CASE

てんかん

Case17.てんかん ~内科的治療~

4歳の犬。急に全身が痙攣し倒れて失禁し、意識がない状態が1分間続いたとのことで来院されました。

疾患の説明

てんかんは慢性の脳の病気で、脳内の神経細胞に突然発生する激しい電気的興奮により発作が繰り返し起きます。てんかんの発作には、

全身的に硬直する

四肢をバタバタさせる

よだれが大量に出る

体が部分的にピクピクする

など様々な症状があります。

発作の後は、ボーッとしたりふらついたりしますが、しばらくすると元に戻ります。
発作は2分以内に終わることがほとんどですが、下記の場合は速やかな受診が必要です。

てんかん重積状態:5分以上続く場合や意識が戻る前に2回目の発作が起きる場合

群発発作:24時間以内に発作が2回以上起きる場合

発作の後の神経症状が1日以上続く場合

てんかんは、原因不明または遺伝に関連する「特発性てんかん」と、脳の障害による「構造的てんかん」、全身性の病気による「反応性発作」に分けられます。
発作の原因となる病気の有無を脳MRI検査・脳脊髄液検査・神経学的検査・血液検査などで確認し、病気がある場合はその治療を行います。
発作を繰り返す場合、発作の予防薬(抗てんかん薬)の投薬を開始します。

治療の内容

今回のケースでは、脳MRI検査、神経学的検査、血液検査、および初発の発作発症年齢により特発性てんかんと診断されました。
また、月1回の頻度でてんかん発作が起きていたため、抗てんかん薬の投薬を開始しました。
その後、定期的に抗てんかん薬の血中濃度検査を行い投薬量の調整をしたところ、血中濃度が有効な範囲に達してからは、発作が起きなくなりました。
発作は回数を重ねるほど、徐々に悪化していくことがあります。
悪化してから抗てんかん薬を始めても効果が出にくく、早期に始めるとよく効く場合が多いです。
抗てんかん薬を開始する基準の一つとして、「6ヵ月に1回以上の発作が起きる」という目安があります。

治療後の注意点

治療の第一目標は、発作が完全に見られなくなる、または発作が起きない期間が治療前の3倍に延長する(3ヵ月以上の間)ことです。
第二目標は、発作の頻度が50%以上低下する、群発発作やてんかん重積状態を認めない、または発作の重症度が軽減することです。
いずれかの目標が達成された場合、投薬の効果があったと判断します。
発作が1~2年以上起きていない場合、抗てんかん薬を少しずつ減量して中止を試みることができます。
逆に、てんかん重積状態になったことがある場合や、発作頻度が月に0.3回以上と多い場合は、残念ながら生存期間は短くなります。