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マダニ媒介感染症の今 〜伴侶動物と暮らすご家族が知りたいSFTS感染症について

兵庫県出身、1971年生まれ。2020年より宮崎⼤学産業動物防疫リサーチセンターの副センター長も務める。プライベートでは40歳よりトライアスロン競技にも励み、研究に挑む体力づくりをされています。

苅谷動物病院グループではご家族の皆さんに正しい知識と対応をしていただくため、酪農学園大学OBである三ツ目通り病院 外科・整形外科センター松本院長の先輩!ウイルス感染症を研究する岡林教授にSFTS(重症熱性血小板減少症候群)について質問に回答・解説いただきました。

STEP 1:まず知っておきたいこと

SFTSはどのような病気ですか?動物と人の両方に感染する可能性や、どんな症状や、経過になりますか?

【 人の場合 】

  • 潜伏期間(マダニにかまれたり、弱った犬猫と濃厚接触したりしてから、発症まで)は およそ6日〜2週間。
  • 主な症状は 発熱、倦怠感、食欲不振、吐き気や下痢 などです。
  • 血液検査で 血小板や白血球の減少が見られ、出血しやすくなったり、感染に弱くなったりします。
  • 重症化すると 意識障害や出血、臓器の働きの低下が起こり、命に関わることもあります(致死率20-30%)

【 動物(犬・猫)の場合 】

  • 犬:多くは症状が軽いか、発症しても気づかない程度で済むことが多いとされています。ただし一部では発熱や元気消失が見られることがあります(致死率45%)。
  • 猫:人よりもかかりやすく、重症化しやすいのが特徴です(致死率60%)。主な初期症状は 発熱、元気や食欲の低下、黄疸など。重症化すると けいれんや意識障害、出血 が見られ、死亡する例も少なくありません。

2. 感染経路について

マダニにかまれる以外にも、動物や人から直接うつりますか?

主な感染経路は「マダニにかまれること」です。しかし、感染して発症した猫や犬の体液(唾液や血液など)にもウイルスが含まれていることもあり、そこから人に感染した事例もあります。

室内で同居している犬や猫でも、マダニにかまれることはありますか?

家の中だけで飼育していれば、ほぼマダニにかまれることはありませんが、稀な事例で、同居動物や人が持ち込んだマダニが室内で付いた事例があります。散歩や庭で遊ぶなどの短時間の外出でもマダニが付くことがあります。

マダニにかまれたら、すぐに病気になりますか?

マダニにかまれても、すぐに症状が出るわけではなく、潜伏期間(約1〜2週間)があってから発症します。

日本での発生状況はどうなっていますか?

これまで西日本を中心に報告されてきましたが、近年は関東地方や都市部、そして北海道でも発生が確認されています。依然として西日本に多いものの、全国どこでもリスクはあると考えて、注意しておくのが安心です。

STEP 2:日常生活でできる予防

日常でできる具体的な対策は何ですか?
・散歩コース、草むら、庭での注意点
・マダニ予防薬の選び方や使い方

草むらや茂みに入るとマダニが付きやすいため、散歩では道の真ん中を歩かせ、草むらに入らないようにしましょう。

散歩後にはしっかりとマダニの付着がないかどうかを確認してください。庭やベランダに雑草が生い茂っているとマダニの隠れ場所になるため、こまめに手入れをしましょう。

動物病院で処方される「マダニ予防薬(スポットタイプや内服薬)」を定期的に使用してください。

人が屋外でマダニにかまれないために服装や行動の注意点は?

草むらや山に入るときは、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を減らします。ズボンの裾を靴下や長靴に入れると効果的です。明るい色の服はマダニを見つけやすくなります。

屋外活動後は体、衣類へマダニが付着していないかを確認し、入浴し、体をよくチェックしましょう。脇、膝裏、髪の生え際など柔らかいところ、見つけにくいところが狙われています。

家の中でできるマダニチェックの方法は?

散歩や外出後には、毛をかき分けて皮膚を確認しましょう。耳の付け根、首まわり、脇、足の内側、肛門まわりなどの柔らかいところは特に付きやすい部位です。手で触って「小さなイボのようなもの」があればマダニの可能性があります。無理に引き抜くと口の部分が皮膚に残ってしまうので、見つけたら動物病院で取ってもらうのが安全です。

STEP 3:もし感染が疑われたら

愛犬、愛猫や家族に発熱や元気消失などの症状が出たどのように対応すべきか?

【 人の場合 】

できるだけ早く医療機関を受診してください。マダニにかまれたことや同居動物の体調についても伝えると診断の助けになります。

【 動物(犬・猫)の場合 】

動物病院を受診してください。特に猫はSFTSにかかりやすく重症化しやすいため、早めの診察が重要です。

受診先(人の場合は医療機関、動物の場合は動物病院)選び方にポイントがありますか?

【 人の場合 】

SFTSはまだ発生数が少なく稀な病気なので、大きな病院(地域の基幹病院や感染症指定医療機関)に紹介される場合があります。まずはかかりつけ医で相談してください。上述したように、マダニにかまれたことや動物の体調についても伝えると診断の助けになります。

【 動物(犬・猫)の場合 】

マダニ媒介感染症の経験がある獣医師や、必要に応じて大学病院などを紹介されることもあります。マダニの付着歴、外出歴などを伝えてください。

動物がSFTSと診断された。家族が注意すべき感染予防策は?SFTSウイルスは?マスクや手袋をしていれば防げますか?

原則、動物病院や隔離施設での管理をお願いします。防御衣としてはエプロン、フェイスガードもあるとより安心です。

家庭内看護がそもそも可能か?(接触の仕方、必要な消毒方法など

感染した動物は重症化することが多く、家庭での看護はリスクが高いため、獣医師とよく相談してください。やむを得ず家庭内看護する場合は、上述の防御衣を用意し、作業後は必ず手洗い・消毒を行なってください。同居動物、高齢のご家族(50歳以上)との接触は避けるようにしてください。

接触を避ける期間の目安

動物の回復状態にもよりますので、明確にはできません。回復後2-3週間、尿中にウイルスを排出していた事例も報告されています。血清、尿を対象としたPCR検査にて、2回陰性が確認できるまでは隔離してください。

感染が確認された動物や人は、回復後も他者に感染させる可能性は?回復後の猫の尿からSFTSウイルスを排出している事例報告もあるようですが感染から治療後の人と動物の暮らしへの影響は?

上述のように、回復後にも尿などの体液にウイルスが排出していた事例も報告されています。見た目の回復だけでなく、正しく検査にて陰性を確認してください。回復し、検査にて陰性が確認できれば、何ら問題ありません。

岡林教授からメッセージ

SFTSは確かに非常に怖く、身近なに存在する病気です。正しい知識(マダニから感染する、感染動物の体液から感染するなど)を持ち、日頃からマダニ予防を行うことでリスクを減らすことができます。

ネコちゃん、ワンちゃんには「外出させない」ことが理想ですが、どうしても外出せざるを得ない場合は「草むらを避ける」「予防薬を続ける」「外出後にチェックする」

――この3つを心がけるだけでも安心につながります。そして、気になること(体調変化、発熱、マダニ付着、黄疸)などがあれば早めに獣医さんに相談し、SFTS検査を受けてください。

過度に心配しすぎず、でも油断せず、家族も伴侶動物も一緒に健康に暮らしていけるよう、ぜひ予防と早めの受診を習慣にしてください。