CASE

椎間板ヘルニア

Case14.椎間板ヘルニア ~椎間板ヘルニア整復術~

疾患の説明

椎間板は、骨と骨の間でクッションのような役割をしていますが、加齢や遺伝などにより変性して弾性能力が低下したところへ外圧がかかることで、壊れてしまうことがあります。
壊れた椎間板が脊柱管(脊髄が通っている空間)に逸脱し、神経を圧迫している状態が椎間板ヘルニアです。

椎間板ヘルニアは、主に頸部から仙椎にかけた背骨に発生します。
原因として、加齢と遺伝的要因があり、ダックスフント・フレンチブルドックに代表される軟骨異栄養性犬種では、若くても発生する場合があります。

椎間板は、外枠の線維輪と内側の髄核という組織から成ります。
椎間板ヘルニアは、これらの組織の損傷パターンにより下記の2つに分類されます。

ハンセンⅠ型:線維輪が破れたところから髄核が飛び出して脊髄を圧迫する

ハンセンⅡ型:線維輪自体が厚くなり脊髄を圧迫する

椎間板ヘルニアになると、神経が圧迫されることで下記のような症状が表れます。

痛み

ふらつき

歩行起立困難

排尿障害 など

疾患の診断

レントゲンによる脊髄造影検査・CT検査・MRI検査などにより診断し、症状の程度により、頸部椎間板ヘルニアでは3段階、胸腰部椎間板ヘルニアでは5段階で評価します。

頸部椎間板ヘルニアのグレード分類

症状評価臨床症状
グレード1背中の痛みのみ
グレード2起立歩行可能だが、四肢のいずれかに麻痺が認められる
グレード3起立歩行困難で、四肢において麻痺が認められる

胸腰部椎間板ヘルニアのグレード分類

症状評価臨床症状
グレード1背中の痛みのみ
グレード2起立歩行可能だが、後ろ脚がふらつく
グレード3起立歩行困難だが、後ろ脚は動く
グレード4起立歩行困難で、後ろ脚に麻痺が認められる
グレード5起立歩行困難で、後ろ脚に麻痺が認められ、痛みも感じない

MRI検査で撮影した頸部椎間板ヘルニア

MRI検査で撮影した胸腰部椎間板ヘルニア

治療の内容

グレードに応じて最適な治療法が選択され、グレード1の場合は内科的治療法(安静や消炎鎮痛剤の投与)が、グレードが2以上の場合は外科的治療法も適用されます。
外科的治療法では、ヘルニアによる神経への圧迫を取り除くことを目的に、背骨の一部を削り圧迫物質を摘出する手術を行います。

頸部椎間板ヘルニアには、主にベントラルスロット法が適用されます。

胸腰部椎間板ヘルニアには、ヘミラミネクトミーやラミネクトミーが適用されます。

手術により摘出された圧迫物質

治療後の注意点

手術後の回復の程度は、神経の損傷具合で大きく異なりますが、いずれの場合もリハビリを行うことが大変重要です。リハビリにより、筋量・関節機能の維持・回復が見込めます。
当院では、麻痺の程度や画像検査の結果に基づいて適切なプログラムを作り、積極的に術後の機能回復をサポートしています。