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犬の「前十字靭帯断裂」と「膝蓋骨内方脱臼」を併発!TPLO手術と治療経過|柴犬

症例プロフィール

  • 犬種:柴犬
  • 年齢、性別:3歳9ヵ月齢 去勢オス 
  • 体重:20kg
  • 病名:左側前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)断裂、MPL(膝蓋骨内側脱臼)グレード2

主訴・来院時の症状

「昨日、ネズミを追いかけ回したあとに、左の後ろ足を上げて痛がっている(跛行)」という主訴で来院されました。 後ろ足を完全に挙上(地面につけない状態)しており、左の膝関節に強い痛みと不安定な状態が認められました。

検査と診断

レントゲン検査および関節の触診の結果、左側後肢の膝関節を安定させる重要な靭帯が切れてしまっている「左側前十字靭帯断裂」、およびお皿の骨が内側に外れてしまう「膝蓋骨内方脱臼(MPL:グレード2)」が併発していることが分かりました。 

柴犬などの活発な犬種では、急なダッシュや方向転換の際に靭帯に強い負荷がかかって断裂してしまうケースが少なくありません。放っておくと激しい関節炎や痛みが続くため、手術が必要となります。

治療(手術)

来院翌日(第2病日)に、脛骨近位を骨切り、角度を変えて、膝関節を安定させる「TPLO(脛骨高平部水平化骨切術 )」と膝蓋骨内方脱臼整復手術を実施しました。

【手術内容の概要】

左側脛骨にTPLO、MPLはグレード2のため、内側リリース(縫工筋前部、内側広筋の切離)、外側支帯の縫縮を実施

術後の経過(レントゲンによる骨の修復確認)

手術後は定期的な検診、レントゲン検査により、プレートの固定や骨癒合の状態、そして実際に足を正しく使って歩けているか(歩行状態)を確認していきます。

① 術後〜術後32日の経過

術後13日の段階で、すでに左側後肢を地面にしっかりつけて、軽い足取りで歩けるようになっています。お散歩や方向転換もスムーズで、痛みから解放された様子が伺えます。

② 術後32日〜術後63日の経過

術後1ヶ月(32日)、2ヶ月(63日)と経過するにつれて、跛行も改善し、力強く地面を蹴って歩けるようになっています。レントゲンでも徐々に骨癒合が確認され、プレートの固定状態も変化なく安定しています。

③ 術後103日の経過(右足の病変確認)

左後肢の手術から約3ヶ月(103日)が経過した頃、今度は右後肢に跛行(びっこ)が見られるようになりました。検査の結果、右後肢も同様に「前十字靭帯断裂」と「膝蓋骨内側脱臼(MPL:グレード2)」を起こしていることが判明しました。実は、片側の前十字靭帯を断裂したワンちゃんは、数ヶ月〜1年以内に反対肢の前十字靭帯も断裂してしまう確率が非常に高いと言われています。

④右後肢の手術(反対肢のTPLO手術)

ご家族と相談の上、右後肢についても左後肢の時と同様に「TPLO手術」および「内側リリース術」を実施しました。

⑤ 両後肢手術後の経過(術後118日〜370日)

右膝
左膝

両後肢の術後経過は極めて良好です。

獣医師からのまとめ・予防のアドバイス

犬の前十字靭帯断裂の原因は完全には解明されていませんが、加齢による靭帯の変化が主な原因とされています。肥満や遺伝的骨格異常、加齢によるホルモン異常、また今回のように慢性的は膝蓋骨脱臼などと関連して発症するケースも多いです。また、靭帯の変化が原因となるため、片足を痛めたあと、かばって負担がかかったもう片方の足も連鎖的に痛めてしまうことがよくあります。

当院で行っているTPLO手術は、従来の関節外制動術(糸で膝関節を安定化させる手術法)に比べて、大型犬や活動性の高いワンちゃんでも早期に足を地面につけて元通りの生活に戻すことができる、非常に安定した信頼性の高い手術法です。

【ご家族に知っておいてほしいこと】

  • フローリングでの滑り防止対策(マットの敷設など)を徹底する
  • 肥満は膝に大きな負担をかけるため、適切な体重管理を心がける
  • 後ろ足を「ケンケンするように上げる」「スキップのような歩き方をする」「時々あげる」といったサインがあれば、靭帯が完全に切れる前(部分断裂の段階など)に、お早めに当院までご相談ください。

【 症例治療に伴う費用目安  】

手術費:268,500円
入院費:66,000円
その他:88,000円

総額およそ:422,500円

※当院の健康管理サポート会員様は上記費用より割引される項目がいくつかございます。
※病状、状態により条件が異なれば費用も異なります。あくまで本症例の治療の目安としてご参考になさってください。

監修
苅谷動物病院グループ 外科部長
岡村 優