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Case Studies and Columns 症例紹介・コラム

症例紹介・コラム

  • 肝臓腫瘤 ~肝臓腫瘤摘出術~

    疾患の説明 肝臓の腫瘤は中高齢の動物に発症します。腫瘤が小さい場合には症状が表れないため、健康診断で偶発的に発見されるケースが多くあります。 肝臓の悪性腫瘤には肝細胞癌・胆管細胞癌・カルチノイド・肉腫など様々な種類があるため、確定診断には病理検査(病変の組織・細胞を顕微鏡で観察する検査)が必要です。 治療法には、外科手術・化学療法・放射線療法・免疫療法・分子標的療法などがあり、これらを単独、もしくは組み合わせて行っていきます。 治療の内容 今回のケースでは、健康診断時の血液検査・レントゲン検査・超音波検査にて肝臓の腫瘤が認められたため、手術を前提とした追加検査としてCT検査を実施しました。 CT検査の結果から腫瘤の発生部位や転移の有無を検討したところ、手術適応なケースと判断されたため、摘出手術の実施となりました。 手術では、全身麻酔下で開腹後、肝臓腫瘤の発生部位や大きさ、他臓器との癒着の有無を確認し、肝臓腫瘤を摘出します。 手術は、サンダービート(※1)やソノキュア(※2)などの低侵襲の機器を使用して、動物への身体的なダメージを極力抑えながら行いました。 ※1.高周波電流と超音波振動を用いて切開・止血をする手術機器。 ※2.超音波を用いて組織の破砕・乳化・吸引などをする手術機器。 CT検査で認められた肝臓腫瘤 低侵襲の機器を使用 切除された病変 治療後の注意点 手術後、点滴・抗生剤・鎮痛剤・肝庇護剤を投与したところ順調に回復し、5日間の入院治療の後、退院となりました。 自宅では、抗生剤と肝庇護剤を投与して頂き、エリザベスカラーを装着して抜糸まで術創を舐めないように注意して頂きました。 手術により摘出した腫瘤を病理検査した結果、病変に肝細胞癌が認められましたが、その辺縁部位には癌細胞は認められませんでした。 肝細胞癌は悪性腫瘍の中でも転移する可能性が低いため、摘出することにより、予後は比較的良好といえるでしょう。        

  • 胆のう破裂 ~胆のう摘出術~

    疾患の説明 各種検査の結果、胆のう破裂に伴う重度腹膜炎を起こしていることが分かりました。 胆のう破裂は、重度胆のう炎・胆のう内にゼリー状の内容物が過度に貯留する胆のう粘液のう腫・胆石による総胆管閉塞などが原因で起こります。 胆のう破裂は、肝臓酵素の上昇・黄疸・腹膜炎などを併発し、死亡率が高い疾患です。 血液検査・尿検査・レントゲン検査・超音波検査・腹水の貯留液検査などにより診断され、多くの場合、早急な手術が必要となります。 治療の内容 胆のうを摘出するための手術を行いました。開腹後、胆のうの状態を確認し、破裂部位を探します。 次いで胆のうを肝臓から剥離し、カテーテルを使用して、総胆管~十二指腸の通過を確認します。 その後、破裂した胆のうを摘出し、腹腔洗浄を行い、腹水排液のためドレーンを設置して閉創します。 手術後には、今後の治療に用いる抗生剤を判定するため、腹水や胆のう内容物の細菌培養および感受性検査を行います。 また、病態をさらに詳しく評価するために、採取した肝臓の一部を生検し、摘出した胆のうの病理検査を行います。 治療後の注意点 手術後は7日間の入院治療で、点滴・抗生剤・鎮痛剤・肝庇護剤などを投与し、ドレーンからの排泄が減少した時点でドレーンを抜去、退院となりました。 自宅では抗生剤や肝庇護剤などの投薬をして頂き、腹帯をつけて抜糸まで術創を舐めないように注意して頂きました。 感受性検査の結果により、後から抗生剤を変更する場合もあります。

  • 尿管結石 ~尿管結石摘出術~

    疾患の説明 猫では腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石など泌尿器に関連した尿石症が多く認められます。 症状としては、元気と食欲の低下・嘔吐・腹部痛がよく見られ、ひどい場合には急性腎不全に進行して、けいれん発作を引き起こすこともあります。 診断には血液検査・尿検査に加えて、レントゲン検査・超音波検査・造影検査・CT検査などの画像検査が必要となります。 治療の内容 各種検査の結果、尿管にできた結石による急性腎不全と診断されました。結石を摘出するための手術を実施しました。 猫の尿管は非常に細いため、尿管結石摘出は難易度が高い手術となります。全身麻酔下で開腹後、目的の尿管にアプローチし、尿管結石を確認します。 尿管を切開して結石を除去し、細いカテーテルやガイドを使用して尿管の開通を確認した後、髪の毛よりも細い縫合糸で丁寧に尿管を縫合します。 尿管から尿の漏出がないことを確認し、腹腔内洗浄、閉腹します。 治療後の注意点 手術後は点滴治療を行い、7日間の入院で順調に回復して退院しました。 自宅では抗生剤の投与、排尿の状態と血尿の有無を確認して頂き、腹帯をつけて、抜糸まで術創を舐めないように注意して頂きました。 また、結石分析の結果により、今後は結石の再発予防のための処方食を与えて頂くことになりました。

  • 免疫介在性溶血性貧血 ~輸血治療~

    疾患の説明 免疫介在性溶血性貧血とは、免疫の異常な暴走により、自身の赤血球が破壊され、重度の貧血に至る病気です。ふらつき・食欲不振などを起こし、最終的に死に至ります。 治療の内容 治療の方法として、免疫の暴走を抑える免疫抑制剤の服薬と、貧血が重度な場合には輸血を実施する場合があります。 この症例では、来院時に重度の貧血が見られ危険な状態にあったため、輸血を実施し、同時に免疫抑制剤の投与を行いました。 免疫抑制剤の効果があらわれるまで数日かかり、3日後に再度の輸血を行いました。 5日後に貧血の数値の改善が認められ、7日後に元気・食欲が回復し、退院されました。 治療後の注意点 数ヶ月から数年にわたり、服薬と定期的な通院が必要になります。重症の場合は残念ながら輸血や投薬の効果が乏しく死亡する例もあります。 ※貧血を起こす病気は免疫介在性溶血性貧血以外にも様々あります。適切な治療を選択するため、各種検査やそれまでの治療経過・投薬内容の記録が必要になります。 他院から当院に転院される際は、各種検査データとかかりつけ獣医師からの紹介状をご持参頂けますようお願いいたします。 ※輸血用血液の在庫は限りがあるため、輸血が行えない場合があります。

  • 歯周病 ~抜歯術・粘膜フラップ形成術~

    疾患の説明 歯周病は、歯肉炎と歯周炎に分類されます。歯肉のみに炎症があるものを歯肉炎、歯周囲の骨まで炎症が及んでいるものを歯周炎と言います。 歯肉炎を放置しておくと、歯周炎へと進行します。歯周病の治療は早期発見が重要で、歯肉炎の段階で治療を行えば完治します。 しかし、歯周炎にまで進行した場合は、骨の喪失が見られ、喪失した骨を再生することは困難であるため、完治は難しくなります。 治療の内容 全身麻酔下で口腔内の精査と処置を行いました。普段から自宅でケアを行って頂いていたこともあり、肉眼所見上は比較的良好な状態でした。 しかし、レントゲン検査にて、左上顎犬歯から第2前臼歯までに及ぶ骨の喪失(写真の矢印部分)が見られました。 まず、すべての歯に対し、超音波スケーラーで歯石の除去を行いました。ついで、歯周ポケット内の歯石を除去しました。 歯石の除去が終わった段階で、歯周病に罹患した歯を抜歯。 抜歯部分を洗浄・消毒。歯茎と粘膜を切開し、切開した粘膜を引き伸ばし(粘膜フラップ形成)、抜歯窩(歯を抜いたあとの穴)を覆うように閉鎖しました。 治療後の注意事項 処置後は、術創からフードのカスが入り込むと化膿の原因となるため、1週間は食事を肉のみに制限しました。