運動を持続的に行う太り気味の場合は運動量も不足しがちになります。運動量が減ると飲水量も減ってしますので、注意しましょう。 また、寒い季節は運動量が低下しやすく、尿路結石が原因で受診する猫が増える傾向がありますので、意識して運動ができるようにしましょう。 水を飲みやすい環境を作る猫は、水飲み場に関して少しでも気になることがあると飲水量が減ってしまいます。飲み水は定期的に交換し、常に新鮮な水が飲める環境を作りましょう。トイレの近くに飲み水が置かれていることを嫌う場合もあります。また、流れるタイプの飲水器から好んで水を飲む猫もいます。飲水量が少ないと感じる場合は動物看護師や獣医師と相談し、より水が飲みやすい環境作りを試みてみましょう。 ポイント2.尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 尿の中に存在する結石の材料を減らす 食事、おやつ、飲み水に注意するじゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。 猫の下部尿路疾患の代表例 その2『膀胱炎』 猫の膀胱炎は、猫と暮らしていると一度は経験するといって良いほど多く認められる病気の一つです。原因は細菌や結晶、結石、ウイルスなどが考えられてきましたが、最近では精神的ストレスでも膀胱炎を起こすことが分かっています。 細菌性膀胱炎 尿道を上がってくる細菌が原因で、猫では10歳以上で罹患率が高いと考えられています。【症状】トイレに行っても尿を出すのに時間がかかり、残尿感があるため頻繁に行ったり、トイレ以外の場所で排尿してしまったりする様子を見て飼い主様が気づくことが多いです。血尿や白く濁った尿、通常よりも強い臭いがする尿が認められます。排尿時や排尿後に痛がって鳴く、腹部や陰部を気にして過度に舐める、食欲不振、元気の低下、等が認められることもあります。【診断】尿検査により診断されます。【治療】適切な抗生剤を2~3週間使用します。この病気の予防策として、動物病院での定期的な健康診断により基礎疾患(糖尿病、腎不全など)が無いかを確認し、あれば速やかに治療を行い体内に細菌感染が起こりにくい環境をつくっておくことが重要です。また、飲水量を増やし、排尿回数を増やすことで尿道の細菌を洗い流す作用を期待します。 特発性膀胱炎 10歳以下で多く発生し、尿検査をしても、細菌、結晶などがみられません。何らかの精神的ストレスにより脳や神経が刺激され、膀胱粘膜や粘膜を被っている粘液層(GAG)に影響を及ぼすことが原因と考えられています。GAGが剥がれると、尿が膀胱の粘膜上皮を直接刺激して膀胱炎を悪化させたり、長引かせたりします。【症状】頻尿などの症状を示します。【診断】まずは尿検査、画像診断(膀胱や尿路の異常の有無を確認)等を行いますが、これらの検査を行っても細菌感染や尿路結石などの明確な原因が見つからない場合、猫の生活環境に関する飼い主様からの聞き取り事項も含め総合的に特発性膀胱炎と診断します。【治療】痛み止めや抗炎症薬、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬を使用すると同時に、ストレス要因を確認し、猫の生活環境を改善します。特発性膀胱炎は再発性が高く、継続的なケアと予防が重要です。定期的な診察と生活環境の見直しを行い、猫の健康を維持するための対策を講じることが推奨されます。 猫の下部尿路疾患は、日々の生活環境と大きな関係が。ストレスは大敵! 猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意してください。硬水のミネラルウォーターは結石ができる原因となるので与えてはいけません。器の高さや形状、素材が猫の好みに合っているかチェックし、より気に入るものを用意しましょう。季節や好みによって水の温度を変えてあげるのも工夫の一つです。なかなか水を飲もうとしない猫には、日常的にウェットフードを与えることで、全体的な水分摂取量を増やすことができます。 排尿しやすいトイレの工夫 猫のトイレはにおい・砂の触り心地や深さに気をつけ、清潔で快適な状態を保つことが重要です。特に多頭飼育の場合は、飼育している猫の頭数+1個はトイレを設置するようにしましょう(例:2頭の場合は、トイレを3個つなげて置くのではなく離れた3か所に置きます)。できるだけ静かな場所に設置し、猫が我慢せずに適切なタイミングで排尿できるようにすることが病気の予防につながります。最近では猫の『スマートトイレ』も販売されており、専用のスマートフォンアプリに登録することで体重や排尿の記録ができ、健康管理に役立ちます。 思い切り遊べる環境 猫は本能的に上下運動を好む動物ですので、キャットタワーを設置したり家具の配置を工夫してジャンプしたり飛び降りたりできるようにしましょう。また、猫本来の狩りの本能を満足させる遊びやおもちゃを用意して、運動不足を解消することも重要です。 安心できる場所 猫は隠れられる狭い場所を好む動物です。これは野生時代の習性から来ており、安全を確保し、ストレスを軽減するための重要な行動です。上下左右が囲まれた狭いスペース、ひとりになりたい時にゆっくりできるベッドなど、安心して過ごせる場所を確保してあげましょう。 多頭飼育の場合 食事、水、トイレ、寝場所、爪とぎ場所などが、各猫に確保されていて、その場所まで安心してアクセスできる環境が必要です。それぞれ「頭数+1個」を別々の場所に置くようにしましょう。これらの配置が適切でないと、寝床を巡ってケンカが起きたり、同居猫を警戒してトイレにアクセスできなかったりしてストレスとなる可能性があります。 その他ストレスの要因として、生活環境の変化(引越しや模様替えなど)、同居動物の増減や相性、留守番時間の長さ、飼い主様とのコミュニケーション、部屋の温度管理などがあげられます。要因は分かっているけれども良い改善方法が見つからない、うまく改善されない、などお悩みの時には、ぜひ獣医師にご相談ください。ストレスを和らげるためのサプリメントやフェロモン製品などが助けになる場合もあります。当院には動物行動学を専門に学んだ獣医師も在籍していますので、より具体的な対策のアドバイスを差し上げることが可能です。 まとめ 最後に、下部尿路疾患予防のためのチェックポイントです。  トイレは清潔にしていますか?  トイレの数は1頭につき1個、さらに+1個用意されていますか?  トイレは安心できる場所に置いてありますか?  トイレを我慢させてしまう環境ではありませんか?  毎日、猫の排泄する様子や回数・色・においなどを気にしていますか?  常に新鮮な水が飲めるようになっていますか?  猫が安心して過ごせる場所・時間はありますか?  体重過剰ではないですか?  定期的な健康診断を行っていますか? いかがでしたでしょうか?十分に実行できていなかったポイントは今日から早速改善していきましょう。 猫の排尿が滞ると、最悪の場合死亡することもある、非常に緊急性の高い状態になります。尿が出ていない、いつもより尿量が少ない、尿の色が変だ、など異常を感じた場合は躊躇せず、すぐにご来院ください。

  • 犬にとって良い食事とは?与えてはいけないものも!病気との関係や誤食の危険性まで徹底解説

    犬にはどんな食事が良い? 犬の食事については、個体の状態や生活ステージに応じて適切に対応することが大切です。成長期の子犬には骨や筋肉の発育に必要な栄養が求められ、成犬や高齢犬にとっては適切な体重管理や関節の健康維持が重要ですので、栄養バランスを考慮した食事が必要です。また、病気によって食欲が低下した場合は栄養補助食品や特別な食事が必要になることもあります。愛犬の状態を把握し、適切な栄養プランを立てる上で、一緒に暮らしているご家族の観察とかかりつけの病院での定期的な健康診断は、欠かせません。食事は日々の積み重ねであり、健康維持において重要な役割を果たします。犬の生活ステージや健康状態に合わせて食事を柔軟に調整することで、愛犬に健康で幸せな生活を送ってもらうことができます。 犬は雑食性。適切な食事の与え方 犬は一般的に雑食であり、肉や野菜、果物などさまざまな食材を摂取することができます。ただし、犬に人間の食事と同じようなものを与える場合、いくつかの留意点があります。 栄養バランス犬に与える食事は栄養バランスが重要です。タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれていることが必要です。 毒性のある食材人間には無害でも、犬には毒性のある食材があります。例えば、チョコレート、アルコール、アボカド、タマネギ、ニンニク、ブドウ、キシリトールなどは犬にとって有害ですので与えてはいけません。 適切な調理生の食材や食品は犬にとって消化が難しい場合や食中毒のリスクがあるため、気をつける必要があります。肉は適切に調理し、魚は寄生虫のリスクやチアミナーゼによるビタミンB1不足のリスクを減らすために加熱して与えることが重要です。 適量与える食事の量にも注意が必要です。過剰な摂取は消化不良や肥満を引き起こす可能性があります。 犬に与える食材には、鶏肉、牛肉、豚肉、野菜(例えば、人参、サツマイモ、ほうれん草)、果物(例えば、薄くカットしたリンゴ、バナナ)、穀物(例えば、米、小麦)、魚介類などがあります。しかし、与える際には上記の留意点を念頭に置いてください。気になることがある場合には事前に獣医師に相談することもおすすめします。 野菜や果物はヘルシー? 健康的というイメージで、野菜や果物を主食とともに、またはおやつとして与えている方は多いと思います。しかし、その中には間違った与え方をするとさまざまな障害を引き起こすものもあるので注意が必要です。アボカドやブドウ、レーズンは摂取することにより中毒を引き起こします。さつまいもやほうれん草はシュウ酸の含有量が多く、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクが高まります。また、じゃがいもなどの根菜類は意外とカロリーが高いということをご存じですか?例えば100gの中サイズのじゃがいも1個のカロリーはおよそ70kcalです。70kcalは、体重4kgの犬の1日に必要なカロリーの20%に相当します。その他にカロリーの高いものは、さつまいも(約130kcal/100g)やおから(約100kcal/100g)などがあります。反対にカロリーの低い野菜には、ブロッコリー(約33kcal/100g)、レタス(約12kcal/100g)、キャベツ(約23kcal/100g)などがあります。ちなみにブロッコリーは一口大で約3kcal、キャベツの千切り一握りで約10kcal程度です。野菜だから大丈夫、と思わず色々なことに注意しながら与えて頂きたいと思います。 犬の食事に味付けは不要 犬の食事に調味料や味付けを加えることは、一般的にはおすすめしません。多くの調味料や味付けには、犬にとって有害な成分が含まれている可能性があります。例えば、塩分や砂糖、人工甘味料、香辛料などは、犬の健康に悪影響を与えることがあります。 塩高塩分の食事は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。犬に与える食事に余分な塩を加えることは、高血圧や脱水、腎臓疾患などのリスクを高める可能性があります。 砂糖砂糖を含む食品は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。過剰な砂糖摂取は肥満などの健康問題を引き起こす可能性があります。 香辛料一部の香辛料は、犬にとって消化器官に刺激を与えたり、アレルギー反応を引き起こしたりする可能性があります。また、辛い食品は消化器官に負担をかけることがあります。 添加物人間の食品に含まれる添加物や人工着色料、保存料などは、犬にとって消化器官に負担をかける可能性があります。 犬の食事には、適切な栄養バランスが含まれている市販のドッグフードや、獣医師がすすめる特定の食事を選択することが重要です。もし自家製の食事を与える場合は、安全な食材で調理し、人間の食事に使われるような調味料や味付けは避けるべきです。 ドッグフードにおける総合栄養食・一般食・栄養補完食の違い 総合栄養食と表示されているものは、そのフードが栄養学的に完全な製品であることを示します。一般食は、人の食事に例えると「おかず」と理解してください。栄養補完食とは特定の栄養素のみを満たす製品のことです。つまり、一般食や栄養補完食のみを食べていると栄養バランスは偏り、さまざまな病気を引き起こすかもしれません。購入する時にはフードのパッケージの表示を必ず確認して選びましょう。 食事と病気の関係 犬が特定の病気にかかる原因はさまざまですが、食事もその一因となることがあります。以下に、食事が犬の健康に影響を与える可能性のあるいくつかの病気の原因を挙げてみます。 肥満カロリー過多な食事が肥満の原因となります。肥満は膵炎や関節疾患などの病気のリスクを高める可能性があります。また、肥満は犬の糖尿病の直接の原因にはならないですが危険因子の1つになります。 腎臓疾患高たんぱく質や高塩分の食事が腎臓に負担をかけ、腎臓疾患の原因となることがあります。また、水分不足も腎臓機能を損なう可能性があります。 食物アレルギー食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質が原因となることが多いです。これによって皮膚炎や消化器系の問題が引き起こされることがあります。 消化器疾患高脂肪の食事は、膵炎などの消化器系の疾患を引き起こす原因となることがあります。 尿路結石代表的な尿石にストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石があります。カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物(じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど)の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になるとストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモも、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまう傾向があるので過剰に与えないよう注意しましょう。 これらの病気の原因には他にもさまざまな要因が関与しますが、食事がその一部を占めることがあります。犬の健康を維持し、病気のリスクを減らすために適切な食事を与えることが重要です。 与えてはダメ!犬にとって危険な食べもの 犬が食べると危険な食べものには、以下のようなものがあります。 チョコレート・ココア(カカオ類)チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという成分は、犬にとって有毒です。摂取すると、神経系や心臓に影響を及ぼし、中毒症状を引き起こす可能性があります。特に、ダークチョコレートやビターチョコレートにはテオブロミンが多く含まれています。 タマネギ・ニンニク・ネギ類タマネギやニンニク等のネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物や有機硫黄化合物は、犬の赤血球を破壊する可能性があります。長期間にわたる摂取や大量摂取は、貧血を引き起こす恐れがあります。野菜スープやシチューなど調理されたものや調味料として使用されたものでも注意が必要です。 アボカドアボカドには、犬にとって有毒な成分であるペルシンが含まれています。消化器系や心臓に影響を与える可能性があります。 レーズン・ブドウレーズンやブドウには、原因不明の腎臓障害を引き起こす可能性のある成分が含まれています。レーズンを含むお菓子やパンなどの加工食品も注意が必要です。 アルコールアルコールは犬の体に非常に有害です。アルコール中毒症状を引き起こすだけでなく、呼吸困難や体温の上昇など、重篤な症状を引き起こす可能性があります。意図的に与えることはもちろん、誤ってアルコールを摂取することもありますので、注意が必要です。 コーヒーコーヒーは犬にとって有毒な飲み物です。コーヒーに含まれるカフェインは、犬の神経系や心臓に深刻な影響を与えることがあります。犬がコーヒーを摂取すると、過剰な興奮、心拍数の増加、呼吸困難、嘔吐や下痢、発作等の症状が現れる可能性があり、重篤な場合、命にかかわります。 キシリトールを含む食品キシリトールは人間にとっては低カロリーの甘味料ですが、犬にとっては有毒です。キシリトールを摂取すると、急激なインスリンの分泌が起こり、低血糖を引き起こす可能性があります。さらに、高用量では肝障害を引き起こすことがあります。キシリトールはガムやキャンディ、口腔ケア製品などに含まれていることが多いです。 これらの食材や物質は、犬の健康に悪影響を与える可能性があるため、絶対に与えないようにしましょう。犬がこれらの食材を誤って摂取した場合は、速やかに獣医師に連絡し、適切な処置を行う必要があります。 異物の誤食に注意(異物誤飲・異物誤嚥) 『異物誤飲』とは食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。『異物誤食』『異物誤嚥』と呼ぶこともあります。犬では串・おもちゃ・果物の種・薬・石・布などが多く、好奇心と食欲からか若い犬により多く見られますが、どの年齢でも起こり得ます。症状として最も多く見られるのは嘔吐です。他に、食欲不振、元気消失、よだれ、下痢、黒色便などがあります。薬を誤飲した場合は、薬品ごとに異なる中毒症状を引き起こします。特によだれがひどい場合、食べてすぐに吐き出す場合、嘔吐物が緑色であったり糞便臭がしたりする場合には注意が必要です。動物の吐く様子は診断の助けになりますから、必ず『どんなものを、どんな時に、どれくらい』吐いたのかを獣医師に伝えて下さい。嘔吐などの症状が出ている場合、まず異物が原因で起きているのかどうかの診断が重要です。入念な触診の後、レントゲン検査、バリウム検査、超音波検査等、各種画像検査を実施します。石や金属はレントゲンで明らかに映りますが、木・布・プラスチック・ゴムはレントゲンには映りにくいため、若い動物で嘔吐を繰り返す場合は異物誤飲の可能性を常に考えなくてはなりません。最近では、異物ではなく食べ物を詰まらせるケースが非常に多く、問題となっています。とうもろこしの芯、梅干しや果物の種、ジャーキー、砂肝などが代表的です。ジャーキーや砂肝を丸のみした場合に食道に詰まらせることがあり、よだれや嘔気、食べた直後に吐き出す等の症状で来院されます。食道に詰まったまま放置すると、時間経過とともに食道が穿孔する可能性が高くなり、胸膜炎をおこし、致死的な状態になります。とうもろこしの芯や果物の種の場合、「消化するかも?」と様子を見ているうちに、数日後から糞便臭のする吐物を吐いたりして来院されることがあります。また、異物が腸に詰まると、腸の中身が通過できなくなり腸閉塞という命にかかわる危険な状態になります。頻回・多量に嘔吐を繰り返し、ぐったりして急速に体調が悪化することが特徴です。時間が経つと腸の閉塞している部分の血液の巡りが悪くなり、最悪の場合、穴が開いてしまうこともあるため緊急手術が必要となります。いずれの場合も早期に診断されれば予後は良好ですが、全身状態が悪化している場合は検査・診断を急がなければなりません。人間が気にかけないようなものでも、動物にとっては興味の対象になることがあります。食事の後の不始末や、不適切なおやつのあげ方によって誤飲を引き起こさないよう、ご家族の方は充分ご注意下さい。 犬が誤食すると危険なもの10選 焼き鳥の串・アイスクリームの棒串や棒は食道や消化管に刺さって損傷したり、腸閉塞を引き起こしたりするおそれがあります。 とうもろこしの芯とうもろこしの芯は硬くて消化が困難なため、犬が誤って食べると腸閉塞や消化管穿孔を引き起こすおそれがあります 果実の種犬が果物の種を食べてしまうと、大きさによっては消化管に詰まるリスクがあります。また、リンゴやプラム、桃、アプリコットなどの種の核にはシアン化合物という毒素が含まれており、犬の体内で代謝されると吐き気、嘔吐、下痢、呼吸困難、神経系の症状などの中毒症状を引き起こす可能性があります。 魚の骨・鶏の骨魚の骨は比較的柔らかいですが、口や食道、消化管に刺さる可能性があります。鶏の骨は調理されると脆くなり、鋭い破片になることがあります。これらの鋭利な破片が消化管に詰まると、腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす可能性があり、緊急の状態となることがあります。 ボール等のおもちゃ・ゴム製品遊んでいるうちにおもちゃや家具の部品などのゴム製品を誤って飲み込むことがあります。ゴム製品は消化器系で十分に消化されず、消化管に詰まったり穿孔したりするおそれがあり、内出血や腹膜炎を引き起こすことがあります。 ペットボトルのフタ小さく、硬く、滑りやすいため、飲み込むと食道や消化管に詰まるリスクが高まります。小型犬では特に要注意です。 靴下やタオル・ぬいぐるみ等の布製品布製品は消化器系で充分に分解されず、消化管に詰まるおそれがあります。 人間の薬人間の薬には犬にとって有害な成分が含まれている場合があり、薬物中毒の症状が現れる可能性があります。 家庭で使われる化学物質家庭で使われる多くの化学物質は犬にとって有害です。例えば、清掃剤や殺虫剤、肥料などは誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。 植物一部の植物は触れる、噛む、または食べることで、犬に有害な影響を与える場合があります。例えば、チューリップ、スイセン、スズラン、アザミ、ポインセチア、ユリ、ツツジ(レンゲツツジ)、アイビーなどは毒素を含んでいるため、中毒症状を引き起こすことがあります。庭や家の中にこれらの植物がないか確認し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。 犬が何を食べてしまったか不明な場合や、誤食が疑われる症状が現れた場合にはすぐに獣医師に相談することが重要です。食べた異物の残骸が残っている場合にはそれを持って動物病院へ行くことで、診断の助けになることもあります。 まとめ 以上、犬の食事と食生活において注意するべきことをお伝えしました。日々の食事は、愛犬の生涯の健康と幸福に直結する重要な要素です。正しい知識を持ち、適切な食事を提供することで、愛犬の心身の健康を維持し、より良い生活を送ってもらうことができます。当院には犬の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』が在籍しています。愛犬の食事選び、与え方などにつきご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛犬の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。

  • てんかん ~内科的治療~

    疾患の説明 てんかんは慢性の脳の病気で、脳内の神経細胞に突然発生する激しい電気的興奮により発作が繰り返し起きます。てんかんの発作には、 ●全身的に硬直する ●四肢をバタバタさせる ●よだれが大量に出る ●体が部分的にピクピクする など様々な症状があります。 発作の後は、ボーッとしたりふらついたりしますが、しばらくすると元に戻ります。 発作は2分以内に終わることがほとんどですが、下記の場合は速やかな受診が必要です。 ●てんかん重積状態:5分以上続く場合や意識が戻る前に2回目の発作が起きる場合 ●群発発作:24時間以内に発作が2回以上起きる場合 ●発作の後の神経症状が1日以上続く場合 てんかんは、原因不明または遺伝に関連する「特発性てんかん」と、脳の障害による「構造的てんかん」、全身性の病気による「反応性発作」に分けられます。 発作の原因となる病気の有無を脳MRI検査・脳脊髄液検査・神経学的検査・血液検査などで確認し、病気がある場合はその治療を行います。 発作を繰り返す場合、発作の予防薬(抗てんかん薬)の投薬を開始します。 治療の内容 今回のケースでは、脳MRI検査、神経学的検査、血液検査、および初発の発作発症年齢により特発性てんかんと診断されました。 また、月1回の頻度でてんかん発作が起きていたため、抗てんかん薬の投薬を開始しました。 その後、定期的に抗てんかん薬の血中濃度検査を行い投薬量の調整をしたところ、血中濃度が有効な範囲に達してからは、発作が起きなくなりました。 発作は回数を重ねるほど、徐々に悪化していくことがあります。 悪化してから抗てんかん薬を始めても効果が出にくく、早期に始めるとよく効く場合が多いです。 抗てんかん薬を開始する基準の一つとして、「6ヵ月に1回以上の発作が起きる」という目安があります。 治療後の注意点 治療の第一目標は、発作が完全に見られなくなる、または発作が起きない期間が治療前の3倍に延長する(3ヵ月以上の間)ことです。 第二目標は、発作の頻度が50%以上低下する、群発発作やてんかん重積状態を認めない、または発作の重症度が軽減することです。 いずれかの目標が達成された場合、投薬の効果があったと判断します。 発作が1~2年以上起きていない場合、抗てんかん薬を少しずつ減量して中止を試みることができます。 逆に、てんかん重積状態になったことがある場合や、発作頻度が月に0.3回以上と多い場合は、残念ながら生存期間は短くなります。