CASE

がん(悪性腫瘍)

Case16.がん(悪性腫瘍)

「がん」とは?

組織や細胞が過剰に増殖することによってできる組織塊のことを腫瘍と言い、「良性」と「悪性」があります。「悪性」の腫瘍のことを「がん」と呼び、下記のような特徴があります。

がん(悪性腫瘍)の特徴

がん細胞は一般の細胞より増殖するスピードが比較的速く、周りの組織を巻き込んで広がっていく。

良性腫瘍は、腫瘍の境界線が滑らかで形が整っているのに対し、悪性腫瘍は境界線が不明瞭で不均一に見える。

悪性腫瘍は周囲を壊しながら広がったり(浸潤)、離れたところに飛び移ったり(転移)する。

「がん」の診断から治療まで

適切な治療を行うためには、ペットの一般状態や「がん」の性質・広がりを正確に把握しておく必要があり、そのためには診察や様々な検査を実施します。
検査により診断された”病期(ステージ)”に基づいて、最も適した治療の進め方を検討していきます。

1.血液検査・画像検査

がんが疑われた場合、より詳しい情報を得るために、血液検査・エコー検査・X線検査・CT検査などを実施し、診断をしていきます。

2.組織学的検査

可能な限り、組織学的検査・細胞診検査(病変から採取した組織・細胞を顕微鏡で観察する検査)を行ないます。

3.腫瘍の進行度と全身の評価

がん診断確定の後、腫瘍の進行度や転移の有無、治療に耐えられる状態なのかどうかを評価(ステージング)します。

4.治療目的の決定

ステージングした後、「がんを治す」「がんが進行するスピードを遅くさせる」「苦痛を軽減させる」など、治療の目的をご家族と相談の上で定めます。

5.治療法の選択

がんの3大療法として、手術でがんを摘出する「外科療法」、放射線照射によってがん細胞を殺滅する「放射線療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」があります。
これらを単独もしくは組み合わせて治療を行っていきます。当院では、近年“第4のがん治療”として注目されている「免疫療法」も場合によってはご提案しています。

ペットによくみられる「がん」

がんは、犬猫共に死亡原因の上位にランクインしており、人間の場合と同様、加齢とともに発症する確率が高くなります。
当院で診察する機会の多いがんに下記のようなものがあります。

乳腺腫瘍

犬では良性と悪性が半々と言われていますが、猫では悪性がほとんどです。ステージングを行い、病期に合った治療法を行いますが、主には外科療法が中心となります。
術後は、病理検査により得られた情報に基づいて化学療法を行うか決めていきます。

リンパ腫

体の各所のリンパ節が腫れたり、腸・肝臓・腎臓などの内臓に病変を作ります。
この腫瘍は、外科療法単独では治療困難である一方、抗がん剤が効果的であるため、化学療法が第一の選択肢となることが多いです。

肥満細胞腫

体表にできる場合と内臓にできる場合があります。前者の方がしこりとして確認しやすく見つけやすいためか、件数が多いです。
しこりは、その外見だけではがんか否かを判別できないため、組織学的検査・細胞診検査が必要となります。
治療は主に外科療法を行いますが、化学療法を併用することもあります。

セカンドオピニオンを活用しましょう

ペットががんと診断された場合は、担当獣医師から治療法について複数の選択肢を提示されることでしょう。
もし、「病状の説明が理解できない」「どの治療法にも不安があり選択に迷う」などといった疑問・不安が少しでもる場合は、担当獣医師と十分な話し合いをするべきです。
担当医だけはでなく、他の獣医師の意見も聞きたいという場合は、
様々な治療法や最新情報に精通している腫瘍科の専門医(※)に「セカンドオピニオン」を求めることをお勧めします。
セカンドオピニオンを受けることで、自身が選ぶ治療法について多角的に知ることができます。
このような段階を踏むことは、納得のいく治療法を選択するための道標となるでしょう。

当院には、2名の日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医(Ⅱ種)が在籍しています。
赤木東吾獣医師(市川総合病院)・金地裕美獣医師(三ツ目通り病院)